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細野晴臣からの助言

──アルバムには本当に様々な世代の方が参加されてて、最年長は70代の細野晴臣さんです。Reiさんとはどんな繋がりがあるのでしょう?

「最初にお会いしたのは細野さんのラジオ番組『Daisy Holiday!』でしたが、そこで50周年記念のライブに誘っていただいて、ゲストとして出演させていただきました。

はっぴいえんどやYMO、ご自身のソロ活動を含めて、大好きな細野さんの音楽を聴いて育ってきたので、そうやって運命の巡り合わせで接点を持って一緒に過ごさせていただいた時間を形にしたいと思って、曲を書いてお送りしました。

細野さんとラジオでお話しした際に、〈私はいろんな音楽が好きなのでいろんな音楽をやりたいんです。でも周りから見たら統一感がないように見られるのではないか、っていう危惧があって不安です〉というようなことをお話したら、〈僕はいろんなことをたくさんやってきた。でも楽しいからやっているんだ〉とおっしゃっていて。実際、細野さんはテクノもロックもアンビエントも劇伴も作っていらっしゃって、トロピカル三部作やブラジル音楽から影響を受けた作品も発表されてきた。多岐に渡る作品性にもかかわらず、何をやっても紛うことなき〈細野晴臣〉を実践されてきたハリーさんにそう言っていただき少しだけ安心しました。そして何より〈楽しい〉という気持ちを持って音楽をやることが大事なんじゃないかと思いました」

『QUILT』収録曲“ぎゅ with 細野晴臣”

──そういう話が聞けると、活動の方針が大きく変わりますよね。

「本当にそうだと思います。音楽を生業にしていると好きなことだけをやってはいられないという側面ももちろんあります。なので、オーディエンスが求めているものを作ることと、自分がやりたいことを押し出すバランスのせめぎ合いだと思うんです。

ただ一つわかっていることは、私も好きなアーティストが楽しんでいる様子を見るのが好き。だからアーティスト本人が喜びを感じながら音楽を作ることは、ビジネスとしての音楽を考えた上でも必要不可欠なことなのかなと今回のアルバムを作って思いました」

──細野さんとの“ぎゅ”はとても包容力がある曲で、細野さんの存在の大きさを感じます。

「細野さんオマージュの仕掛けを色々施しました。あと、『QUILT』というアルバムは〈共生〉をテーマにしていて、人と共に生きて行くことの尊さや愛しさを表現したいと思ったので、出会って楽しいだけではなく、曲の最後にお別れが待っているという構成にしました」

 

大人の色香を漂わせた名手コリー・ウォンのギター

――コリー・ウォンとのコラボはご時世的にリモートで行われたとか。やはり憧れの存在ですか?

「みんなもそうだと思いますが、ヴァルフペックが誕生してから夢中になって聴いていました。その一員のコリーが参加してくれたのは夢のようです。

コラボしてみて、ギターを意外と弾きまくらないというところに大人の色香を感じました。カッティングの名手なので、クリーントーンでコンプレッサーをかけた音がシグネチャーのトーンだと思うのですが、それもすごく炸裂していましたし、余計なものを弾かないんですね。Aメロの部分でベースとドラムだけが存在しているアレンジもたくさんあったので、ギタリストとしての腕もすごいけど、ギターの使い方が傲慢ではなくちゃんと客観視できているんだなと感じました」

『QUILT』収録曲“BPM with Cory Wong”“TAKE A BREAK with Cory Wong”

――コリーとのコラボによって、ご自身のプレイに何か変化はありましたか?

「今回のコラボレーションすべてに言えることですが、私が大ファンでもあるアーティストのことをさらに研究しようという大義名分があったので(笑)、コリーの曲のレコーディングに向けて彼の作品をくまなく聴き、カッティングのレベル上げをしようとパンプアップしました」