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KOSEN

新しさと挑戦が詰まった“Strawberry Psycho”

――そして、新曲“Strawberry Psycho”に至るわけですが、この曲にはちょっとびっくりしました。Kentaさんのこれまでの曲とは異なるタイプのサウンドですし、チャレンジングな曲だったんじゃないかと想像します。

Kenta「この曲は、たしかにチャレンジングでした。歌詞を書くのにも時間がかかりましたし、曲作りもKOSENさんと一緒に考えて、こねてこねて作った曲です」

“Strawberry Psycho”

KOSEN「きっかけはチャーリー・プースの“How Long”で、Kentaくんも僕もすごく好きな曲なんです。特にビデオのダンスがすごくよくて、ああいうちょっと大人な雰囲気の気取ったダンスが合う曲をKentaくんと作ったらおもしろいんじゃないかと思ったんですね。それで、4つ打ちのキックにKentaくんと考えたべースラインを加えたところから制作が始まったんです」

チャーリー・プースの2018年作『Voicenotes』収録曲“Strawberry Psycho”

――ベースラインが主役、というくらいに全面に出た、ダンサブルでファンキーな曲ですよね。自然に出来た曲なのでしょうか? それとも、音楽的な変化を意識していた?

Kenta「変化はつけたかったんです。従来どおりのやり方だと、いままで歌ってきたような曲はいくらでも出来るんですね。でも、何か新しいものを作る、いままでにない音楽を作ることが今回のゴール、目標だったのかなと思います」

KOSEN「“Tattooed Hollywood”を作りはじめた頃から、Kentaくんは〈新しさ〉にこだわっていたと思います。今年は〈新しさ〉を意識しているんでしょうね」

――2021年は、Kentaさんが敬愛するエド・シーランも“Bad Habits”をリリースして、ガラッと変化しましたよね。

Kenta「僕はエド・シーランをずっと聴いて育ってきたので、彼がああいうポップで派手でバッドな曲を作ったことにはインフルエンスされたかもしれません。自分もそういうものにトライしてもおもしろそうだな、と思えたんですよね。ちょうどメイジー・ピーターズの“Psycho”という曲にハマっていたりもして」

エド・シーランの2021年作『=』収録曲“Bad Habits”

メイジー・ピーターズの2021年作『You Signed Up For This』収録曲“Psycho”

 

デンジャラスでpsychoな言葉遊びに満ちた歌詞

――“Strawberry Psycho”は、サウンドに劣らず歌詞がすごいですよね。危険で中毒性のある恋愛が歌われていると感じたのですが、実際はどういうテーマなんですか?

Kenta「書いたことがないタイプの歌詞だったので、実験的に作っていったんです。普段の自分にはない世界だけど、〈こういうちょっとデンジャラスなシナリオの中に自分を置いてみたらどうなるのかな?〉と想像して書きました。こういうのが青春っていうんでしょうか(笑)? いままで僕はけっこうクリーンな曲を作ってきたので、新しい世界にステップインにすることへの憧れがあったんです。なので、この曲はファーストチャレンジですね。

あと、ビートやグルーヴが強い曲っていうことで、言葉を選ぶときにフォーカスしたのは韻を踏むこと。それも新しい試みですね。それと、〈psycho〉のようないままで使ったことがないちょっとダークな言葉を使ってみたり、言葉の選び方も意識しました。特にバース(Aメロ)とかは、うまく言葉のノリを出せたなって思いますね」

――じゃあ、フィクショナルな歌詞なんですね。Kentaさんはリアルなリリックを歌うシンガーソングライターなので、実際に危ない恋をしているんじゃないかと想像してしまいました(笑)。具体的には、どんなシチュエーションなのでしょうか?

Kenta「みんなが虜になっちゃうすごくかわいい女の子がいて、主人公の男の子はその子がデンジャラスだってわかっているんだけどワンステップずつ近づいてしまって、そこから抜けられなくなっていく……そういうセッティングです。

こういうsassy(生意気)でバッドな曲って、たとえばアリアナ・グランデとかデュア・リパとかメイジー・ピーターズとか、女性の視点からの歌が多いと思うんです。でも、男性の視点からsassyな曲を作ったらおもしろいんじゃないかなと思ったんですよね。

〈Two shots of strawberry psycho〉というフレーズは、イマジネーションで書きました。〈strawberry psycho〉をツーショット飲んだらその子に100パーセント落ちちゃう、というイメージですね。他にも言葉遊びをたくさん入れているので、イマジネーションをはたらかせて聴いてもらえるとうれしいです」

――〈Oh baby your eyes 偽装工作〉〈I 追放 loved you from the start〉〈But I want 無〉〈But I want 知〉など、英語と日本語が溶け合った、英語にも日本語にも聞こえる絶妙なワードプレイがおもしろいですよね。バイリンガルであるKentaさんにとって自然な表現なのかもしれませんが、韓国語混じりのK-Popやスペイン語のレゲトンが流行っているいま、コンテンポラリーに感じる曲だなと思いました。

Kenta「最初は全編英語詞だったんですけど、〈日本語なのか英語なのかわからないpsychoな歌詞を作りましょう!〉と作詞家の中村彼方さんと相談しながら、英詞の一部を日本語に置き換えていったんです。たとえば、〈Oh maybe your 楽園 heart〉の〈楽園〉は、実は〈lack of〉なんですね。響きは同じなんだけど、英語と日本語で2つのちがう意味が生まれて、ユニークな歌詞になったと思います」

KOSEN「前半の日本語は聞き過ごしちゃうほどなんですけど、後半になるにつれてバグが現れるかのように日本語の割合が増えていく、ということにKentaくんと彼方さんはこだわっていたようです」