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西洋のポップカルチャーと東洋の神秘思想が並立する『Way Down East』

――そうしたアルバムの1曲目“Oblivion”はアシッドフォークの香りが漂う、ドラムレスの曲です。

Toneri「マジー・スターの曲のようなアシッドフォークっぽい音を入れたくて、そこに不協和音やストリングスも混ぜていきました。ドラムが入ってないのはHamadaが〈意地でも叩かない〉って言ったから(笑)」

Hamada「ToneriとMiriが二人で世界観を構築していく様子を見ていて、可能性を感じたんですよね。僕がいないことで広がる世界もあると思いますし、アルバムとしてのおもしろみについて考えたときに、そういう曲があってもいいなって」

Toneri「産声のような優しさがありつつ、どこか不安げな雰囲気のある、1曲目らしいサウンドにできたと思います」

『Way Down East』収録曲“Oblivion”
 

――続く“White Jazz”は既発のシングルですが、アルバムバージョンでは少し音の質感が変わっていますよね?

Toneri「幾何学模様やSatomimagaeの作品にも関わられているRollo(Hideki Urawa)さんにミックスをやり直してもらいました。最初はノーウェイブのバンドやテレヴィジョンのサウンドに似た、徐々に不穏な雰囲気を帯びていく曲だったんですけど、今回のミックスではサイケデリックの要素やクラウトロックっぽさ、リズミカルな部分などもすごく豊かに浮かび上がって、より音楽的になったと思います」

『Way Down East』収録曲“White Jazz”
 

Hamada「今回は全曲Rolloさんにミックスしてもらえてほんとうによかったです。バーベキューの串焼きみたいに、いろんな具材(曲)の味が壊れないように気を使いながら一本の串を通して〈アルバム〉にしてくれた。自分たちだけだと、たぶんここまでまとめきれなかったと思います」

――“Eyes in the Sky”はシンプルな構成でありながら、音楽的背景の豊かさやアンサンブルの妙で実に深みのある仕上がり。なかでも印象的なのは〈ジャーン〉というストローク一発で、ブラック・サバスばりのドゥームな闇の帝王感を漂わせるギターです。強烈なリフを持ったブルースロックを聴いたような充足感を与えてくれます。

Toneri「そのギター、実はいちばん褒めてほしいポイントだったので嬉しいです(笑)。3コードしか使っていないなかで、いかに呪術的なおどろおどろしさを出すかは意識しました。展開はシンプルなんですけど音数はけっこうあるので、それぞれの重ね方にはかなり注力しましたね」

『Way Down East』収録曲““Eyes in the Sky””
 

――今回は前半と後半に分けて、それぞれ西洋と東洋の世界観を描いたということですが、6曲目の“Morphine, and the Realm of Ouroboros”から後半が始まっているんですよね?

Toneri「そうですね。アナログ盤のA面とB面で分けたイメージです。A面には西洋のポップカルチャーからの影響を受けた曲を、B面には東洋の神秘的な思想から影響を受けたメディテーションサウンドを並べました。気分によって通して聴いてもおもしろいし、A面だけ、B面だけを聴くのもあり。そういう楽しみ方に幅のある作品にしたくて」