1. 出身地と音楽活動を始めたきっかけ(バンドであれば結成のいきさつ)について教えてください。

桜井晴紀「出身地は茨城です。音楽は、大学のコピーバンドサークルに入ってから始めました。水いらずは好きで何度かライブを観ており、それがきっかけで加入することになりました」

井上真「出身地は東京の中野区です。家族がバンドをやっていた影響で、中3からバンドを始めました。オリジナルの曲を本格的に作り始めたのは、大学に入ってからです。その大学のロック研究会というサークルで今の前身となるバンドをはじめ、その後メンバーが代わり、今の編成になりました」

2. 現在の音楽性に影響を与えたと思うアーティストや楽曲は?

Noise『天皇』

桜井「自分が、奇麗だと思う感覚と凄く近い気がしています。こんな風に音楽を作っても良いと教わったと思います」

Jacob Collier “Moon River”

井上「彼の考えた音楽理論や微分音のコーラスなど、本当に音楽的にすごいことをやっている人に出会えた気がします。音楽へのアプローチ方法を学びました」

3. 今回TOWER DOORSで紹介した曲はどんなふうに生まれた曲で、どんなことを表現していますか?

“水の重さ”

桜井「井上さんが作っていた曲と、僕が作っていた曲のコードがうまく組み合わせることができることに気づいてできた曲です。全体の構成を一緒に作ってリズムや肉付けしていきました。最後のAメロとBメロが重なる個所が、表現していることとも繋がっており気に入っています」

井上「知人のライブを観に行った時に、すごく嫌な気分になって、それが大雑把に自分と他人の不一致にあると思いました。不一致を解消するためには〈他人を自分にする〉しかない。そんなコンセプトで生まれた曲であります」

4. 交流のあるアーティストでいま注目しているのは?

桜井Lanesというバンドです。作曲、録音、ミックスまで自分でやっていくという姿勢を尊敬しています」

井上「同じくLanesというアーティストです。全ての音に田村くんの意図が混ざっている気がします。特にコーラスワークが好きで、音の出し抜きが秀逸です」

5. TOWER DOORSは新しい音楽との出会いを提供することをコンセプトとするメディアですが、あなたが最近出会った新しい音楽は?

江差追分

井上「最近はアジアの民族音楽や日本民謡を聴いていて、特に江差追分には日本独特の拍の取り方などを感じます」

6. ライブやリリースといった今後の活動や、やってみたいことなど、これからの展望について教えてください。

井上「西洋のマーケットとは違う音楽を作りたいです。特に白人、黒人音楽とは違うアジア的な楽曲を探求したいと思っており、自分達がやらなければと使命感を感じてます。なのでそういうコンセプトのアルバムを次に作れたらと思ってます」

桜井「僕は、特にそういった使命感は感じていませんが、面白い音楽が作れたらと思っています」

 

新しく出会った音楽に北海道の民謡である〈江差追分〉を挙げていたことや、〈アジア的な楽曲の探求〉という回答は、とても興味深かったです。水いらずのジャンル分け不能な音楽性や実験的なアプローチは、こういったルーツを深く探究する飽くなき精神性から来ているのだと実感しましたし、次の作品がとても楽しみになりました。

水いらずが2年以上の年月をかけて完成させたアルバム『ほとんど、空』は、2020年12月にリリースされています。細部までこだわり抜かれたサウンドと、いま言った探究心が強く反映された作品に仕上がっていますので、ぜひ聴いてほしいです。瞬発的に絶賛されるというよりも、じわじわと後世に語り継がれ、のちのち重要になっていくアルバムではないかと思っています。

彼らのYouTubeチャンネルには、同作から“ほとんど、空”と、“沈沈沈”のミュージック・ビデオがアップされています。『ほとんど、空』が描く世界により浸れる映像作品なので、必見です。

 


RELEASE INFORMATION

水いらず 『ほとんど、空』 (2020)

リリース日:2021年12月19日
配信リンク:https://linkco.re/nTVscxFg

TRACKLIST
1. 東京都板橋区西町2-50-4
2. ほとんど、空
3. 沈沈沈
4. 水の重さ
5. 午后の世界
6. アンダースロー
7. 光線
8. あと