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森林は保護すべき資源。江戸時代に構築されたエコシステムとしての日本

 江戸時代の日本では文明の次元で影響を及ぼす二つの重要な選択がなされた。一つは鎖国をして自給自足的な経済の完結をつくること、もう一つは〈山林の伐採禁止〉である。ジャレドの考察によると徳川幕府はこの制限を加えたことで、森林資源としての材木を確保し閉じたエコシステムとしての日本列島を構築することが出来たのだ(ジャレドはそれがアイヌの経済資源を犠牲にして構築されていたことにも言及している)。こうした森林の保護は戦国大名たちが配下の地で出した禁制に遡るが、そこでは略奪や放火の禁止と共に竹や木の伐採の禁止がセットになっていた。これは森林は資源であることを認識していたということと、逆にそれまで調達のために乱獲が行われていたことを意味する。国土のほぼ8割を山林が占める日本に原生林がほとんど残っていないことからも、〈森〉や〈林〉という言葉自体〈守り〉〈生やす〉と語幹を共にしていることからも、早くからそれは保護しなくては失われるものとして認識されていたことが窺えよう。