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NiNE8 “Cold Hands / Gotta Get”

天野「ロンドンの音楽/アート・コレクティヴ、NiNE8(ナインエイト)。所属しているのはビーグ・ピーグ(Biig Piig)、ラヴァ・ラ・ルー(Lava La Rue)、ボーン・スリム(Bone Slim)、ナヤナ・アイズ(Nayana IZ)、ロレンゾRSV(LorenzoRSV)、リバーン(L!baan)、ナイジ(Nige)、コーン(KxRN)、マック・ウェザ(Mac Wetha)の9人です。人種もジェンダーもバラバラに見えますし、いかにもロンドンらしい集団。僕はたしか、2020年のミックステープ『No Smoke Vol. 2』で彼らのことを知ったのだと思います」

田中「ナイジとラヴァ・ラ・ルーの2人が語っているフレッド・ペリーのサイトにあるインタビューを読むと、〈ストリーツと共演したい〉〈自分の音楽と生き方に大きな影響を受けたのは、ロンドンのサウンドシステム・カルチャーとルード・ボーイ・カルチャー〉〈ディーン・ブラントと胃時間過ごしてみたい〉などなど、発言のひとつひとつがクールですね」

天野「そこで挙げられている固有名詞や文化も、いかにもUKらしいですよね。各メンバーはそれぞれソロで活躍していますが、ここで紹介するのはNiNE8としてのニュー・シングルです。“Cold Hands”と“Gotta Get”の2曲からなる両A面シングルで、前半の“Cold Hands”はマックとラヴァがプロデュース、ナヤナとラヴァが歌っている曲です。グランジっぽいダークなムードと、ザラついたギター・リフが印象的ですね。もう一方の“Gotta Get”はマックとナイジのプロデュースで、ナイジ、ロレンゾ、ボーン・スリム、ビッグ・ピッグがラップしています。ドリルやUKベースっぽいニュアンスが滲んだトラップ・ビートで、こちらもどことなくダークでゴシック」

田中DIYの記事を読むと、前者はショウ・ミー・ザ・ボディのようなNYハードコアやUKトリップ・ホップから影響を受けているようですね。後者は〈生きるか死ぬかのメンタリティーにフォーカスしている〉と。とにかく、NiNE8は注目だと思います!」

 

Martha Skye Murphy “Found Out”

天野「英ロンドンのアーティスト、マーサ・スカイ・マーフィの新曲“Found Out”。マーサ・スカイ・マーフィのことを知ったのは、スクイッドの“Narrator”でフィーチャーされていたから。〈このおそろしい叫び声、誰!?〉と思って調べたところ、ロンドン・シーンのシンガー・ソングライターだということがわかりました。それで、Bandcampで作品を買ったり、Spotifyで曲を聴いたりしたんです」

田中「2019年にファーストEP『Heroides』を、2020年にセカンドEP『Heal』サードEP『Yours Truly』をリリースしています。ゴシックでダークでエクスペリメンタルな世界で、ポスト・クラシカルとフォークの中間のような音楽性ですね」

天野「グルーパー × フアナ・モリーナ × ジェシカ・プラット× スワンズ、というか……。そんな彼女のサウンドに惹かれて動向をチェックしていたので、新曲がリリースされてうれしかったですね」

田中「セルフ・リリースのこの新曲は、FKA・ツイッグスの『MAGDALENE』(2019年)に参加していたイーサン・P・フリン(Ethan P. Flynn)がプロデュースしています。アコースティック・ギターの爪弾きとオーヴァー・ダビングされた歌がベースですが、ノイジーなエレクトロニック・サウンドや形容しがたいエフェクトで加工された音が混ざり合っていく展開に戦慄しますね」

天野「いかにもマーフィらしいゴス・フォークで、たまりませんね。今後の活動にも期待しています!」

 

Lil Baby & Lil Durk “Voice Of The Heroes”

天野リル・ベイビー&リル・ダークの『Voice Of The Heroes』は、今週最大の話題作ですよね。米アトランタのベイビーとシカゴのダークによるコラボレーション・アルバムで、トラヴィス・スコット、ヤング・サグ、ミーク・ミルなどが参加していて、超豪華です」

田中リル・ダークの2020年作『The Voice』のデラックス・ヴァージョンに収録された“Finesse Out The Gang Way”で2人は共演しているので、あの曲が布石になっていた感じがしますね」

天野「リル・ベイビー&ガンナの名コンビの再来という感じもします。アルバムのタイトル・トラックと言っていいこのリード・シングルでは〈見ろ、俺が『ヴォイス』で、ベイビーが『ヒーロー』〉と自信たっぷりにダークがラップしていて、向かうところ敵なし、という感じ」

田中「プロデューサーはヒューストンのタッチオブトレント(TouchOfTrent)とボストンのヘイズ(Haze)。プロジェクト(公営住宅)と思われる集合住宅や多数の黒人たちがビデオには映っていますね」

天野「ベイビー&ダークが、屋根の上から金をばら撒いている様がなんとも言えませんね(苦笑)」