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心情の変化を映す音

 カップリングの“無機質”、こちらも映画「ファーストラヴ」の挿入歌としてフィーチャーされているバラード・ナンバー。

 「“ファーストラヴ”と一対になるような、同じ属性を持つ曲でもあります。背景は同じですが、もう少し、タイトルの通り、一周回って何も感じなくなった、感じようとしなくなった人物が、〈君〉の存在によって少しずつ温度を取り戻していくような曲になっています。“ファーストラヴ”よりももう少し狭い画で切り取った、心のつぶやきのような曲になっています。私が聴いてほしいなと思ったところは、歌詞のいちばん初めの一文です。〈道に迷ったと思ってたけど 僕はまだ進んですらいなかったみたいだ〉──これは私自身の経験でもあります」。

 いずれもUru自身の作詞/作曲で、編曲はトオミヨウ。トオミといえば、ファースト・シングル“星の中の君”のほか、Uruの名前を広く知らしめるきっかけになった“プロローグ”などでもタッグを組んでいる、言わば勝手知ったるパートナーでもある。

 「トオミさんは、楽曲が持つそのままの雰囲気をとても大切にしてくださって、今回も“無機質”は特に、(イントロの)ピアノのディレイもそのまま活かしてくださったり、私が皆さんに伝えたかったイメージをそのまま残していただけたことが嬉しかったです。Dメロで、夜が明けていく様子が伝わるような歌詞になっているのですが、アレンジをお願いする際、〈君と見た夜明けを初めて美しいと思えた〉というような心情の変化を表現したいという難題に、とても素晴らしいアレンジで応えてくださり、感激しました」。

 この2曲の歌詞のなかで、ひとつ相通じる部分を発見することができる。それが、〈その腕の中聴こえてきた音は〉〈君と新しい音を聴いたよ〉というそれぞれのサビで登場する〈音〉という表現。幸せや感動、それを日常の中の音からキャッチする感覚は、Uruらしさのひとつではなかろうか。

 「本当ですね(笑)! たぶんこれは私の私的な感情が入っているかもしれないです。私は気分転換によく散歩をするのですが、住宅街の生活音や街の喧騒などは、その時の自分の気持ちの状態によって聴こえ方が違っていたりして、騒がしいなと思うときもあれば、その雑踏が心地良かったり、同じ音のはずなのにそのときによって感じ方が違うんですよね。きっと、自分の中で何かが変わったとき、その人は新しい音や景色を初めて感じたような感覚になったりするんだろうなと想像したんだと思います」。