香椎かてぃ

価値観を人に委ねるな

――そんなZOCのシングル曲それぞれについて伺っていきたいと思います。“DON'T TRUST TEENAGER”を受け取ったときの反応はいかがでしたか。

藍染「最初に歌詞を見せてもらったのは……確か、夏のTIFの帰りに靖子ちゃんのケータイでチラッと」

大森「いま作ってるんだけど、ってね。自分が救われるために、自分が書いてないと生きていけないみたいな曲の書き方をしたんです。これができないと死んじゃうみたいタイプの曲だったので、最初にカレンに見せたときはこの曲をZOCに歌ってもらうのは申し訳ないという気持ちもあって、〈歌える?〉っていう確認のつもりだったんです。そうしたら〈歌いたいっす〉って言ってくれて。それで書き進めたら、にっちやん(西井)が〈この曲は自分の気持ちだから歌わないと〉みたいなことを言ってくれました」

西井「私は説明が苦手だから、この歌を歌うことによってZOCの気持ちを伝えられたらいいなと思ってます。これを歌うことで気持ちが楽になるなと思うし、私はこの曲がZOCでいちばん好き」

大森「自分のことを書いちゃったのにそんなふうに思ってくれるんだ、同じ気持ちで一緒にライヴができるんだ、早くやりたいなと嬉しい気持ちになりました」

藍染「靖子ちゃんは自分の気持ちを書いたって言うけど、ずっと一緒に活動してきたので素直に〈わかるわかる〉ってなるんですよね」

――なんなら自分もわかると思ったところもあって。

大森「本当ですか? 一緒に歌いますか(笑)」

――初期衝動を良いものとする言説みたいなものが苦手で。何かに衝き動かされて音楽をやり続けている人がいるわけじゃないですか。

大森「そうそう。嬉しい!」

――永遠の衝動が歌われているのがすごくいいなと感じたんです。それから、年齢を重ねていくことも描かれていると思うんですけど、若いほど良いみたいなエイジズムも嫌なんです。

大森「わかるわかる」

巫まろ

――これからもっと先に、よりリアリティーを帯びた歌になっていくのかなと思ったりしました。

大森「本当にそう思います。若さだったりパッと見の美しさを評価されるのは嬉しいけど、その評価が高まれば高まるほど、メンバーがそれに縛り付けられる部分もあるじゃないですか。醜形恐怖じゃないですけど、それで表に出るのが恐いなと思っちゃったりすることもある。それって呪いみたいなものなので、早く解いておきたいし、人間は美しくなり続けていくに決まっているので、そこは提唱していきたいです。巫は常にいまがいちばんかわいいし」

「はい。それはそうなので」

――かっこいい!

「自分が年を取ることを考えないことはないんですけど……言い方がすごく難しいですけど、25歳の一番は私だと思っているんです」

――言い方が逆に超ストレート(笑)。

「いや、難しいですね。炎上したくないので(笑)」

大森「エイジズムとかじゃなくて、タメは気にするよね。〈松坂世代〉の人が松坂の年俸を気にするみたいな。自分は渡辺直美より有名じゃないなとか(笑)、同じ年齢の人は気にするかも」

「というか、自分がすごすぎて目標がない」

大森「うおー!」

西井「そんなの言ったこともねーわ(笑)」

「なりたい自分が自分でしかないから、どうがんばればいいかわからなくて悩むことはあります」

大森「ああ、他人ですごい人はいるけど、まろの望むまろ像としては、いまのまろが完璧という」

「そうです! よくぞ言ってくれました(笑)。私は“DON'T TRUST TEENAGER”を聴いてZOCに入ってよかったと思いましたし、ZOCに限らずすべての曲のなかで歌っていていちばん楽しいです。好きな音楽を信じてやってきてよかったと思いました」

――ツアー・タイトルも〈NEVER TRUST ZOC〉だったりしますが、〈DON'T TRUST〉というのはどんな思いでつけたのでしょうか?

大森「価値観を人に委ねるなという気持ちです。〈信じられません〉と言われ過ぎたけど(笑)、私たちはそれぞれが自分の生きる道を信じているんです。最近、日本の文化教養について考えることが多いんですけど、いろいろなものに対して感受性や想像力が豊かになることが優しい世界に繋がっていくと思うし、それができるような楽曲を作って、ステージで生き様を見せて、それを拡げることでいい国にしたいんです。2020年は政治に負けたので、それに負けず文化で人を救うことをしたい。その思いからの表題です」