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曲を作って歌い続けている人たちは本当にもれなく全員すごい、私はしばらくはいい――それくらい納得のいくものができた

――それでは、1曲1曲の聴きどころやエピソードを教えてください。まずは1曲目の“40”です。

「この曲は40歳になった自分の意思表明をしている曲です。これにすべてが詰まっていると言っても過言ではありません。なので、すべての責任を取るべく、すべての楽器を私が演奏しています。ドラムは1テイク目に叩いたものが採用されています。出だしのピアノはメロディーに対して全部違うコードをはめていて、なんでこんなことにしてしまったんだろうとライブの練習をしているときに思いました。でもこれはやりたかったことでした。コーラスとコーラスアレンジは伊沢麻未。私だけの多重録音なのでむさくるしくなりそうだったところを、さわやかな風を入れてくれました。最高です」

――2曲目は、最初のお話にもあった“つぶあんこしあん”です。

「先ほども言いましたが、好みのまったく違う2人のお話。この曲は堂島孝平さんのサポートライブでなんか歌ってよって言われた時に、そんなこと言ってくださるのは堂島さんだけだと思い、感謝の気持ちを込めてその日のためだけに新曲を書いて行って歌ったのですが、それがこの曲です。本当の歌詞は登録商標の固有名詞がたくさん出てくるのですが、このアルバムに入れるにあたりブラッシュアップしました。より伝わるようになったと思います」

――3曲目はジャジーな“ビッグバンドの夢(without Big Band ver.)”。

「この曲も以前書いた曲を採用しました。学生時代から続けていた自分のビッグバンドのために書いた曲で、ドラムを叩きながら歌っていました。もともとは三谷幸喜さんが困惑しながらスポットライトを浴びて、ビッグバンドをバックに歌っているのをイメージして書きました。今回は製作費がアレなものでビッグバンド編成で録音することは叶いませんでしたが、いつかその時がきたら完全版をお聴かせしたいです。本当にかっこいいので」

――4曲目は個性的なタイトルの“煮物”です。

「“煮物”って曲が入っていたらおもしろいんじゃないかとタイトルから先に決めて書いた曲です。〈とりあえず座ってくれ〉という出だしからげらげら笑いながら作った覚えがあります。だけどなんとなく思っていても言えないことを歌詞にできたんじゃないかなと思います。とても気に入っています。この2人の関係性も好きです。そしてドラムの音が最高にいいです。エンジニアは最近ずっといろんな挑戦を一緒にしている大野順平(STUDIO SOUND DALI)さんで、今回のアルバムは音作りもかなりこだわっています」

――5曲目はかわいらしいピアノのインスト曲“暖簾越しのブルース”。

「毎回ピアノインスト曲は入れるようにしているのですが、録音のおかげでひと味変わった趣になっていて次の曲への流れがいいんですよ」

――6曲目は先ほどもお話にあった〈駐車場探し〉というテーマとお洒落な楽曲のギャップが面白い“漂流”です。

「自分のことをさらけ出すアルバムにしようということで、いつも駐車場探しにかなりのストレスを感じている私を見た伊沢から、そういう曲を作ればいいじゃないと言われて作った曲です。“40”も自分のことですがこの曲もまるまる自分です。この自分のストレスを昇華してあげようと、超名曲に仕上げてみました。メロディーにもこだわりまくり、これもげらげら笑いながら作りました。もしも次のアルバムを作る気になったら“漂流2”から作っていこうと思います」

――7曲目はクラビネットとスラップベースの演奏がファンキーな“止まらない食欲”です。

「食欲。食べること以外で満たされることはない。この曲は当初他のテーマで書いていたのですが、途中で書き直したりして最後まで歌詞に悩みました。とにかく腹が減ります。録音の時、ベースの千ヶ崎学さんが急に〈チョッパーしていい?〉と言ってきて、私もいやですとは言えませんのでどうぞ、といってこういう感じになりました。デモはもっと朴訥としたラインだったのですが、結果的により食欲という欲望を表しているかのようなアグレッシブさになっています」

――8曲目は、またしてもタイトルが個性的な“全然こない”。

「なんか全然こないなってこと結構あるんです。その時に口ずさんでくれたらいいですね。間奏もお気に入りです。みんなで歌えるようになったら、コールアンドレスポンスをして全員で叫びたいです」

――9曲目はハートウォーミングな楽曲“毛布”です。

「この曲はじっくり聴いて、それぞれみなさんが考えていただければうれしいです」

――そしてラストのインスト曲、“豆大福のテーマ”もおもしろいタイトルです。

「最後に少しでも希望の光を当てたいという思いでこの曲をエピローグとしました。あんこが苦手な方でも楽しんでもらえると思います」

――さて、sugarbeansさんと言えば、大森靖子さんやZOC、KinKi KidsやV6などへの楽曲提供、演奏参加でも知られていますが、他のアーティストの作品作りに関わることと、自分の作品を作ることはどう違いますか? どんなことに気を付けていますか?

「特にアレンジは、楽曲があって、それを歌う人がいて、どういう風にすればその曲がより輝くかを考えているので、自分の曲をアレンジするのと根本的には変わらないかもしれませんが、自分の曲をアレンジする方が誰にも遠慮なくやりたいことが全部できます。

今回アルバムを作ってみて改めて思いましたが、曲を作って歌っている人たちは本当にもれなく全員すごいです。これをやり続けることもすごいです。私はしばらくはいいです。それくらい納得のいくものができたということでしょうが」

――今後はどのような活動をしていきたいとお考えですか?

「音楽に真摯に向き合いながら楽しんで作っていけたらいいなと思います」