緻密さと遊び心で構築された宗教的な物語

原点回帰というより、立ち位置を再確認してより懐深く、鋭く切り込んだエッジの鋭さと磊落さとを包括したダイナミズム。ギターは魂を解放し、オルガンは空間を吹き抜ける。おかしな意味ではなく、クリスピアンの言葉にあるように、とてもスピリチュアルな境地に誘われる感覚。それって優れた音楽家が言うような〈インナーワールドへの探訪〉なのかもしれない。即物的な現世感とは究極真逆にある宇宙の扉を開けた先の世界。

そういう世界観をこの21曲という長大なコンセプチュアルアルバムは緻密さと遊び心を持って描き出そうとしている。タイトルの〈Congregational Church〉とは実在のキリスト教宗派でピルグリムによるアメリカ新世界で広まったとか。宗教性は今まで以上にアルバムを覆っているが、それは彼ら、というか、クリスピアンの常套手段であり神と悪魔の戦い、善と悪の攻防とか、つまり人間界の日常をそうした視点で見つめて物語を構築しているのだ。

イントルーダーとして随所に配置される〈牧師の言葉〉とか〈集会への警句〉とかいったコントみたいなコーナートークも細かい役割を果たしている。教会の映画館で「パニッシャー」が上映中なんてね。

 

に最大のポイントは〈ロックサウンド〉そのもの

最後に本作に最大のポイントは? それは全編で繰り広げられるギターを中心にした〈ロックサウンド〉そのものだ。過去の偉大なロックの幻影が盛り沢山。ボーカルの端々にインタープレイのそこそこに、今は滅多に聴かれなくなった歴史に残るロックの残照ともいうべきイメージが顔を覗かせる。それも彼らの想いだけでなく、具現化できるメンバー個々の演奏技術が確実に高まっていることの証でもある。クリスピアンの自由奔放な空かけるギターは言うまでもなく、その歌声にも惹きつけられる。自分の経験上、これまでそういう感覚はなかったのに今作では、だ。

先のことはわからないし考えたくもない。このアルバムが生まれたことただ感謝し、喜びたい。サイコーだぜ! まったく。

 


RELEASE INFORMATION

KULA SHAKER 『1st Congregational Church Of Eternal Love And Free Hugs』 Strangefolk/ソニー(2022)

リリース日:2022年6月15日
品番:SICX-30142
価格:2,750円(税込)
国内盤特典:日本盤のみのボーナストラック収録/クリスピアン(ボーカル/ギター)による各曲解説付/高品質Blu-specCD2仕様
歌詞・対訳・解説付き

配信リンク:https://sonymusicjapan.lnk.to/CCELFH

TRACKLIST
1. Intro (“Dearly Beloved”)
2. Whatever It Is (I’m Against It)
3. Hometown
4. Burning Down
5. Love in Separation
6. Segue (“Let Us Pray”)
7. Gingerbread Man
8. Farewell Beautiful Dreamer
9. Where Have All The Brave Knights Gone?
10. Segue (“Raining Buckets”)
11. 108 Ways To Leave Your Narcissist
12. After The Fall (Part 1)
13. Don’t Forsake Me
14. 303 Revisited
15. The Once & Future King
16. Shattered Bones
17. After The Fall (Parts 2 & 3)
18. Closing Words (“Windows Of Our Hearts”)
19. Bumblebee
20. Coda (“Cinema Club”)
21. Maha Mantra*
*日本盤ボーナス・トラック

 

LIVE INFORMATION
SUMMER SONIC 2022

2022年8月20日(土)、8月21日(日)
※クーラ・シェイカーは8月20日の大阪公演、8月21日の東京公演に出演
http://www.summersonic.com/

 


PROFILE: KULA SHAKER
クーラ・シェイカーはクリスピアン・ミルズ(ボーカル/ギター)、アロンザ・ベヴァン(ベース)、ポール・ウィンターハート(ドラムス)、ハリー・ブロードベント(オルガン/キーボード)の4人から成るイギリス出身のロックバンド。バンド名は9世紀インド皇帝の名前から。96年、デビュー作『K』がUKチャート1位に輝き、当時オアシス以来のデビューアルバムの最速売上を記録、イギリスでプラチナ(30万枚)、日本でもプラチナ(25万枚)のセールスに。同年、初来日を果たす。99年、セカンドアルバム『Peasants, Pigs & Astronauts』をリリース直後に一旦解散するも2006年に再結成。同年夏の〈FUJI ROCK FESTIVAL〉来日時は入場規制がかかるほど熱狂的に迎えられた。2007年、8年振りとなるサードアルバム『Strangefolk』をリリース。夏には再び〈FUJI ROCK FESTIVAL〉(メインステージ)の出演も果たす。2008年、単独ジャパンツアーを行い、全公演ソールドアウトと日本での根強い人気を証明した。2010年、4作目のアルバム『Pilgrims Progress』をリリース。〈FUJI ROCK FESTIVAL〉(メインステージ)にも出演した。2016年、衝撃のデビュー作から20年、結成から10年を迎えるという記念すべき年に5作目のアルバム『K 2.0』をリリース。2022年、6作目のアルバム『1st Congregational Church Of Eternal Love And Free Hugs』をリリース。