Page 2 / 2 1ページ目から読む

Fickle Friends “Alone”

田中「続いてはフィックル・フレンズの“Alone”。フィックル・フレンズは英ブライトン出身の4人組で、2018年にファースト・アルバム『You Are Someone Else』をリリースしました。今年は『Weird Years』というEPシリーズを2作発表。ボーカリストであるナッティ・シャイナー(Natti Shiner)の溌溂とした歌声とダンサブルなエレクトロポップサウンドが魅力のバンドですよね」

天野「近年のブライトンといえば、マジック・ギャングドリーム・ワイフなどポップセンスに長けたインディーバンドを多く輩出していますが、そのなかでもフィックル・フレンズはポップさで頭一つ抜けているのではないでしょうか。この“Alone”も、モータウンっぽいビートを下敷きにした弾けるリズムや、ギターのアルペジオとシンセサイザーによるキラキラとしたサウンドがたまりません。っていうか、これ、いかにも亮太さんが好きそうな曲ですよね(笑)」

田中「この曲は歌詞がいいんですよね。シャイナーによると『家に友達を招いて大きなパーティーをしたいと思うこと、そしてそこから誰も去ってほしくないと願うことについて』の歌だそうで、〈地下室は人でいっぱい/誰も家に帰らない〉というコーラスが楽しいですね。当然、コロナ禍でのロックダウンを経た欲望や希望がストレートに歌われているわけで、ポストパンデミックのパーティーアンセムと言えるでしょう! 彼女たちの新作『Are We Gonna Be Alright?』は2022年1月14日(金)にリリース!!」

 

Joy Crookes “Trouble”


天野「ジョイ・クルックスはサウスロンドン、ランベスのシンガーソングライター。まだ23歳で、2016年にシングル“New Manhattan”でデビュー、2020年に〈ブリット・アワード〉の〈ライジング・スター・アワード〉にノミネートされた、という新進気鋭のアーティストです。母はバングラデシュのベンガル人、父はアイルランド人という出自で、そのダブルルーツ性は彼女の音楽や歌にも表れていますね」

田中「そんなジョイ・クルックスが先週10月15日にファーストアルバム『Skin』をリリース。この“Trouble”は、同作からのシングルですね。他のシングル、たとえば“When You Were Mine”は東アジア歌謡 × エイミー・ワインハウスと形容したいユニークな曲で、独特な音楽性ですよね」

天野「“Feet Don’t Fail Me Now”なんかにも顕著ですが、エイミー・ワインハウスからの影響は大きいのでしょうね。なので、エイミーやアデルのように、ハスキーボイスが魅力的なソウルシンガーとしてまず突出しています。それに加えて、サウンドはすごく英国的な折衷性が強い。この“Trouble”に至っては、ぶりぶりとしたシンセベースが印象的な独特のレゲエ。このあたりのおもしろいバランス感覚を含めて、今後も推していきたいアーティストです」

田中「アルバムのプロデューサーは、カインドネスやブラッド・オレンジとの仕事を経験しているブルー・メイ(Blue May)です。彼にも注目したいですね」

 

Band Of Horses “Crutch”


田中「今週最後の曲は、バンド・オブ・ホーセズの新曲“Crutch”! 2000年代半ばから活動している彼らは、どこか青臭さを残したメロディーと、派手さはないのですが力強いロックアンサンブルが持ち味。〈USインディーの良心〉なんてよく使われる言葉がありますが、彼らはそう表現したくなるバンドの一組でしょうね」

天野「一体、USインディーにはいくつ〈良心〉があるのでしょうか(笑)? それはさておき、この“Crutch”は2022年1月21日(金)にリリースされる新作『Things Are Great』からのファーストシングルです。2016年のアルバム『Why Are You OK』から6年ぶりとかなりブランクがありますが、彼らは前作のリリース後にメンバーが2人脱退していて、バンドを立て直すのに時間が必要だったのかもしれませんね」

田中「待たされただけに、“Crutch”で変わらぬBOH節を聴かせてくれたのはうれしいですね。全編を貫く、泣きながら走りたくなる疾走感がたまりません。とはいえ、変化を感じる点もあって、特にギターサウンドがいままでになく軽やかな印象。その快活さが、バンドの復活を強く印象づけます。ちなみに、『Things Are Great』にはデイヴ・フリッドマン(Dave Fridmann)やデイヴ・サーディ(Dave Sardy)、ジェイソン・ライトル(Jason Lytle)といった、これまでバンドに関与してきた面々が制作に協力しているのだとか。新作には期待しちゃいますね」