……オマージュですよ?

 そこからド派手なシンセが炸裂する“ケセ”を挿んで登場するのは、石井と村井の共作曲である“裂け目の眼”。ハード・ロッキンなテイストも交えつつ、ダイナミックにドライヴする様がいかにも村井らしい一曲だ。

 「これは、僕が作ったデータを石井さんに投げたパターンですね。ハード・ロック/メタル寄りのものは秀仁君に投げることが多い気がします」(村井)。

 「ただ、前はハード・ロックっぽさを消すっていうところから始めてたんですけど、最近は何のためにハード・ロックっぽさを消してるのかもよくわかんないなと思って。それが残ってても何の問題もないから。ヴォーカルや演奏技術的な問題で変えたほうがいいなってところは直したりしますけど。この曲に関しては、尺をいじったりとかは全然してなくて、ドラムのフィルをちょっと変えたぐらいかな? 最終的には、やってて楽しい曲になって良かったです」(石井)。

 「ギターに関しては、いろいろとその……オマージュで(笑)」(桜井)。

 「ちょっとおもしろかったのが、研次郎君のデモはたぶん俺しか聴いてないんですけど、そこに入ってたギターで、俺が〈このフレーズはちょっとアレだからやめとこう〉ってなくしたものを、デモを聴いてないはずの青さんがそれに近い感じで弾いてきたっていう(笑)。それがまあ、LUNA SEAっぽいってことなんですけど、青さんに〈研次郎君が出してきた曲はどんな曲なの?〉って訊かれたことがあって、それに〈“ROSIER”と“JESUS”を合体させたような曲だ〉って答えたんですよ。曲の仮タイトルも“ローザス”ってなってたし、だから青さんのギターは“ローザス”のアプローチもあるんです(笑)」(石井)。

 「おもしろいなと思って、わざとやってみました(笑)」(桜井)。

 そして、シンセを追加してポップ度を増した“腐った檸檬”のあとには、村井が作詞/作・編曲のすべてを担った“ニンフォマニアック”が。ラース・フォン・トリアー監督の同名映画から名付けられただけあって詞はかなりエロティックだが、サウンド面は相反していたく開放的。〈80年代の未来感〉を纏ったシンセが煌めくフュージョン色の強いナンバーだ。

 「cali≠gariの三人って、そんなに共通項ってないじゃないですか。“ニンフォマニアック”はジェネシスとかラッシュを聴きながら作ってたんですけど、そのへんなら皆さん得意だと思って。何となくツイン・ヴォーカルになりそうなデモを作ってたら、何の指示もしてないですけどそうなってたし。歌詞はエッチな感じですけど、タイトルは青さんに変えてもらいました。元は商品名だったんで、引っかかっちゃって(笑)」(村井)。

 「ラースの『ニンフォマニアック』はその頃たまたま観たんですけど、途中で寝ちゃいました(笑)。あれはややこしい『セックス・アンド・ザ・シティ』ですね。で、そういう話をみんなにしてたら、〈このタイトルいいんじゃない?〉って。歌詞の内容的にも、響き的にもいいし、cali≠gariの研次郎君の曲に僕が歌詞を書くときは、割と映画から取ってきてるので。前の“動くな!死ね!甦れ!”もそうだしね」(桜井)。

 「映画って言えば、この曲を作ってたとき、『ネバーエンディング・ストーリー』のテーマ曲も聴いてました。映画の内容自体は全然関係ないですけど、音の雰囲気の時代設定はそのへんですね。MTVな感じです」(村井)。

 「わかる。シンセの使い方とかね(笑)。これ、ギターはがっちりキメるとそれこそフュージョンになっちゃうから、全然違うものをぶつけましたね。それこそ大御所ギタリストのフレーズを丸パク……いえ、オマージュですね(笑)」(桜井)。

 後半に入り、ノイズをまぶした優美なワルツ“鐘鳴器”を経て導かれるのは、石井が書き下ろした“100年の終わりかけ”。沁み入るような歌心に溢れたナンバーだが、復活第1弾シングルのカップリングに収められたお遊び曲(?)“画竜点睛を欠いた曲”を下敷きにしているところが一筋縄ではいかない。

 「最初は漠然と、70年代の、みんなが思い描くようなデヴィッド・ボウイみたいな曲があってもいいなと思ってて。これはフォーキーな、それもギター一本でいけるような曲だと思うんだけど、そういうものは青さん以外作ってないから、自分がそっち方面を作るっていうのもありかな、と。それと、その〈画竜点睛〉……ふざけた曲ですけど、それを作り直したらお客さん的にもおもしろいかなと思って、途中からそうしました。あんまり俺、ミュージシャンで誰が好きだとか誰に影響を受けたとか言わないし、実際にいないんですけど、でも、デヴィッド・ボウイが亡くなったときに〈オマージュです〉って言ってやってる人の曲を聴いたら違和感があったんですね。〈デヴィッド・ボウイが好き〉って言っててもそんなもんなのか、っていうのがあったから、今回はオマージュ的なギター・フレーズをいっぱい入れたりしながら、アツい曲を作ろうと(笑)。

 歌詞は、これも聴く人によっていろいろあてはまるものがあったりするんじゃないかなっていう。まあ、自分への戒めみたいなところも少しありつつ、いくつかの思いが交錯してるようなものです。ちょっとcali≠gariのことを歌ってるようにも捉えられますよね。そういう見方だと、物凄くいい歌詞になりますけど。あと場合によっては、〈ウィー・アー・ザ・ワールド〉みたいにも捉えらえる(笑)」(石井)。