カクバリズムはずっと続いていくレーベルだと思う

――そんななか、お2人は晴れてレーベルメイトになったわけですけど、サイトウさんはHomecomingsのカクバリズム加入を聞いて、どう思いましたか?

福富「それは気になりますね(笑)」

サイトウ「いや、もうついに来たなっていう感じでした。人間的に仲良かったというのもあったし、違和感はまったくなかったですね。うちの社長(角張)から〈今度ホムカミやるかも〉みたいな話を聞いたときも、〈うん、そうだよね〉って感じでした(笑)」

福富「嬉しいですね」

――福富さんとしては、カクバリズムに入ることで、Homecomingsにどんな影響をもたらしたかったんでしょう?

福富「ユアソンはもちろんSAKEROCKやcero、キセル、mei(ehara)さんなど大好きな人たちがいっぱいいる、というのが入った理由としてはシンプルに大きいんですけど、そういう人たちがいる場所に身を置くことで、(自分たちの活動に)筋が通るんじゃないかなと思ったんです。自分たちもいい影響を受けつつ、Homecomingsからもカクバリズムにフレッシュな刺激を与えられたらいいなって」

――カクバリズムというレーベル自体には、どんな印象を抱いていましたか?

福富「カクバリズムは、ずーっと続いていくレーベルだと思うんですよ。所属しているバンドも長く続けている人ばかりやし、それはレーベルからアーティストへのケアやマネジメントがしっかりできているからなんだと思う。そこがすごく魅力的でした。あとカクバリズムって、そのときどきで自分たちの意思をちゃんと表明するじゃないですか。デザイナーさんの問題、思い出野郎(Aチーム)のイベントで差別発言があったときなんかも、すぐに自分たちの考えを発表していた。そういう姿勢も、自分がバンドをやるうえでの意識と合っている気がしました。そこも大きかったですね」

 

新しい街へのウキウキする気持ちを映した『Moving Days』

――そして、Homecomingsの新作『Moving Days』に収録された“Moving Day Pt. 2”は、サイトウさんがプロデュース。そもそも〈Moving Day〉という言葉はもともとシングル“Cakes”のカップリング曲“Moving Day Pt. 1”で使われていましたよね。今回は〈Pt. 2〉であり、さらにアルバムのタイトルにもなっていて。

福富「〈Moving Day〉というワードは以前から頭のなかにあって、いつか大きく使おうとメモってあったんです。“Moving Day Pt. 1”のときは“Cakes”のカップリングだけで終わるものではない気がしたから、〈Pt. 1〉と付けて、次も使えるようにしたんです(笑)。よく考えたらそれもユアソンっぽいですね」

『Moving Days』収録曲“Moving Day Pt. 2”
 

――確かに(笑)。前作『WHALE LIVING』(2018年)以降、メンバー全員が京都から東京/関東に引っ越したことも、新作の〈Moving Day〉というテーマには影響を与えたんじゃないですか?

福富「住む町が変わったことは、やはり大きかったですね。引っ越してきて何もない、でも風通しのいい部屋があり、外に出てみると郊外の街で、大きな川が流れていて……という環境から新作の世界観が出来ていった。そして、気持ちがワクワクする、ウキウキする――そういう感覚にマッチしたのがソウル・ミュージックだった。アコースティックな『WAHLE LIVING』の次に出すべきものとしても、ソウルっぽい音楽がしっくりきたんです。肉体的な音楽……シンプルに言うと踊れるものにしたいという気持ちはあって」

『Moving Days』収録曲”Herge”
 

――ホムカミとしてのソウルをめざすうえで、サイトウさんに力を借りようと思った?

福富「というより、僕はもうずっと昔からジュンさんに、〈ホムカミの曲で弾いてもらいたいな〉と思っていたんです。それこそHALFBYの曲に参加されていたし、GALLOWへの客演などもあったし、どの曲を聴いてもジュンさんの音ってわかる感じが良かった。だから、バンドとして〈キャロル・キングみたいな曲を作りたい〉となったとき、〈それはジュンさんに鍵盤を入れてほしいよね〉と、メンバー全員一致で決まりました。ちょうどカクバリズムにも行くし、タイミング的にもぴったりだなと」

――じゃあ、サイトウさんの参加ありきで曲作りも進めていったんですか?

福富「僕らとしてはそうでしたね。だから、デモでも間奏部分は思いっきり空けていて(笑)」

サイトウ「歌モノの曲なのに、おそらくオルガンのソロ用だと思われるスペースが〈こんなに空ける?〉ってくらい空いてたね(笑)。最初に聴いたときは笑いました」

福富「最初は演奏者としてお願いしようと思っていたんですけど、カクバリズムのスタッフからの提案でプロデュースもしてくれることになったんですよね」

サイトウ「僕は、紆余曲折がありつつ、いろいろなスタイルでバンドを20年以上やってきたし、〈これまで自分が経験してきたことを、そろそろ何かしらに活かせないかな〉とちょうど思っていたんですよ。そんなタイミングでHomecomingsがカクバリズムに入ってきて、この話をもらった。なのでタイミングがぴったり合ったというか、僕も〈いい機会をいただけたな〉と思いました」