Page 2 / 6 1ページ目から読む

1. Phoenix “Identical”
Song Of The Week

田中「〈SOTW〉は、フェニックスの2年ぶりとなるニュー・シングル“Identical”! 90年代後半にいわゆる〈フレンチ・タッチ〉の亜流として登場し、以降〈コーチェラ〉のヘッドライナーを務めるなど、ワールドワイドな人気を博している彼らは、まぎれもなくインディー・ロックの神バンドですね」

天野「〈神バンド〉って……(苦笑)。言葉に携わる仕事をしているひとが、そんな言い方をしていいんですか!? それはともかくとして、この曲はソフィア・コッポラの最新映画『On The Rocks』のサウンドトラックのためのものなんだとか。というのも、ヴォーカリストのトーマ・マーズの伴侶はソフィアなんです。ソフィアの映画音楽には、フェニックスが何度も携わっていますよね。ちなみに、バンドのロゴが描かれたTシャツがひたすら燃えていく意味ありげなミュージック・ビデオは、ソフィアの兄ロマン・コッポラが監督しています」

田中「またこの“Identical”は、昨年不慮の事故で亡くなったバンドと親交の深いプロデューサー、フィリップ・スダ―ルへの追悼の意を込めた楽曲とのこと。レコーディングは、ズダールが運営していたモーターベース・スタジオで行われたようです」

天野「ハッピーなサウンドですが、そういう思いがこもっているんですね。RIPズダール……。この曲はリズムがちょっとおもしろいですよね。というのも、南アフリカのゴム(gqom)・ユニットであるFAKAの“Uyang’khumbula”(2017年)をサンプリングしているんだとか。もともとハウスやディスコといったダンス・ミュージックのサウンドを巧みに取り入れてきたバンドでしたけど、ここにきてリズムの面でさらに挑戦的なアプローチをしているのがフレッシュです」

田中「正直、彼らのここ2作のアルバムは、バンドとしてやや手詰まりな印象を受けていたので、こうして新機軸を示してきたのはうれしいですね。なお、映画『On The Rocks』はApple TV+で10月に配信される予定。日本でも同時期に観られるのではないでしょうか。ラシダ・ジョーンズやビル・マーレイらが出演しているという映画も期待大ですが、フェニックスの次の一手も楽しみです!」