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何度でも蘇るロックンロール

ザ・クロマニヨンズ 『SIX KICKS ROCK&ROLL』 ARIOLA JAPAN(2022)

 今回の『SIX KICKS ROCK&ROLL』は、6か月連続シングルのA面B面の2曲×6=12曲をそのまま収録した作品(初回盤には別ヴァージョン2曲入りのボーナス・ディスク付き)。内容はいつもの通り、甲本ヒロト(ヴォーカル)と真島昌利(ギター)それぞれの書いた楽曲が半分ずつで、お馴染みの気合一発モノラル録音だ。冒頭を飾るマーシー曲“ドライブ GO!”は典型的なスリーコードの50s風ロックンロールで、ドカドカうるさいタイコと鋭いギター・リフに乗っかって、騒々しいパーティーの始まりを陽気に告げる。アウトロを飾るヒロトのハーモニカがいきなりかっこいい。ダダダダダ!と鳴り響くマシンガン・ドラムから始まるヒロト曲“光の魔人”は、切ないメロディーを湛えたパワー・ポップ風の胸キュンソング。〈これが恋か〉と繰り返す青臭い歌詞は、ヒロトの中にある永遠の少年性の象徴だろう。

 続いてもヒロト曲となる“千円ボウズ”は、ラモーンズ風のパンキッシュなロックンロールにナンセンスな言葉遊びを組み合わせた、いかにもヒロトらしい楽しい曲。続く“大空がある”はマーシー曲で、得意のボ・ディドリー・ビートに乗せて前のめりに突っ走るパートと、タメを効かせた8ビートのパートが交互に表れる。〈大丈夫だ、すべてうまくいく〉と繰り返すだけの歌詞は、いかにもマーシーらしいシンプルさとメッセージ性を備え、〈空はでっかいなあ〉と独り言つ、間奏でのヒロトの語りもなかなかに滋味深い。そうかと思うとヒロト曲“もぐらとボンゴ”は、ボンゴボンゴと繰り返すC調コーラスと、なぜかもぐらと一緒にバスに乗ってみたりする、シュールな童話のような歌詞がひたすら楽しい。マーシー曲“ここにある”は、初期ザ・フー的な鋭いギターとドラムの絡みが最高にかっこよく、ギラついたグラム・ロック風の味付けも効いている。一つ一つの要素は過去にもあったが、ちょっとした組み合わせの妙で何度でも新鮮に蘇る。それがザ・クロマニヨンズのロックンロールだ。