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娘の詩から生まれた『Intruder』

――『Intruder』の構想は、いつどのような形で生まれたのでしょうか?

「制作は2年ほど前にスタートした。ただ、気候変動という点で前作『Savage』と次の作品をどう繋げるか考えていたんだけど、それがぜんぜん思い浮かばなくてね。

そんななか、当時11歳か12歳だったいちばん下の娘のエコー(Echo)が、『Earth』という詩を書いたんだ。そのポエムは、私たちの星(地球)が太陽系の他の惑星に話しかけているというもので、人類がいかにひどいことを地球に対してやっているのかを語っているものだった。とても美しい詩だったよ。彼女は、いまの地球の状況を深く理解していて、地球への強い共感やエンパシーを持っている。それが『Intruder』のコンセプトに繋がっていった。つまり、私は娘のアイデアを盗んだというわけさ(笑)」

――じゃあ娘さんにお金を払わないと(笑)。

「実は1か月前に、娘にはアイデア料を支払ったんだ(笑)。彼女はそれを使って、自分の部屋をデコレーションしてるよ」

――いい話です。

「娘の名前はアルバムにクレジットされていて、彼女の詩はアルバムのすべてのフォーマットで読めるようになっている。だから、彼女にもお金が入ってくる。それは当然のことで、彼女の詩からこのアルバムはスタートしたのだから、彼女なしにはこのアルバムはありえなかった。とても感謝してるよ」

 

才能あふれるプロデューサー エイド・フェントンの貢献

――では、アルバム制作のプロセスについて教えてください。

「全曲、ピアノからスタートする。朝、スタジオへ行って、まったくなんのアイデアもない状態で鍵盤を前にして、何かが降りてくるのを待つ。どの曲もメロディーから始まるんだ。そのメロディーを繋ぎ合わせていき、いい音だと思えたらコンピューターに入力して、音をレイヤリングし、すべてフルのレベルのプロダクションまで自分で行う。エイドに送る前に、自分でプロダクションまでやってしまうんだ。

歌詞は、音がすべて仕上がった状態から書きはじめる。というのも、音楽がドライヴして、歌詞を導き出してくれるからね。音楽がムードや雰囲気を作ってくれて、それが言葉をドライヴさせて、自分が描きたいものへと導いてくれる。前の段階が次の段階へ導いてくれる。事前に計画することは、まったくない。私は、次に何が来るかをただ待っているだけなんだ。曲が音楽を、音楽がプロダクションを、プロダクションが感情や雰囲気を、それらがリリックを、そしてリリックがヴォーカルを導いてくれる。

すべてが出来上がったら、それをエイドに送るんだ。私はLA、彼はイングランドにいるので、会うことのないままにファイルを交換して作り上げたんだ」

――同じ部屋で作業をしたわけではなかったんですね。

「ああ、ファイルのやりとりだけだよ。でも、FaceTimeで何度も話し合ったり、一緒に音楽を聴いたりしたから、十分コミュニケーションはとれている。彼のおかげで、よりよいプロフェッショナルなものになったんだよ」

――プロデューサーのエイド・フェントンは、2006年のアルバム『Jagged』以降、今作まで、あなたのすべての作品を手がけています。改めて、彼はあなたの創作プロセスにおいてどんな役割を果たしているのでしょうか?

「一人で作業していると、時々、それが良いのか悪いのかがわからなくなってくるときがある。エイドは、そんなときに自信を持たせてくれるんだよ。〈すごくいいね〉とか、あるいは逆に、〈それはよくない〉とかはっきり言ってくれるんだ。確信を持てないとき、信用できる助けほど大事なものはない」

――わかります。

「でもそれを超えて彼が素晴らしいのは、そのスキルや才能だ。曲を送ると、すぐに音の方向性を理解してくれる。曲のダイナミクス――曲のクライマックスや静かな部分、そして曲の流れなど、彼に渡す前の私の努力をすべて理解してくれる。そして、それに磨きをかけてくれる。音楽に込めたオリジナルのフィーリングや響き、ダイナミクスをすべて把握して、よりクリアに、プロフェッショナルなものにしてくれる。

それは、彼の才能やスキルがあってこそで、他の人が簡単にできることじゃない。私の音楽への理解やシンパシーがあるからこそなんだ。彼の今作への貢献は非凡で、ずば抜けたものだよ」