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親密で熱意あるスケート・カルチャーへの共感、ジェンダーレスでないファッションへの違和感

MVといえば、今作のリード・トラック“First Aid”では3タイプのリリック・ビデオが公開されており、そのうちのひとつはダパートンらしき人物がスケート・ボードに乗る姿を延々と映したものだった。Netflixの人気ドラマ「13の理由」に起用された“Of Lacking Spectacle”もそうだったが、ダパートンの音楽は青春群像劇やユース・カルチャーとの相性が抜群にいいのだ。

「スケートに乗ってるのが僕だと思った人も多いみたいだけど、あれは僕の友達だよ。もちろん僕自身もスケートは大好き。スケートって、大勢が集まるスケートパークのなかで自分自身の個性を磨き上げていくでしょ? それはスケートの技やスタイルだけじゃなくて、ファッションなんかも含めてね。そういう親密さと熱意が、スケート・カルチャーのいいところだと思う」。

『Orca』収録曲“First Aid”のリリック・ビデオ。スケーターのシーボ・ウォーカー(Sebo Walker)が出演

そんなダパートンのファッションもまた、数多のファッション・メディアから熱い視線を集めているが、勿論そこにも彼のアーティスト性はしっかりと込められている。

「ハイ・ブランドにこれといったお気に入りはないんだけど、Eckhaus Latta(エコーズ・ラッタ)は好き。服は(ショッピング・アプリの)Depopでもよく買うよ。面白いと思うのは、ファッションって性別で分けられている唯一のアート・フォームなんだよね。音楽も映像も写真も性別は関係ないけど、なぜかファッションだけは男女で分かれてる。僕になにか個人的なこだわりがあるとすれば、その境界線をなるだけ薄くするってことかな」。

 

音楽は自分の世界にこもれるもの

映像作品やファッションに精通するだけでなく、それぞれの分野でも非凡なセンスを発揮しているダパートン。彼は音楽をどんなアートフォームとして捉えているのだろう。

「映画やファッションと比べると音楽は内向的なもので、僕はそこに心地よさを感じてるんだ。音楽は自分の世界にこもれるもの。特に今回のアルバムでは、これまでアクセスできる自信がなかった領域にも踏み込めたと思ってる。自分でも誇りに思える音楽がつくれたよ」。

『Orca』収録曲“Post Humorous”

自身を苛む鬱と向き合い、その傷心を曝け出した『Orca』。その赤裸々な全10曲に、またしても世界中のインディー音楽ファンは魅了されるだろう。

「たとえばデヴィッド・ボウイのアルバムって、作品毎に大きなテーマがあって、そのどれもが前作からの旅立ちみたいに聴こえる。それってまさに僕自身がやりたいことでもあるんだよね。新たな可能性を求めて、どんどん進んでいきたいんだ」。