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森七菜“スマイル”​のプロデュースで得たイイ感触

──コロナ以降のホフディランについて、雄飛さんはどう感じてます?

小宮山雄飛「“デジャデジャブーブー”のあとに、森七菜ちゃんがカバーした“スマイル”があって、あれもまた全部僕らで作ってたんですね。カバーしてもらったというより、トラックも僕らが改めて作って。

そこですごくイイものができたので、そこらへんで作詞とか作曲とかっていうより〈楽曲を形にする〉っていうもののすごくよいフォーマットができたんです。

森七菜の2022年作『アルバム』収録曲“スマイル”。原曲はホフディランの96年のデビューシングル。2020年に大塚製薬〈オロナミンC〉のCM曲として使用され、その後ホフディランがプロデュースして配信リリースされた

七菜ちゃんのカバーは、CMで使われているバージョンはただカバーしてるものなんですけど、リリースされたものには、〈WINTER MIX〉っていうもうひとつのパターンがあって、それも全部ウチらで作っています。

コロナ禍でライブとかができなかった時期に、作品がよい形で出せたっていうのは、そのあとのモチベーションにも繋がっていきましたね。

森七菜の2021年のシングル“スマイル -WINTER MIX-”。サウンドプロデュースは小宮山雄飛

NHKの『シャキーン!』という番組で作った“キミが生まれたから”も、ポップソングを〈おうち〉で作るみたいなところで、コロナ禍をある意味、クォリティーの高い楽曲を作り込む期間にちょうど当てられたのがよかったと思います」

2022年作『NHKシャキーン!「目覚めろ」』収録曲“キミが生まれたから”

ワタナベ「ホントにずっとそれ。コロナ中にそれを発揮するチャンスをいっぱいもらったっていうかね」

小宮山「コロナ禍で、ワタナベくんと僕が離れてたのが逆に功を奏したという。レコーディングなんかでも、以前だったら何度も、いわゆるリアルなリハーサルをやってたんですけど、やっぱりよくも悪くもリアルな場って少なくなっていて、そのぶん1、2回のセッションとかでできるだけイイものを作ろうっていうようなことになっていきますよね。

ダラダラ練習するみたいなのがなくなってましたから、それはそれで寂しい部分もあるんですけど、より一人ひとりがしっかりプレイする……って言うとヘンですけど、曲のことを理解してるってちゃんと言えるような雰囲気になってましたね」

──コロナ禍で右往左往してる人たちも多いなかで、ホフディランに関しては心配に及ばないとでもいうか。

小宮山「でも、よい意味で〈諦め〉みたいなのも入ってるんですかね。もう少し若くて、それこそライブバンドだったら、たぶん焦っていろんなことをやってたと思うんですけど、なんとなくもう、べつにできなきゃできないでイイじゃん!っていうような、よくも悪くも諦めみたいのがあって、本当にちゃんと好きなことだけをやれるような状況になったのかなという」

 

これが最後のCDアルバムになるかも

──そういう流れを伺うと、ご自身たち的にも次の作品、言うなればアルバムへの期待が膨らんできますよね。

小宮山「そうですね。コンセプトを決めて〈こういうのを〉っていうよりも、それこそこの2年ぐらいでやってきたことをここで全部集める、集大成みたいな感じで作ろうってなりましたね。

それに、前のアルバムもそうですけど、今後CDでアルバムを出せないんじゃないか、やっぱりCDになるのはこれが最後じゃないかって常に思いながらやっていたんですけど、今回はとくに明確に、やっぱりこれが最後のCDアルバムになるかもな、っていうつもりで作ってはいましたね」

──というところでアルバムタイトルが『Island CD』。あえて〈CD〉という言葉を入れてます。

ワタナベ「まあ、せっかくの機会ですから。

セカンドアルバムで『Washington,C.D.』(97年)ってのをリリースしてまして、それにも引っかかってるとは思うんですけど、なんて言うんですかね、〈CD〉って響きも今となってはわりと愛らしい、愛おしいというかね。

ちゃんとディスクをもって発表しないと〈なんとかCD〉なんて偉そうに言えないんで、名乗れる最後のチャンスだ、ってぐらいの感じで。まあ、もう1枚ぐらい出せるように頑張りますけど(笑)」

──『Washington,C.D.』のときは若干ダジャレ感覚みたいなのがありましたが、今回は言葉に込めてる意味合いがちょっと違いますよね。

ワタナベ「特別、CD愛好家集団だったわけではないですし、かといってアナログにこだわってアナログばっかり買って聴いてるっていう、2人ともそういうタイプでもなく、ただ曲が聴ければいいってタイプだったもんで、結果、CDの申し子たちというか、CDを頼りにしてきた2人なんじゃないかなとは思います。

僕らがデビューした時の媒体も、真剣勝負の場もCDだったもんで、例えば、アルバムの売上枚数がある程度いくと、ボーナスみたいな感じでアナログを作らせてもらっていたんですけど、そこを真剣勝負の場と捉えてなかったですからね。せっかくアナログを出させてもらえてるのに、よりイイ音でカッティングしようみたいな気もなくて、ちょっとしたクリスマスレコード扱いみたいな感じでやっていたぐらい。

主戦場がCDでしたから、今回またCDを出さないかって声をかけてもらったというのはもう本当にラッキーですし、幸せなことです」

──自分たちが慣れ親しんできたものプラス、主戦場としてきたメディアっていうところでの〈CD〉。では、〈Island〉という言葉はどこから下りてきたんでしょう。これは曲が出揃ってからですかね?

小宮山「そうですね、本当に最後ですね、考えついたのは。〈無人島に1枚だけ持っていくとしたら〉みたいなよくある質問にもかけているし、あとはその、改めてみんなにホフディランを聴いてほしいというのがあって。

ジャケがちょっとトロピカルな感じなのもそうなんですけど、要はファン以外の人が〈なんだろこのCDは?〉っていうふうに手に取ってもらえるものにしたいという思いもあったんです。なので、アルバム自体のコンセプトとか何か我々の主義主張というよりも、〈何だろうこれ?〉っていうふうに思ってもらえれば」

『Island CD』ジャケット