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近年の特徴

近年のスチャダラパー楽曲のお笑いに関する特徴は、リリックに細かくギャグを詰め込むところでしょうか。例えば2015年発売のアルバム『1212』収録の“ゲームボーイズ2”には〈ハードゲイじゃなくともセイセイ!〉(ちなみに歌詞表記はないですが、このあと〈フォー!〉とシャウトします)、〈プリクラあるある 早く言いたい 引っ越しする時出てきがち〉とレイザーラモンHG、RGそれぞれのギャグが登場します。

また“Boo-Wee Dance”は、BOSE、ANIそれぞれのバースの歌い出しに〈接しやすい〉と出てきます。これはロバートが〈キングオブコント(2011年)〉で優勝したときのネタの引用です。そしてバース終わりには、ご存じ千鳥・ノブのツッコミフレーズ「クセがすごい」が。ちなみにノブはTwitterで、この曲で漫才フレーズが引用されていると教えるリプライに対して〈必聴だ!!〉と引用RTしていますが、まさか中身が風営法を皮肉っている曲だとは思っていない気がします。

 

そして最新作『シン・スチャダラ大作戦』(2020年)では、収録曲“マイレギュレーション”で〈まるでHGの腰のグラインド〉と、またしてもレイザーラモンHGが出てきます。

また近年になると、そのギャグの入れ込み方もどんどん分かりにくくしている傾向があるように思えます。例えば“その日その時”。この曲は、東日本大震災の経験を通して備えをちゃんとしているかを問う曲です。それぞれのバースで〈どうなのよ 備え〉と聞いて、あんまりちゃんと備えていないことに対しての返答が、〈過去形〉や〈2割減〉となっています。これはまだ明言はされていませんが、元ネタはおそらく霜降り明星・粗品の体言止めツッコミでしょう。もしレコ発イベントでこの曲をやっていたら、きっと手を前に出す粗品独特のポーズで歌っていたはずでしょう。

また、今年発売されたBIMのアルバム『NOT BUSY』収録曲“Be feat. Bose”でも、客演にも関わらずBOSEは一見分かりにくいお笑いギミックを入れ込んでいます。リリックの中の〈『でもなぁ』なんつってブラマヨ吉田〉という一節。これはブラックマヨネーズの漫才の頭で、吉田が悩みを話し、それに対し小杉が〈◯◯したらええやんけぇ〉と解決策を出しますが、それに対して吉田が屁理屈を持って反論する部分があります。この反論のきっかけ台詞が〈でもなぁ〉です。ブラックマヨネーズの漫才台詞からの引用ということが、BIMファンに伝わるとは思わないでBOSEもこのリリックを書いたと思いますが、これも30年選手の為せる技。僕はニヤニヤしながら聴いていました。

こんな感じで、お笑いの構造を楽曲に取り入れたり、〈誰が分かるんだよ!〉という元ネタをこれでもかと散りばめられた曲・作品が多かったり、そういうところこそ、僕は〈好きです、スチャダラパー〉。

 

 


カンノアキオ
4×4=16(シシジュウロク)として2017年、EggsレーベルよりEP『Short Show』をリリース。以降はカンノのソロ・プロジェクトとして、ヒップホップを古典落語や会話表現とミックスさせた作品などを発表している。また、〈遅れてきた渋谷系〉と称し2020年に再結成した宅録ユニット・OK?NO‼(オーケーノー)では作詞を担当。