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『Protocol V』に参加した驚くべきプレイヤーたち

――今回はドラム、ベース、ギター、キーボード、サックスという編成ですね。

「僕はホーン奏者がいた『Force Majeure』の時のサウンドが大好きなんだ。『Symbiosis』や『Another Lifetime』(97年)もそう。だから、管楽器をもう一度導入したいと思っていた時にジェイコブ・セスニーに出会ったんだ。彼を見つけた時は、エネルギッシュに吹く驚くべきプレイヤーだと思ったよ」

――キーボード奏者のオトマロ・ルイーズは日本のドラマーである神保彰のアルバムに長年参加していて日本のファンにも馴染みがあるのですが、彼が参加した経緯をお聞かせください。

「僕はアルバムのレコーディングと同じメンバーでツアーするのが好きなんだ。でも、キーボードの前任者だったデニス・ハムは、同時にサンダーキャットのメンバーでもあって、そちらが突然有名になって忙しくなってしまったので僕のバンドから離れなくてはならなくなった。その時に彼が推薦してくれたのがオトマロだった。

そんな経緯でオトマロはプロトコルに加入してツアーに出たんだけど、彼は本当に素晴らしかったよ。演奏だけじゃなくて人柄もね」

――ベースのアーネスト・ティブスについても、日本のリスナーに紹介していただけませんか。

「どんなタイプの音楽にも〈正しいグルーヴ〉があり、アーネストの弾くベースは重要なバンドのサウンドなんだ。

僕がやっているようなインスト音楽を聴くと、誰もが〈ああ、この音楽はジャズだね〉って感じると思う。でもプロトコルの音楽にはすごくメロディックなところもある。それは僕がロックンロールやポップスの観点で曲を書いているからなんだ。だから、どこで演奏するべきか、逆に演奏しないべきかを熟知したうえでグルーヴを生み出すベーシストが僕には必要なんだ。

ありがたいことに、僕はアーネストと出会えた。それこそが、彼に常にプロトコルで演奏してもらっている理由なんだ」

――同じように、サックスのジェイコブとギターのアレックスについても紹介していただけますか。

「アレックスとジェイコブは、比較的最近加わったメンバーだね。

ギターとホーンのためにメロディーを書く時は、お互いのこととフレーズがどう動くのかを理解することがすごく重要なんだ。ギターとホーンは一つのサウンドとして響くし、一緒になったミクスチャーが大事だからね。お互いに同じ気持ちを持っていなきゃならないんだ。その点、彼らは既にたくさんの演奏を共にしてきているし、お互いをよく知っている。だから2人は共にメロディーを紡いでいるし、完璧にシンクロしている。それがすごく重要なんだ。

もちろん彼らは個人としても驚くべきミュージシャンだし、素晴らしいソリストで、ステージでも良いバイブを生み出してくれる」

『Protocol V』収録曲“The Long Road Home”

 

スタジオでの生演奏だからこそ起こる〈ハッピーアクシデント〉

――本作はコロナの最中に作られたと思うのですが、その影響はありましたか? また、レコーディングにはどれくらいの時間をかけたのでしょうか?

「実際は7日間だね。4日間作業をして、1週間くらいちょっと休暇を挟んで、次の週に3日間レコーディングしたんだ。

レコーディング中はパンデミックだったけど、ラッキーなことに僕たちは(カリフォルニアの)オーハイにいて法律も違ったから、ちょっとリラックスしてやれたんだ。2021年にはアメリカではいろいろなことが、よりオープンになっていった。要は幾つかの州ではマスクをつける必要がなくなったんだ。カリフォルニア全体では、ずっとそういう2020年以前のムードを強く感じていた。

僕がこのアルバムの曲を書いていた当時はいろいろな場所が閉鎖されていて、より注意深く過ごす必要があった。その時はすごく感染しやすい状況だったからね。でも去年、僕たちがレコーディングした時は、コロナの影響はそれほど大きくはなかった。ほとんどなかったと言ってもいいかな」

――曲作りはどのように進められたのでしょうか?

「まず家でデモ音源を作り始めて、次にスタジオに持ち込んでフルで作曲モードに入るんだ。全曲の完璧なデモを作って、アレンジにも満足したらそれをメンバーみんなに送る。また、僕とアレックスとでやりとりしていて、彼が僕にファイルを送ってくれる。メインのセッションが始まってからは、それをリアレンジしていった」

――リズムやアレンジの面で何か挑戦したことや、具体的なコンセプトはありましたか?

「いや、ないね。どの曲も独立していて、それぞれのセクションがうまく作用するように作業をしていったんだ。スタジオに入って〈このセクションはうまく働いていない〉と感じたら別の提案をしてみたり、誰かが違う演奏を始めたりする。それって、すごくクールだよね。それがスタジオで生演奏することの利点。

2曲目の“Isosceles”のイントロは、デモの段階ではアルバムバージョンとは違っていたんだ。完全に即興演奏のジャムを始めて〈これはクールだね、こういう感じでやろう〉と決めた。それが実際にスタジオで起こったことで、またそれこそがスタジオで起こるべきことだよね。それは僕がハッピーアクシデントと呼んでいるもので、これこそが音楽を作るんだよ。スタジオで全員同時に演奏するライブレコーディングのいいところだよね。素晴らしいよ。違う扉を開いてくれるからね」

『Protocol V』収録曲“Isosceles”