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繰り返すだけの生活で、なぜいいことをすべきか

リッキー・ジャーヴェイスが「いじわるばあさん」のようなアイデアをどこから得たかというと、ドラマ中にも出てきますが、ビル・マーレイ主演の「恋はデジャ・ブ」(93年)です。この映画はアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録されるくらい名作です。みんな「恋はデジャ・ブ」的なものを作りたくなるんでしょうね。

「恋はデジャ・ブ」は、性格の悪い主人公が、どういうわけかは謎なのですが、同じ一日を永遠とループしていくという話です。このプロットを聞くだけだと、とんでもないギャグ映画だと思うかもしれませんが、実は哲学的で人生とは何か、なぜ他人に優しくしないといけないのか、人は成長しないといけないのか、奥が深い話を秘めているんです。

主人公は、同じ毎日だからどんな悪いことをしてもいいんじゃないかと思ってしまいます。そう思うのが人間なのかもしれませんが、でも「恋はデジャ・ブ」を観ると、いやだからこそ何かいいことをすべきなんだと思えるのです。

同じ日が繰り返されるというSFの設定、よく考えると僕らの人生も実は変わりないです。毎日同じことの繰り返し、朝起きて、学校会社に行って、そして寝るだけ、そんななかでなぜ人はいいことをしないといけないのかと考えさせてくれるのです。「恋はデジャ・ブ」は、こんなブッタの教え、ニーチェの永劫回帰などのような難しい話を1時間41分で説明している映画なのです。

 

ほとんどの人が〈アフター・ライフ〉を生きている

「恋はデジャ・ブ」にヒントを得ながらも「アフター・ライフ」にはもっとたくさんのレイヤーが組み込まれています。奥さんに先立たれて、自殺をしようとしたけど、飼い犬と認知症になった父親の世話をするために死ねなかった主人公は、それなら世界一嫌な奴になってやろうと決めます。そんな主人公なので、口を開けば毒舌ばかり。しかしその毒舌は見事に世間の偽善をついている。皮肉にみんな苛立ちながらも、ブチ切れずに言葉で対抗していこうとするのを観てると、これぞイギリス文化だと思います。

「アフター・ライフ」という言葉の通り、すべてが終わった人間が、どうやって生きていくのか、どうやって人生を取り戻していくのか。いや、これって、奥さんが死んでなかったとしても、ほとんどの人があてはまるんじゃないですかね。挫折と同じ何かです。次の希望を見つけられたらいいですけど、夢とか希望なんてなかなか見つけられないものですよ、ほとんどの人が〈アフター・ライフ〉なんじゃないでしょうか、〈アフター・ライフ〉という言葉が鋭く突き刺さる奥深いドラマなんです。

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