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Little Simz “Rollin Stone”

天野「リトル・シムズは、出す曲出す曲すごいですね。4月に〈SOTW〉に選んだ“Introvert”もそうですし、連載ではスルーしてしまいましたが、クレオ・ソル(Cleo Sol)をフィーチャーした“Woman”も最高でした。そして、9月3日(金)にリリースする『Sometimes I Might Be Introvert』からの3曲目のシングルが、この“Rollin Stone”です」

田中「プロデューサーは、ジャクワブ(Jakwob)ことジェイムズ・エドワード・ジェイコブ(James Edward Jacob)。ダブステップをベースにしたベース・ヘヴィーなダンス・ミュージックの作り手で、リズ・アーメッド(Riz Ahmed)やオーロラ(AURORA)らの楽曲のプロデュースでも知られています。リトル・シムズとは2015年にEP『Time Capsule』を共作していますね」

天野「もう一人は、UKシーンのキー・パーソンであるインフロー(Inflo)。リトル・シムズの出世作『GREY Area』(2019年)でも活躍していて、話題のバンド、ソー(SAULT)のメンバーでもあります。ちなみに、ソーは新作『NINE』を99日間限定でリリースするそうですね。すごいリリース方法だな……」

田中「そんな2人がプロデュースした“Rollin Stone”は、前半はダブステップやUKベースを思わせるヘヴィーでダークなビートで、リトル・シムズらしいアグレッシヴで歯切れのいい高速ラップが印象的です。しかし、1分24秒あたりでいきなりスロウなサザン・ヒップホップ調へとビート・スイッチして、ムードががらっと変化。リリックには〈渋谷〉〈寿司〉〈ヘッディ(・ワン)〉〈グッチ〉〈サンパウロ〉などなど、さまざまな固有名詞が登場します。〈転がる石〉である彼女が、いかに努力と苦労をして頂点にまで上り詰めたかを語っている内容だとか」

 

Duma “Cannis”

天野「デュマは日本のメディアで取り上げられることはほとんどないのですが、2020年、大いに話題になったアーティストです。というのも、アフリカ、ウガンダの首都カンパラの有名レーベル、ニゲ・ニゲ・テープス(Nyege Nyege Tapes)からリリースしたデビュー・アルバム『Duma』が、カルトな支持を集めたからですね。インダストリアルなパワー・エレクトロニクスとブラック・メタルが悪魔合体したような音楽は、世界のリスナーの度肝を抜きました。不穏なカヴァー・アートも、一度見たら忘れらないものでしたね」

田中「デュマはケニアのナイロビのアンダーグラウンド・シーンで活動していたマーティン・カンジャ(Martin Khanja)とサム・カルグ(Sam Karugu)によるデュオです。今回、なんとアメリカのサブ・ポップからこの“Cannis”と“Mbukinya”という2曲をリリース。この展開はびっくりですね」

天野「驚きました。ただ、サブ・ポップは最近、実験的なリリースが多いですよね。で、この“Cannis”は、ニゲ・ニゲ・テープスが中心になっているタンザニアの音楽ジャンル、シンゲリ(Singeli)を思わせるような速いBPMとせわしないビートがかなりアグレッシヴで強烈。そこに乗るエクストリームなヴォーカルも含めて、アルバムより過激に進化した感じ。う~ん。これはすごい。今後の展開にも期待しています」

 

Meet Me @ The Altar “Feel A Thing”

天野「今週最後の曲は、パンク・シーンの注目バンド、ミート・ミー・アット・ジ・オルターの新曲“Feel A Thing”です。彼女たちのことは、当連載の〈2021年期待の新人洋楽アーティスト20〉で紹介しましたね。先日、デビューEP『Model Citizen』を8月13日(金)にリリースすると発表しました。この曲は、そこからのリード・シングルです」

田中「イントロの8ビット・サウンドにちょっと驚きましたが、それ以降はザクザクしたギター・リフとヘドバン必至のドラムが痛快な、まさに王道のポップ・パンク。思春期ならではの不安や葛藤をストレートに歌ったリリックも魅力的です。先日、Brooklyn Veganに〈あなたが知るべき2021年のポップ・パンク・リヴァイバル10曲〉という記事が載っていて、オリヴィア・ロドリゴの”good 4 u“なんかと合わせて彼女たちの”Hit Like A Girl“も挙げられていました。リヴァイヴァルの潮流の一翼を担っている、という点でもミート・ミー・アット・ジ・オルターには注目しておきたいですね」