Page 2 / 5 1ページ目から読む

壮大な物語を表現した大村孝佳参加曲“My Garden...”

――前回は『soLi』というセルフタイトルでしたが、今回『My Garden...』になった背景には、どのようなことがあったんでしょう? “My Garden...”というエンディング曲があっての話だとは思いますが。

ISAO「当初はわかりやすく『soLi 2nd』にしようかとも思ってたんです。

ただ、“My Garden...”は、前作の“The Tower”と似た部分があるんですね。とんでもない世界観で、これぞsoLiの最終形態みたいな。どちらの作曲も沙織ちゃんで、僕だけでは絶対に出せない雰囲気がある。もちろん、全曲気に入ってるんですけど、“My Garden...”は自分たちにとってもインパクトがあるんです。次に繋げるためにも、最後の曲としてある“My Garden...”を、タイトルにしちゃってもいいのかなと。それぐらい自信のある曲ということですね」

『My Garden...』収録曲“My Garden...”

――最初に聴いたとき、最後にしか置きどころがない重要な曲だなと感じました。

星野「“The Tower”もそうだったんですけど、“My Garden...”も音楽が物語と一緒に進んでいった曲なんですね。今回も〈何を言ってるんだ!?〉って思われそうで恥ずかしいんですけど……」

――いえ、むしろ、その話を伺いに来たわけですから(笑)。

星野「この曲は中世っぽい、『ファイナルファンタジー』的な世界観なんです。

錬金術とか、そういった技術を持った頭のいい女性がいるんですが、溺愛していた子供が大戦のときにはぐれて、死別したと思い込むんです。そのショックでおかしくなっちゃって、もう一回、お子さんを生み出す研究に没頭するんです。でも、上手くいかなくて、キメラがどんどんできちゃう。彼女にとってそれは必要のないものだから、自分のお城から捨てるんですけど、そのキメラが外で悪さをしだすんです。そのせいで彼女は魔女だと、みんなから怖がられちゃうんですが、本人は研究に没頭していてお城から出ないので、その状況に気づかない。ところが、噂を聞いて、魔女を退治しようとする勇者が現れるんです。それが実は死別したと思っていた彼女の子供なんですね。

実際の曲で言うと、たとえば、彼がお城のドアを開くと、パイプオルガンみたいなものを、その女の人が弾いている。それが冒頭のバイオリンソロですね。彼女は自分を退治しに来た勇者とキメラを用いて戦うんですけど、大村(孝佳)さんがISAOさんとギターソロでバトルするところは、その息子のレプリカと本当の息子が戦うシーン。

結局、刺し違えて、二人とも死んじゃうんですよ。でも、彼女は〈また生んであげるわ。また元気に『私の庭』で遊びましょうね〉と言って物語は終わるんです」

ISAO「……凄すぎないですか(笑)?」

――実の息子が目の前で絶命する……そこに悲しみなどはないんですか?

星野「もう狂人になってしまっているんです。ただ、ISAOさんが一瞬だけ一人で弾くところは、二人が死ぬ間際、子供が小さいときに一緒に遊んでいたことを彼女が思い出すシーンです。そのときは悲しみでおかしくなっちゃってるんですね」

ISAO「そんなストーリーがあるとは思わなかったけど、話を聞くと、そういう情景が見えてくるんですよ。すごく緻密に作られてる」

――物語を知ると、聞こえ方が変わってきますよね。大村さんのゲスト参加は、どういった経緯があったんですか?

ISAO「彼とはとある現場でずっと一緒にやってたんですけど、そこ以外で共演する機会がなかったんです。僕はフュージョンやジャムセッションの活動も大事にしていますけど、彼はどっちかというと、構築されたもので魅せるタイプじゃないですか。だから、一緒にやるイベントは組みにくい。でも、何かやれたらと思っていたんです。

そこで今回、沙織ちゃんの“My Garden...”にギターバトルが出てくるとわかって、誰を呼ぶかを考えたとき、思い浮かんだのが彼だったんですね。……まぁ、彼からは、化け物みたいなテイクが返ってきましたけど(笑)」

――明らかに大村さんも狙ってますよね(笑)。

ISAO「そう(笑)。また違う話なんですけど、ここで大切なのが藤岡幹大(2018年1月に急逝)という存在なんですよ。僕は彼とも長い付き合いで、藤岡くんも僕と同じようにインプロ系が好きだったから、一緒に音を出す機会も多かった。

もちろん、大村くんもそれをわかってたので、今回、彼は藤岡幹大の実機のバーガンディでレコーディングしてるんですよ。ソロの前半は、藤岡幹大が憑依して弾いてるようで……ホントに本人かもしれないというフレージングなんですよね。彼の思い入れもあったと思うんですけど、せっかくなので〈3人〉でやりましょうと。

大村くんに頼んでよかったなと思います。違う曲だったら、こうならなかった気がしますね」

――大村さんは、藤岡さんを背負いすぎてるぐらい背負っていますからね。