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©2019 Aurum Film Bodzak Hickinbotham SPJ.-WFSWalter Film Sp.z o.o.o.-Wojewodzki Dom Kultury W Rzeszowie -III Neovision S.A.-Les Contes Modernes

©2019 Aurum Film Bodzak Hickinbotham SPJ.-WFSWalter Film Sp.z o.o.o.-Wojewodzki Dom Kultury W Rzeszowie -III Neovision S.A.-Les Contes Modernes

 犯罪歴ゆえに司祭になる道を閉ざされていたはずのダニエルは、たまたま手にした司祭の衣裳を身に纏うことで実際に司祭になる。さらに豪華なミサ用の衣装に着替えた際の彼の言葉は、最初のうちこそ少年院の神父の摸倣だが、次第にオリジナルな輝きを放つようになり、聴衆を心からの感銘へと誘う。宗教の権威は、衣装や儀式の産物にすぎないのか……。ただし、宗教の〈欺瞞〉を暴くことではなく、むしろ儀式=衣装劇としての宗教の本質をあらわにすることにこそ、本作の狙いや素晴らしさがあり、だからこそ、僕らは今なお宗教に魅了され、その虜になるのだろう。

 ポーランド映画の水準の高さをまたしてもまざまざと証明する本作は、衣装の魅惑と欺瞞の両義性についての映画であり、だから物語上の焦点は、この卓越した〈衣装劇〉がいかなる結末を迎えるのか、つまりは、いかにしてダニエルが衣装を脱ぎ、裸になるのか……に集約されていく。厳格な論理性と意表をついた飛躍が表裏一体になるかのような、その見事な結末を、ぜひとも映画館で見届けてもらいたい。

 


CINEMA INFORMATION

映画「聖なる犯罪者」
監督:ヤン・コマサ
脚本:マテウシュ・パツェヴィチ
衣装:ドロタ・ロクピェル
サウンド・デザイン:カツペル・ハビシャク/マルチン・カシンスキ/トマシュ・ヴィチョレク
音楽:ガルペリン・ブラザーズ
出演:バルトシュ・ビィエレニア/エリーザ・リチェムブル/アレクサンドラ・コニェチュナ/トマシュ・ジィェンテク/レシェク・リホタ/ルーカス・シムラット
配給:ハーク(2019 ポーランド=フランス 115分)
◎2021年1月15日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、渋谷ホワイトシネクイント他全国順次公開
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