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髙田安規子・政子「A little break」2021

 アーティスト・ユニット、髙田安規子・政子の作品はスケールの攪乱がキーワードの一つだ。超ミニ・サイズから普通に座れるものまで大きさの違う椅子が並ぶインスタレーションや、待ち針を編み棒にした極小の編み物が並ぶ。半開きのドアやピラミッドの切手のジグソーパズルなどは内側と外側が分断されたかのようなコロナ禍で、外とのつながりを感じさせる。

岩崎貴宏「リフレクション・モデル(テセウスの船)」2017/2021

 岩崎貴宏の「リフレクション・モデル(テセウスの船)」は台風で壊れた広島の厳島神社をモチーフにした作品だ。本物の厳島神社は修復されている。

 「建築は記憶の保存庫のようなもの。壊れたものを直すのは日常の再構成ともいえる」と岩崎は言う。本のしおりをほどいてクレーンにする作品ではカミュの「ペスト」など、コロナ禍で注目された本が混ざる。クレーンは建設にも解体にも使われる。ここでも破壊と再構成とがつながっている。

竹村京「修復されたN. 家の目覚まし時計」2019

 竹村京は壊れた食器などを布で包み、糸で縫って修復するという作品を作ってきた。この展覧会では蛍光色に光る絹糸で補修されたモノが並ぶ。この糸は、蚕に発光するクラゲの遺伝子を組み込んで作られた。が、人間の目では海中と同じ条件でないと光って見えないのだそう。そのため、竹村の作品にはブルーライトがあてられている。クラゲの遺伝子は地上でも海中のことを記憶しているのだ。

 この後、マスクやソーシャルディスタンスが必要ない世界が戻ってきたとしても、私たちの記憶にはコロナ禍でのことが深く刻まれるだろう。この展覧会に並ぶアートにはこのちょっと異常な日常がそのまま記録されているわけではない。でも作品をきっかけに変わってしまった日常について考えることができる。代わり映えのしない日常なんて存在しなかったんだ、そんなことに改めて気づかされる。

全て〈日常のあわい〉展示風景
撮影:来田猛 画像提供:金沢21世紀美術館

 


EXHIBITION INFORMATION
特別展〈日常のあわい〉
2021年4月29日~2021年9月26日(日)石川 金沢21世紀美術館 展示室7~12・14
開場時間:10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)
休場日:月曜日(ただし2021年8月9日、2021年9月20日は開場)/2021年8月10日(火)/2021年9月21日(火)
出品作家(五十音順):青木陵子+伊藤存/岩崎貴宏/小森はるか+瀬尾夏美/小山田徹+小山田香月/下道基行/髙田安規子・政子/竹村京

■料金
観覧券[日付指定入場制]
一般:1,200円(1,000円)
大学生:800円(600円)
小中高生:400円(300円)
65歳以上の方:1,000円
※( )内は団体料金(20名以上)およびWEBチケット料金
詳細はウェブサイトをご確認ください
https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=17&d=1788

主催・お問い合わせ(金沢21世紀美術館):076-220-2800
https://www.kanazawa21.jp/