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정크야드 (JNKYRD) feat. Omega Sapien “Intro”

天野「ひさしぶりに、韓国インディーの楽曲を紹介しましょう。ソウルを拠点に活動しているプロデューサーのJNKYRDが、Balming TigerのメンバーであるOmega Sapienをフィーチャーした“Intro”。この曲は2曲入りのシングル『JNKYRD‘s Greatest Hits』に収録されています。カップリングは、O3ohnをフィーチャーした“Outro”。2曲ともカラーがちがっていて、おもしろいですね」

田中「“Outro”がリリカルなピアノのメロディーをフィーチャーしたバラードであるのに対して、この“Intro”はポスト・パンク風のギターとOmega Sapienによるエキセントリックなヴォーカルが耳を引く一曲。中盤からブリブリのベースとハードなドラムが入ってくる展開もおもしろいですし、プロダクション的にはエクスペリメンタル・ラップの亜流と言えそう。アール・スウェットシャートがポップ・グループをバックにマイクを持っている……みたいな」

天野「アールのラップともポップ・グループのサウンドともちがうような気がしますが(苦笑)。それはさておき、この曲のミュージック・ビデオにはヒョゴ(HYUKOH)のギタリストであるイム・ヒョンジェが出演していて、話題になっているようです。映像はといえば、塚本晋也‎監督の80年代の作品を思わせるような、かなりマッドなものです……。近年は東アジア全体のインディペンデントな音楽が注目を集めていますが、特に韓国のオルタナティヴな音楽、アンダーグラウンド・シーンはユニークですよね。掘れば掘るほど、おもしろい音を発見できそう。僕たち〈PSN〉も、もっと積極的にチェックしたいところ!」

 

Katy B “Under My Skin”

天野「5曲目です。英ロンドン出身のシンガー・ソングライター、ケイティ・Bのカムバック・シングル“Under My Skin”。丸5年ぶりの新曲です」

田中「ケイティ・Bは、“Katy On A Mission”や“Lights On”(いずれも2010年)で知られるダンス・ポップ・シンガーですね。前者はダブステッパーのベンガが手がけた楽曲で、ダブステップやUKファンキーなど英国らしいダンス・ビートをポップに歌いこなすシンガーです。ファースト・アルバム『On A Mission』(2011年)も、その後のエレクトロに寄ったセカンド・アルバム『Little Red』(2014年)もヒットしましたが、サード・アルバム『Honey』(2016年)の発表以降、表立った活動はしていませんでした」

天野「そのあたりの事情はわからないのですが、今年2月にUKジャズ・シーンの重要人物モーゼズ・ボイドの“2 Far Gone”のヴォーカル・ミックスで歌っていて、それが今回の復帰の伏線になっていたように思います。ひさしぶりの新曲“Under My Skin”は、クラブ・シーンとポップ・シーンを繋いでいたケイティらしく、現在のダンス・ミュージックのトレンドを意識したアフロビーツ調のサウンド。彼女の兄弟と同じ学校に通っていたというP2Jがプロデュースしていて、同じサウス・ロンドナーとして全幅の信頼を寄せていることを感じます。ケイティにはアルバムのリリースに期待したいですね」

 

Monaleo “Suck It Up”

天野「ラストはモナリオの“Suck It Up”。モナリオは、今年2月にリリースした“Beating Down Yo Block”がヴァイラル・ヒットしたラッパーですね。あのメアリー・J・ブライジが注目していたり、〈Rolling Loud California〉への出演が決まっていたりと、なにかと話題ですね」

田中「モナリオはヒップホップの聖地、ヒューストン出身のラッパーなんだそうですね。ヒット曲“Beating Down Yo Block”も、ヒューストン・ギャングスタ・ラップのクラシックであるヤングスターの“Knocking Pictures Off Da Wall”(99年)を引用していたのだとか」

天野「そうなんですよ。だから、ヒューストン・ヒップホップの正統後継者という感じがします。僕はラップの新曲を大量にチェックしていて、フィメール・ラッパーが以前と比べてたくさん登場しているのを感じるのですが、群雄割拠のフィメール・ラッパーたちのなかでもモナリオの登場には〈真打ちが現れたな〉と感じました。現在の西海岸やデトロイト・ギャングスタ・ラップのトレンドを意識しつつ、ダーティー・サウスの伝統を受け継いだスタイルを表現したこの“Suck It Up”は最高ですよね。プロデューサーは、同じヒューストンのキーウェイ・ビーツ(Keyway Beats)。モナリオは、今年注目すべき才能だと思います!」