やらかしても元気になれる〈魔法の曲〉

 ステージでパフォーマンスする機会も徐々に取り戻されるなか、同じように待ち望まれていたのが新曲のリリースだ。ライブだけでなく作品のプロモーションもままならないのはどのアーティストにとっても大きな悩みだが、彼女たちは今回クラウドファンディングによるCD制作とリリイベに代わる施策を実行。配信のみではなく、こういう時期だからこそ手に取って愛着を持ってもらえる〈形〉にして届けることを大切にしたいという思いから、初めての手法を試み……結果は見事に目標額の130%超を達成! そして届いたのが、4曲すべてがA面扱いとなるクアトロA面シングル『どのみちハッピー/雨に唄えば/愛について考えるよ/エンドロール』である。まずは、“どのみちハッピー”。〈ああもう~、また失敗しちゃったよぉ! でも、人生は一度きり、がむしゃらに生きてやるんだからーーーーー!〉というセリフの乗っかる軽快なイントロからポジティブさが加速する、(2)には珍しいスカ調のナンバー。作詞はハロー!プロジェクト作品も数多く手掛けるシンガー・ソングライターの山崎あおい、サウンド・プロデュースはお馴染みのmichitomoだが……作曲は初めてメンバーの鍛治島彩が担当!

アップアップガールズ(2) 『どのみちハッピー! / 雨に唄えば / 愛について考えるよ / エンドロール』 T-Palette(2020)

──いつの間に才能を磨いていたんですか!

「作曲にすごく興味があって趣味で始めていたんですけど、初めて1曲できたときに、これを(2)で歌えないかなと、ふと思ったんです。プライベートで作ったものではありますけど、いつも考えてることは(2)のことばかりなので、(2)に歌ってもらえたら私は成仏できるな~って(笑)」

──成仏って(笑)。

「断片的なフレーズが浮かんだらその都度録音するようにしていたんですけど、ここまで丸ごとボンと形にできたのは初めてだったので、自分のソロ曲としてどこかで披露することもできたんです。私も勉強不足のところはいっぱいあるし、このまま出していいのかっていう不安はあったから。でも、メンバーに歌ってもらいたいっていう気持ちがすごく強くなって、ダメモトで社長に相談してみたんです。そしたらまさかのOKが出て、michitomoさんにアレンジをしていただけるってことになって、(2)の曲にしますっていうことが決まったところで歌詞も作っていただいて、それからみんなに言いました」

──詞やアレンジの部分にもかじぃさんの意見が盛り込まれてるんでしょうか?

「私は東京スカパラダイスオーケストラさんのファンだったので、私の希望でスカのアレンジにしていただきました。いままでいろんな曲を歌わせていただいてるんですけど、やっぱり原点はいろんな人の笑顔を作りたいってことだったし、もちろん失敗することはたくさんあるから、そういうのを引っ括めて元気になれる曲を歌ってみたくって。スカってどんな曲調でも元気になれるし、新しいことをやってみたい気持ちもあったので、ファンの皆さんと一緒に歌えるパートを作ってみたりとか、いろいろ仕掛けてみました。あと、後半に8行の歌詞があって、そこは一人一人が回していくパートなんですけど、この子しか歌えないだろうな、この子だったら大切に歌ってくれるだろうなって、メンバーが作るからこその歌割を考えてみました」

鍛治島 彩
99年7月21日生まれ。千葉出身。特技は鼻リコーダー、バスケットボール

──かじぃさん、もはやプロデューサーと言ってもいいですね。他の皆さんは最初に聴いたときどんな印象でした?

茉優「最初は歌うのが難しいなって思いました。リズムも音程もなかなか身につかなくて、かじぃは絶対音感があるからこんな難しい曲を考えられたんだなって思って。でも、ライブで歌ったらめっちゃ楽しいんですよ。なんか、(2)の過去の曲ひっくるめていちばん楽しいです、この曲。ライブができない期間があっての披露だったので、いろいろな思いも乗っかっていたと思うんですけど、それを抜きにしても歌っていて本当に楽しい曲です。つらかった日とか楽しかった日の思いが詰まっていて、それをメンバーも歌い踊りながら噛み締められている、共有できているから、こんなに楽しいのかなって思いました」

千夏「私も難しいっていうのが第一印象で、こんな曲よく作ったねって思ってたら、ここは絶対ムリって思ってたパートを割り振られたから、ん~もう!って(笑)。メロディーの上がり下がりが激しくて、音を取るところから苦戦したから、もう、何回聴いたんだろう」

「自分でも難しいと思ったもん、これ歌えないわって(笑)」

茉優「あと、久々に〈Lalala……♪〉が入ってる曲がきたなって思った」

「〈Lalala……♪〉はファンの人のパートっていう意味で入れたんです。私たちが一所懸命歌って、ファンの方にも歌ってもらって、ファンのみんなも(2)のメンバーだよみたいなことを伝えたかったんです」

茉優「でも、ファンの皆さんはしばらくライブで声が出せないから残念です」

新菜「私、日々やらかすことやマジついてないなってことが多いんですね。乗りたい電車を逃したり、人の名前をずっと間違えて呼んでたり、ってことがけっこうあるんですけど、そのたびに脳内再生される曲なんです。ひとまず笑っとこうかって、ちょっとやらかしてもこの曲で元気!元気!ってなれるので、なんか魔法の曲だなと思いました」

中川千尋
04年9月3日生まれ。静岡出身。特技は極真空手、バイオリン

──(2)のことをめちゃくちゃ好きな人が作った曲っていう感じが伝わります。

一同「おおーっ」

「負けないです、誰にも」

千夏「かじぃが絶対いちばんの(2)ファンだよね」

「おうちで気持ち悪いぐらい動画観てますから、私(笑)。〈カワイイなあ〉とか、よく言ってます」

新菜「自粛明けで久しぶりにメンバーと会ったとき、私も〈ホント、アイドルってカワイイんだなあ〉って思って、その話をかじぃにしたら〈私、ずっと思ってるよ〉って(笑)」