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ケンジは優しい

――ナオさんのパンクモードとは逆に、今回ケンジさんが作った3曲はわりとメロウでギターロック然としています。

「ケンジの3曲には〈あいつらしい〉と思いますね。あいつはブレないし、本当に変わらない。『MONSTER』と『Smoke!!』の2作に関しては、俺が〈どの曲をどっちのアルバムに入れるか〉をディレクションしたんですけど、俺が好きなケンジの曲は結構『Smoke!!』に入れたかも。もちろん『MONSTER』に入ってる曲もいいんですけど、こっちの3曲はケンジらしさがすごく詰まってる。あいつ、やっぱり優しいんですよ」

――ケンジさんの曲では“I don’t need another life”がリードソングとして出ていましたけど、あの曲は本当に美メロのギターポップというか、90年代っぽさもあるし、個人的にかなりグッときました。制作時に、ケンジさんが念頭に置いていたアーティストなどはあったんでしょうか?

「1975じゃないかな。1975がギターポップっぽい曲を出したじゃないですか。あいつ、あの曲にすごく新鮮さを感じたみたいなんですよ。俺もめちゃくちゃ好きなんですけど」

『Smoke!!』収録曲“I don't need another life”
 

――“Me & You Together Song”(2020年)ですよね。

「そうそう。あれには結構やられたなって思いましたね。あのバンドにああいうことをやられると、よりエモみが増す。MVも90年代をめっちゃオマージュしていて、すごくいいですよね。ケンジは、かなり参考にしていたと思います。最初に聴いたとき、似てるなと思ったけど(笑)、それをやりたくなる気持ちはわかった。今回のケンジの曲はちょっと懐かしいっすね。聴いていて落ち着く」

 

俺でもできる、と思わせたい

――そして、今回はドラムスのオオイナオユキさんが初めて作ったという“Blur blur”も収録されています。この曲はオオイさん自身がヴォーカルもやっていて、ファニーで可愛らしい感じがいいですよね。チャーべさん(松田岳二)がLEARNERS以前にやっていたCUBISMO GRAFICO FIVEに近い印象を受けました。

「これもちょっとスカ入っていますしね。俺、この曲はめっちゃいいと思ってます。普通に俺が歌いたいな、と思いましたもん」

『Smoke!!』収録曲“Blur blur”
 

――初めて書いた曲だとは思えないですよね。ナオさんがオオイさんに〈お前も曲を書いてこいよ〉と指示したんですか?

「そうですね。暇してるだろうから曲くらい書けって」

――コロナ禍でライブの本数も減ってるだろうし。

「そうそう。理想形として、ビートルズのスタイルになるべきだとは思っているんです。あと、やっぱりバンドを続けていくとマンネリ化しちゃうし、そうならないためにも曲を作れる人間は多いほうがいい。自分で曲を作る喜びとか作り方をわかっていたほうが、演奏するのも楽しくなるし。だから、オオイに『長くやりたいなら曲作りもやったほうがいいぞ。作ってこい』と言ったんです。でも、『どうせ、おもちゃみたいな曲を作ってくるんだろうな』と思ってたら意外にも……。人間ってすごいんだなと思いました(笑)」

――〈アルバムに入っていて嬉しいリンゴ・スターのヴォーカル曲〉的な魅力があるし、本当にいい曲ですよね。この曲は歌詞も〈適当でいいじゃん〉と歌っていて、Take it easyなムードを作品にもたらしてる。〈気楽にやろうぜ〉と言ってくれるのもパンクのいいところじゃないですか。

「それはいちばん大事かな。俺らが高校生のときはパンクが流行ってたから。演奏が下手だろうがバンドはやっていいという風潮があったと思うんです。でも、いまはハイスペックな音楽がメインストリームにいるからね」

――パンク黎明期のジン「Sideburns」に、3つのギターコード表とともに〈これがコードだ。これがもうひとつだ。これが3番目だ。いますぐバンドを組め!〉というアジテーションが掲載されていたというのは有名な話ですけど、パンクの根本はそこだと思います。

「そういう意味で、俺がいまいちばんパンクだなと思うのは、GarageBandで曲を作ってばんばんサンクラとかにあげてる奴らですね。〈あいつら、最高だな〉って思います。あれこそ誰でもできるというか、プリセットの音とかを使いながら、そこに歌を乗せて、〈なんかこれかっけー!〉みたいな感じでやっていると思うんです。あれがいまのパンクだと思うな。でも、自分がやりたいのはバンドだから、俺はバンドで〈俺にもできそう、俺もやりたい〉と思わせられる存在になりたい」

 

バンドと音楽の間に嘘がないように

――『MONSTER』のインタビューをした際に、『Smoke!!』はパンクのアルバムになると言われていて。そのとき、〈ゆるい曲でもパンクを感じれるものがある〉と話されていた。パンクっていうものを、ナオさんがどう定義しているのかを今回は訊きたいと思っていたんです。

「とりあえずサウンドの型ではないですよね。俺、いいって思ったものをパンクと表現しちゃうんです。〈これ、最高だな〉と〈これ、パンクだな〉はイコール」

――じゃあどんな音楽にパンクは宿るんですかね。

「何か音楽を聴いて、それを作ったミュージシャンのスタンスや性格、普段から考えていることが音から伝わってくるときがあるじゃないですか。そういうときに、〈これはパンクだ〉と思うんです。だから音楽以外の説明が要らないと思える、音楽だけですべてわかったと思わせてくれるものが、俺にとってはパンクなのかな」

――嘘を感じないもの、ということですかね?

「それはめっちゃありますね。昔から、作った人と、作られた音楽との間に違和感を感じると、嫌いになっちゃうんですよ。逆に、この人とこの音楽はすごくそばにいると思えた人のことは大好きになる。『MAD CITY』(2017年)に参加してもらったMaika Loubtéとかがそうなんですけど、彼女は息をすると同時に音楽が溢れ出る、みたいな人なんです。それが音楽からも伝わってくる。そこはシンプルに〈嘘がない〉っていうのはあるのかもしれない。

自分自身は〈音楽と離れちゃう〉みたいな感覚になったこともあるんです。自分の曲だけど〈やばい、これはよくないかも〉と感じたこともあった。だから、そうならないように、ナチュラルな状態でいたいな。嘘をつかないって簡単なようで、意外とできている人は少ない気がします」

――じゃあ最後にナオさんが『Smoke!!』の10曲のなかで、いちばんパンクを感じる曲ってどの曲ですか?

「うーん……“Blur blur”かな」

――いい答えですね。

「今回、自分が作ったものはすべて気に入っていて、特に1、2曲目はTENDOUJIのなかでもすごく好きだし、ケンジの3曲も素晴らしいと思うんですけど、やっぱ、初めて作ったものには勝てないんですよね。それは前回、ヨッシー(ヨシダタカマサ)が作った曲(“MY SOFT BONES”)にも思いました。初めて作った音楽って、作った人もドキドキしてるから、本当に両者の距離がゼロというか。本人と音楽がピタッとくっついてる感じがする。それが、なにより特別なんですよね」

 


LIVE INFORMATION
EASY PUNK PARK on Smoke!!
2021年12月12日(日)千葉・柏 PALOOZA
出演:TENDOUJI/KOTORI
2021年12月23日(木)奈良 NEVERLAND
出演:TENDOUJI/Age Factory
2022年1月22日(土)北海道・札幌 BESSIE HALL
出演:TENDOUJI/YOU SAID SOMETHING
2022年1月28日(金)愛知・名古屋 CLUB QUATTRO
出演:TENDOUJI/Hump Back
2022年1月30日(日)宮城・仙台 Rensa
出演:TENDOUJI/ドミコ
2022年2月18日(金)福岡 BEAT STATION
出演:TENDOUJI/No Buses
2022年2月20日(日)大阪・心斎橋 BIGCAT
出演:TENDOUJI ※ワンマン
2022年2月25日(金)東京・恵比寿 LIQUIDROOM
出演:TENDOUJI ※ワンマン
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