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自分にとっての〈文学少女〉像

 前作で“この町の丘から”を手掛けた、あさのますみ作詞・大川茂伸作曲のタッグは、今作では美しいバラード曲“スタートライン”を手掛けている。あさのとのやりとりを振り返り、堀江は自身の〈文学少女〉像をより深く、こう語る。

 「前作を作っていたとき、あさのさんに〈文学少女ということは、主人公は本を読むのが好きなの?〉と訊かれたんですけど、私の中ではそういうことではなくて。学生時代って、自分の頭の中にあるものを言葉にしたり、それを外に向けて発信するのがそこまで上手くできないんですけど、でも、言いたいことはたくさんあって、小説や詩を実際に書くわけじゃなくても、自分の中でどんどん世界が出来上がっている……そういう子っていると思うんですよ。それが、私にとっての〈文学少女〉なんです。なので、必ずしも文学好きじゃなくてもいい。自分の中で思っていることや言いたいこと、物語が膨らんでいく女の子。例えばヨシダさんが作ってくださった“25:00”の激しさも、大人だったら冷静に受け止められるような些細な出来事が、自分にとっては一大事になっていく……そんな、学生時代ならではの激しさだと思うんです」。

 堀江自身が作詞を手掛けた“Wake Up”も、ある種の〈激しさ〉が表現された楽曲と言えるが、この曲の〈激しさ〉はちょっと独特だ。なにせ歌われるのは、〈ねえ聞いて!/驚いて欲しいから 言っちゃうんだけど/めいっぱいダラけたいんだ♡〉――そんな、世界にそっぽを向いてベッドの中の世界に潜り込んでいく、わがままで魅力的な少女の姿。

 「女子高生ってキャピキャピした姿が描かれることも多いけど、リアルにはダルそうに見えることもありますよね(笑)。今日はやる気ないけど、明日はがんばろうと思ってる、そんな日の女の子を表現したかったんです。女優さんがインタヴューで〈朝はジムに行って、美容にいいものを食べて……〉って、完璧な受け答えをされているのを見たりしますが(笑)、そうじゃない人だっていっぱいいるわけで、一日中ダラダラしちゃう日だってありますよね」。

 4月からはツアー〈堀江由衣ライブツアー 2022 文学少女倶楽部Ⅱ~放課後リピート~〉も開催される。約2年半ぶりとなるツアーだが、久しぶりにバンド編成で回った前回のツアーに堀江も大きな手応えを感じたようで、そのスタイルが踏襲されたライヴになるという。

 「それまではお客さんに感情移入してもらえるよう、ライヴを通してストーリーをしっかりと作り込んで、MCもアンコール前くらいしか入れなかったんです。でも前回はバンドさんに演奏してもらって、MCも多めに入れて、ある意味ベタなライヴをやったんですが、それがすっごく楽しくて。より、お客さんとライヴを一緒に作っている感じがしました。MCもしっかり時間をとってやったんですけど、めちゃくちゃ楽しかったです。例えば、銀行の名前でコール&レスポンスしたんですよ。〈○○銀行の人~?〉って呼びかけると、その銀行にお金を預けている人たちが〈イエーイ!〉って返してくれる(笑)。お客さんのメインバンクがわかるコール&レスポンス(笑)、楽しかったです」。

堀江由衣の近作を紹介。
左から、2012年作『秘密』、2015年作『ワールドエンドの庭』(共にスターチャイルド)、2019年作『文学少女の歌集』(キング・アミューズメント・クリエイティブ)