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Lil B “I Am George Floyd

天野「カリフォルニアの異才、〈The Basedgod〉ことリル・Bが〈私はジョージ・フロイド〉という曲を発表しました。7分にも及ぶ大曲で、気怠いヒップホップ・ビートに乗せて、警察官の暴力によって亡くなった黒人たちの名前を挙げていきます。〈非武装の黒人たちに対する警察官の暴力を止めなければならない〉というアウトロのラインに胸を打たれます」

 

Jim Jones “The People

田中「キャムロンらとクルー〈ディプセット〉を率いているNYのヴェテラン、ジム・ジョーンズ。彼は、その名も“The People”というパワフルな楽曲でフロイドを追悼しました。もの悲しいヴォイス・サンプルと鍵盤に乗せ、〈警官が怯えている彼の首を膝で押さえつけた〉と生々しく描写しています。〈俺たちは人種差別がはびこる土地で平等の権利を探している/それはコロンブスがここに上陸したときから始まったんだ〉というラインが強烈」

 

Eric Bellinger “ENOUGH

天野「エリック・ベリンガーは、2010年から活動しているLAのシンガー・ソングライターです。クリス・ブラウンの曲を多く書いていて、祖父がジャクソン5の作曲家だったボビー・デイ、というのも有名ですね。この曲では、〈もう十分だ/私たちはあまりにも多くのことを耐え忍んできた/警察官の暴力/新しい戦略のための時だ〉と悲痛に歌い上げています」

 

Conway The Machine “Front Lines

天野「ウェストサイド・ガン(Westside Gunn)の兄弟で、ベニー・ザ・ブッチャー(Benny The Butcher)の従兄でもあるコンウェイことコンウェイ・ザ・マシーン。NYのマナーをいまに受け継ぐラッパーです。〈前線〉という戦闘的な言葉を曲名に掲げ、リル・Bの“I Am George Floyd”と同じように、警察官の暴力の犠牲となった者たちの名前をリリックに編み込んでいます。〈仲間たちはみんな外に出ているぞ(All my niggas outside))と、まさにデモの現場を実況するかのようなフレーズが印象的です」

 

Dre “Captured On A iPhone

天野「マイアミのプロデューサー・チーム、クール&ドレー(Cool & Dre)としての活動で知られるドレー。現代のあらゆる悲劇が〈iPhoneで捉え〉られ、プロテストや防衛のためにも〈iPhoneが捉えた〉フッテージが使われる……。〈この曲をきっかけに若いラッパーたちが政治的な発言を臆せずにしてくれたらうれしい〉とドレーは語っています。抗議活動の様子を捉えたビデオは、とても生々しいです」