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ロスト・アラーフの終焉

――72年には、南正人さん、裸のラリーズとの自主コンサート〈エレクトリック・ピュア・ランド〉がレギュラーで始まります。この頃からバンド活動とは別に髙橋さんはイベント制作に乗り出し、それで灰野さんと気持ちが遠ざかり、ロスト・アラーフが終わる原因となったと聞きます。

〈エレクトリック・ピュア・ランド〉(72年)フライヤー

「ロスト・アラーフを始めた頃からイベント企画は結構やっていて、当時一番話題となったのは映画『ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間』(70年)をコンサートと同様の大音量で観ようという企画で、これは大成功だった。きっかけは私がその環境で観たかったからだけど、水谷君や竹田君をはじめ多くの仲間が観に来たし、新聞や音楽誌でも話題になり全国で上映することになったんだ。この辺のことは『70年代ロック実話』に詳しく書いてあるよ。

音楽映画をPAを使って観る企画は大反響で忙しくなり、バンド活動との両立が結構大変になってきたのも事実で、更に水谷君との共同企画〈エレクトリック・ピュア・ランド〉や他のイベント制作もあり、多忙になりすぎ寝込んだこともあるよ。そんなことも原因でロスト・アラーフの活動に終止符を打つことになったんだよ」

〈エレクトリック・ピュア・ランド〉第3回(74年)フライヤー

――このCDに収められた74年1月の〈エレクトリック・ピュア・ランド〉の録音を聴くと、〈作曲〉をしていますね。灰野さんと2人で作ったのですか?

「これは私のアイデアにピアノの須田(茂)が加わり全体の構成をし、そこに灰野が加わった形で、言ってみれば全員で作曲したようなものだね。誰もやらないようなことを発見し表現するというのが私の信念で、それは今も続いているけどね」

 

〈本物〉の探求

――最後に髙橋さんにとってのロスト・アラーフとは何だったのでしょうか。

「私は音楽だけでなく映画や美術や本、落語や浪曲を含め、本物を探求する方に興味があり、その逆には全く興味がなかった。難しくてわからないものは何度も観て考え、考えては観る、そして実験してみる、ということを好んでいたので、ロスト・アラーフをやってみてわかったことは沢山あるよ。例えば、(イベントの)主催者の多くは無責任で、コンサートの音響や照明にはリズムや想像力もなく、お客やメディアも海外文化とのギャップが大きく民度の低さを痛感させられたのもこの頃だった。

ひょんなことがきっかけで始まった私の音楽生活だけど、このバンド活動からあらゆる可能性が見えたのも事実だ。言ってみれば浅海君からの私への声掛けがなかったら、全くとは言えないけど違った人生になっていたかもしれない。だから浅海君には感謝しているし、その全ての基礎になったアップルハウスを忘れることは出来ないね。機会があったらアップルハウスのことを映画化してみたいな、とは思っているけど」

 


RELEASE INFORMATION

ロスト・アラーフ 『LOST AARAAF(豪華仕様完全限定盤)』 SUPER FUJI(2020)

リリース日:2020年12月30日(水)
品番:FJSP411
仕様:2CD 豪華仕様完全限定盤
価格:5,900円(税別)

■LPサイズ両開きハード・カバーくるみトレー仕様(サイズ 315 × 315 ×11)
■歌詞カード
①灰野敬二聞き取りによる
②アラン・カミングスによる英訳
■曲目・演奏クレジット

 

ロスト・アラーフ 『LOST AARAAF(通常盤)』 SUPER FUJI(2020)

リリース日:2020年12月30日(水)
品番:FJSP413
仕様:2CD 通常盤
価格:3,660円(税別)

■2CDマルチ・ケース
■歌詞カード
①灰野敬二聞き取りによる
②アラン・カミングスによる英訳
■曲目・演奏クレジット
■ライナーノーツ
①鳥井賀句
②髙橋廣行
■対談:灰野敬二 × 髙橋廣行(17,000字)
■ロストアラーフのライブ活動記録詳細年表(1970~1974年)

 

TRACKLIST
CD1
1. 叫喚地獄(27:39) 日本幻野祭/三里塚1971年8月
浅海章:Piano
灰野敬二:Vocal, Single Reed
髙橋廣行:Drums
2. 最後の審判(29:16) 精進湖ロックーン/精進湖畔1971年8月
浅海章:Electric Piano
灰野敬二:Vocal, Single Reed
髙橋廣行:Drums

CD2
1. 1999年の微笑(38:00) ELECTRIC PURE LAND #3/目黒杉野講堂1974年1月
灰野敬二:Vocal, Petphone
髙橋廣行:Drums
須田茂:Piano
斉藤:Electric Upright Bass
2. Midnight Walk(14:49) 渋谷オスカー1971年3月
浅海章:Piano
灰野敬二:Vocal, Prepared Slide Guitar
髙橋廣行:Drums
3. Law Out(8:07) 渋谷オスカー1971年3月
浅海章:Piano
灰野敬二:Vocal
髙橋廣行: Drums

 


PROFILE: 髙橋廣行
70年、ロック・バンド〈ロスト・アラーフ〉を結成。バンド活動の傍ら、72年にイベント制作集団〈ブルー・チアー〉を設立。73年、裸のラリーズに加入、実験音楽ユニット〈エターナル・ウーム・デリラム〉を始動。74年、ロック・コンサート制作会社〈アダン音楽事務所〉を設立。91年、〈制服向上委員会〉のためのプロダクション〈PTAコミティ〉を設立。95年、〈アイドルジャパンレコード〉を設立。2020年、「イベント仕掛人が語る『70年代ロック実話』」を刊行。

PROFILE: ロスト・アラーフ
70年5月、〈ビートルズ・シネ・クラブ〉主催のイベントに学生だった浅海章(ピアノ)と髙橋廣行(ドラムス)が出演。同年7月に灰野敬二がヴォーカルで参加、さらにギタリストが加わり、〈ロスト・ブラック〉から〈ロスト・アラーフ〉に改名。同月、フラワー・トラベリン・バンドや村八分などが出演した富士急ハイランドのイベントから本格的に活動を開始。ロック・フェスティヴァルや学園祭、地方ツアーをはじめ、前衛劇団の音楽を担当することも。その楽曲には一部作曲されたものもあるが、ほとんどがピアノとドラム、ヴォーカルの完全な即興によるもの。自由奔放なスタイルによる不定形な演奏は長らく理解されなかったが、現在は海外からの支持が厚い。