Page 2 / 3 1ページ目から読む

ヒップホップの世界を開いていく

‎RYO-Z「そうやって95年にインディーズでデビューしたけど、その時は周りにキャッチアップされづらかった。僕らはEAST END直系の立ち位置(※EAST ENDのDJ、YOGGYの弟子がRIP SLYMEのDJ FUMIYA)でもあるから、割とキャッチーなグループだったの。だけど当時のヒップホップ・シーンはハードコアのムードが出始めていた時期。そういう流れの中にいたから、みんなからほっとかれる、みたいな感じだった。ちょっとおかしいなあと思っていたんだけど、TOKYO FMでやってた深夜のヒップホップの濃い番組でYOU THE ROCK☆さんがデモテープを紹介してくれたのよね。その次の日ぐらいから、もうハードコア系が好きだった人たちも〈RIPもいいよね!〉って言い始めた。僕らは何も変わってないけど、それは大きかったかな。

あと、ヒップホップの人にはあまり相手にされなかったけど、決定的だったのはミクスチャー・ロック系の人たちからのラブコールが多かったっていうこと。そういうミクスチャー系のライブにばかり呼ばれて、特にDragon Ashには足を向けて寝られないね。Dragon Ash主催で、6組ぐらいが一緒に全国をツアーで回るんだけど、全国で赤坂BLITZクラスのキャパを回るわけだから、そこで随分名前を覚えてもらったと思う。20年前、25歳の時だね」

 

インプットの源はファンタジーの中に

――そこからのRIP SLYMEの快進撃は言わずもがなですけど、メジャーデビューして多忙になって、リリックのインプットはどうしていたんですか? 枯渇することはなかったんですか?

‎RYO-Z「そういう話でいうと、いま人気のBAD HOPにラジオでインタビューさせてもらったことがあるんだけど、〈どんな風にリリックを考えていくの?〉って話をしたら彼らが、〈僕らは川崎のリアルを伝えたくて、リアルを歌詞にしたいんです〉って言うわけ。〈逆に、RYO-Zさんはどうやって書かれるんですか?〉って聞かれちゃったんだけど、俺は〈いやー逆だなー、ファンタジーしか書いてないからなあ。だってファンタジーって、無限じゃん?〉って言って。そしたら納得してくれたみたいで。偉そうなことを言うつもりじゃなかったんだけど、実際にそうなんだよね。インプット・アウトプットいろいろあるけど、やれることは、無限に広がるファンタジーの中にあるなあって」

黒川「じゃあRYO-Zさんは結構妄想とかするんですか?」

RYO-Z「そうそう! 〈5億円あったら何しよう〉とか、そういうことばっか考えてる(笑)」

――それに対して黒川さんはどうインプットしてるんですか?

黒川「自分の、本を読んだり散歩したりお酒飲んだりっていうサイクルの延長線上でアウトプットできているとしたら、たぶんそういう生活が結果的にインプットになってるんですよね。もっと若い頃は、〈あれを観よう〉とか〈これを読もう〉、〈あそこに行かなきゃ〉っていう気負いがすごいあったんですけど、結局バランスを崩したら良いものにはならないし、無理のない生活をしていたら、結果アウトプットはなくならないっていう感じがしますね」

RYO-Z「作詞家のいしわたり淳治くん(ex.SUPERCAR)の本から得た知識なんだけど、〈発想の4B〉っていうのがあって。〈Bar(飲み屋)〉、〈Bed(寝室)〉、〈Bus(バスなどでの移動中)〉、〈Bathroom(お風呂やトイレ)〉っていう4つのBが発想を生む場所なんだって。それで言うと、ここ数年の俺の作詞は風呂でしてることが圧倒的に多い。普段やっているたくさんの妄想を、風呂でふと〈あれとあれ結びつけたら面白いな……〉って考えてるのが多いかな」

黒川「それ、僕もわかります」

‎RYO-Z「もちろんスタジオで集中する作業もあるけどね。スタジオでの作業はいろいろまとめていく作業で、それはある種のテクニックだから集中すればできる。でも面白い発想っていうのは、お風呂か、もしくはバーで話してる時に浮かぶな。その知恵をいしわたり淳治くんからいただいたと思って(笑)、日々続けている感じで」

黒川「RYO-Zさん、会うたびに今日サウナ入ってきたって言いますもんね(笑)」

‎RYO-Z「家で〈歌詞考えなきゃな〉って思ってる時は、〈うーんどうしよう、まあいっか、風呂入りに行こう〉って思って、家から片道30分くらいのところのお風呂屋さんに行って、そこまでの道中、書かなきゃいけない詞のオケを聴きながら考えるモードにする。30分歩いて、1時間弱風呂に入って、また30分かけて戻ってくる。するともうその頃には歌詞のタネみたいなものが出来てるんだよね。あとはある程度テクニックでできるから、最初のそれが浮かぶまでが大事でさ」

黒川「僕も何か出てきた要素があれば、あとはその要素同士のどこに橋をかけるかを考えるだけで、橋がかかるんです。だからRYO-Zさんと詞の作り方は近い気がするんですよね」

 

身体に良いものを取り入れるように

黒川「インプットということで言えば、僕は食べるものって結構作品作りに影響があるんじゃないかと思うんですが、RYO-Zさんはどうですか?」

‎RYO-Z「食べることはめちゃくちゃ好きだし、お酒飲むのも大好きだから、何かしら影響はあると思うけど……最近のブレイクスルーは本当にカレーですよ(笑)。カレーってだいたい美味いから、そこまで優劣とかつけてなかったんだけど、千葉の柏にあるボンベイっていうお店に行った時に初めて、辛いんだけどスプーンが止まらない体験をして。他にも、最近友達とLINEで話していて知ったお店に行ったんだけど、そこでもスプーンが止まらないわけ。それを機に〈カレーとはなんぞや?〉ってなってカレーを10日間くらい食べ歩いたのね。ある意味ラーメンだって同じじゃん。だけどカレーはもっと奥深さを感じるのよね」

黒川「すごいハマってるんですよね(笑)。でも美味しいものはたいてい身体に悪いなんて言うけど、カレーは美味しいのに身体にも良いっていう、数少ないものですよね」

‎RYO-Z「いや、本当だよね」