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1. Deb Never “Someone Else”
Song Of The Week

天野「〈SOTW〉は、デブ・ネヴァーの“Someone Else”です。デブ・ネヴァーは米LAのシンガー・ソングライターで、ベッドルーム・ポップの有望株。ライアン・へムズワーズやシュローモらが名を連ねるLAのアーティスト・コレクティヴ/レーベル〈WEDIDIT〉からのリリースで知られています」

田中2019年のEP『House On Wheels EP』は、彼女が影響を受けたというグランジや90年代オルタナティヴ・ロックをほうふつとさせるメロディーと、エモ・ラップ的なトラックがうまく融合していましたよね。今回の“Someone Else”は、ジャム・シティ(Jam City)とこれまでも彼女とコラボしてきたマイケル・パーシー(Michael Percy)によるプロデュース。両者とも〈WEDITIT〉人脈ではないところに注目です。ジャム・シティは、2020年に5年ぶりのアルバム『Pillowland』をリリースしたエレクトロニック・ミュージック・シーンの鬼才ですね」

天野「最近、ネヴァーはパーシーと一緒にLAから英ロンドンへと拠点を移したようです。前作から音楽性もがらっと変わっていますし、“Someone Else”は彼女の新たな一歩を踏み出したことを告げる曲だと言えるでしょう。メランコリックなメロディーはこれまでどおりですが、中盤から個性が立ってくるビート・プロダクションが印象的です。正直に言って、僕はベッドルーム・ポップって保守的な音楽だと思うんです。みんな似たような音楽性だし、新しい音を求める意志を感じないものも多い。そんななかで、ネヴァーは今回チャレンジングな姿勢を見せたので、すごく心強く感じましたね」

田中「“Someone Else”は、ちょっと歪んだ音作りがまさにジャム・シティ印ですよね。最後のコーラスでドラムンベース/ドリルンベース調の性急なビートになるところには、〈おっ〉と思いました。リリックは別れたパートナーへの思いを綴ったもので、〈あなたが他の誰かと恋におちないでほしい〉と未練を込めて歌われます。LAで何かあったのかな……なんて思っちゃいましたが、彼女のロンドンでの活動は楽しみですね!」