Page 2 / 4 1ページ目から読む

聴き手を肯定する楽曲

 バンドの最初の作品である『箱根』からは、ポスト・パンク調の攻撃的なアレンジにガラリと生まれ変わった“花束(Alternative)”、『ショートホープ』からは、女性メンバーの歌声をフィーチャーし、雨のマンデーズのヴォーカルとしても活動するフジカケと、人前で歌ったことはなかったという小山の対比が新鮮な“便箋”、彼らの知名度を高めるきっかけとなった“ショッポ”が再録され、過去と現在とが繋ぎ合わされる。

 「安宅くんは素晴らしいメロディーメイカーなんですけど、〈俺みたいなのがこんなポップな曲を歌っていいのか〉っていう自我がすごくあるから、ポップになりすぎないメロディーを選んじゃうところがあって、それは勿体ないなと。なので、安宅くんの引き出しを活かしつつ、即興的にテーマやコードを決めて、キャッチボールして、より多くの人に刺さる組み合わせを2人で考える。“ショッポ”はそうやって出来た曲です」(脇山)。

 秋田出身の安宅がフォーキーなメロディーで地元の温かみを歌う“北のほうから”、アップリフティングな曲調で、〈あなたはひとだよ〉と聴き手を肯定し、解放する“体育館”は共に名曲。くるりで言うならば、“北のほうから”が“東京”、“体育館”が“ロックンロール”といったところか。

 「“北のほうから”はもともと“東京”みたいなバッキングをしたいっていうのがありつつ、バンドで曲を作る難しさを感じるなかで、自分を癒すために書きました。デモは単調だったんですけど、川原さんがドラマティックにしてくれて、2サビ前のフィルとか大好きです。“体育館”の歌詞はさっきから話に出てる〈制限感〉について。自分にNGを定めてしまって、それによって動けなくなってしまってる人の歌です。僕そのものって感じ」(安宅)。

 「アレンジをするうえで、〈ここは俺の持ち場だ〉っていうところが箇所箇所にあるんで、フレーズはそうやって考えてます。ドラムを叩くより〈曲〉を叩きたいと思っていて、メトロノーム的な感じよりも、そっちのほうが1000倍楽しいですからね」(川原)。

 「〈体育館は迫ってくる〉 っていう歌詞を聴いて、最初は〈この曲何だろう?〉と思ったんですけど(笑)、〈私はひとでないと思って暮らしてきたけど あなたはひとだよ〉っていう歌詞は、自分に寄り添ってくれるというか、元気をもらえるなって」(フジカケ)。