4人での共作

 プロダクション主導とはいえ、もちろん骨子にあるのがBuzzらしいバンド・サウンドであることに変わりはない。

「昔の僕らはけっこうおもしろい作り方で、いまはデモをパソコンでガッチリ打ち込んで作れる時代ですけど、当時はそういう環境ではなかったので、スタジオで僕がコードだけ順番決めて、ドラムとベースにテンポだけ指定してセッション的にリズムをまず作るんですよ。その場でラフにメロを歌ったりイントロをギターで考えたりして。そうやってメンバーたちから出てきたリズム・トラックを録音して持ち帰って正式な歌メロを書く作り方でしたね。再結成してからも昔の作り方を試してみたんですけど、そこは毎週リハーサルして顔を合わせてた頃とは違ったので、今回は僕のほうでガッツリ作ったデモから広げていく形でやりました。メンバーが気を遣ってデモに忠実に演奏したら〈デモと同じでつまらん!〉って変えさせたりしましたけど(笑)」。

 今回『world』に収録の5曲は、無観客ライヴでも披露した“月光”を除けば仕切り直し後に生まれたもの。なかでも“サンライズ”と“Don't be afraid”は〈福岡ソフトバンクホークス公式中継テーマソング〉に選ばれ、〈パ・リーグTV〉のダイジェストにも使用されている。福岡に拠点を戻して以来、アビスパ福岡の公式応援ソング“つわものたちの唄”や地元のエンタメ業界を支援するチャリティー曲“Beat goes on”(演奏と編曲はBuzzが担当)、ばってん少女隊の新曲“FREEな波に乗って”など、地元に根差した楽曲も多く手掛けている松隈だが、ホークスの大ファンとしても知られる野球好きだけに、気合いのギアも違っていたようだ。

「福岡に拠点を戻してからホークスさんと仕事したいなっていろんなところで言ってたんですね。スクランブルズの草野球部でPayPayドームを借りたのも関係があったんじゃないかと思うんですけど(笑)、曲作れる奴がいるってホークスさんサイドにも知っていただいて、曲よりはバンドをプレゼンさせていただいた形でした。今回はいろんな人に聴いてもらえる機会なので、無理にBuzz72+っていう我を出すよりもホークスに寄せていって。タイアップってどうしてもアーティスト・イメージと離れるというか、自分たちの言葉とクライアントの求める言葉って一致しなくて普通なんですけど、僕らは4人ともホークスのファンなので、そこが嘘偽りなく100%一致するっていう奇跡的な展開で(笑)。なので“サンライズ”は歌詞も全員で書きました。ホークスのイメージで書いた歌詞を出し合って僕が一つのストーリーにまとめたって感じで。4人での共作というのは初めての試みかもしれないですね」。

 その“サンライズ”はストリングスも備えたドラマティックな松隈節に井上のピュアな熱唱が冴え渡るラウドなナンバーで、井上と北島が作詞した“Don't be afraid”はポジティヴに未来を見据えるアップ・ビートな仕上がり。「状況に打ち勝っていこうっていう気持ち」を表現した楽曲に漲る熱いパワーは選手のプレイのみならず誰しもの日常を鼓舞するものだろう。この2曲の華やかなスケール感が軸となることで、それ以外の楽曲も個性の彩りを発揮している。

 「曲はもうちょっと作ったのかな。過去の曲もまだまだあるんでリメイクしてもいいかなと思いつつ、ホークスの2曲が主軸としてあるので全体のヴァラエティー感を考えて、ミディアム・バラードな“僕らは星をみている”があり、しゃがれたヴォーカルで尖ったものに振り切ってみた“world end”があって。“月光”は僕が作りそうなストレートでテンポ感のいいロックですし、統一感というよりは5曲を散らした感じですね」。