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『HEAT』の制作背景

――なるほど。制作方法は今回もCHIPPIさんがDTMで作ったデモを三人でブラッシュアップしたという形ですか?

CHIPPI「そうですね。曲によっては違いますが、基本的には今までと変わらないスタイルです」

――“Highlight”のみ作曲者に全員の名前がクレジットされていますよね。

CHIPPI「いつもまとまった作品を作る時に、一曲だけそういう曲を作る流れがあるんです。“Highlight”は今作におけるそういう立ち位置の曲で、Yoshinaoが〈こういう曲を作りたい〉と原案を出して、三人で練って作りました」

Yoshinao「ギターで〈こういうコードで作りたい〉とCHIPPIに伝えて、それを格好良くしてもらったのがスタートでしたね」

『HEAT』収録曲“Highlight”

――E.sceneの作品ではシンセやピアノの音が入っていますが、あれはDTMで入れているんですよね?

CHIPPI「そうですね。プラグインでやっています。ただ、打ち込みというよりはリアルタイムで弾いている感じを出したくて、極力直さないようにしています。今作はその意識が特に強かったですね」

――なるほど。今回は声ネタみたいなのが入っている曲あるじゃないですか。あれはサンプルパックか何かですか?

CHIPPI「デモを作る段階だと、サンプルパックから理想に近いものを選んで加工して使っています。レコーディングする時にまこっちゃん(真琴)にその雰囲気で録ってもらって、それをいじって作りました」

――ミックスはどなたがされているんですか?

Yoshinao「ミックスは前作と同じで、yasu2000さんにお願いしました。新潟と東京でやりとりして、一回だけ立ち会うこともできました。前作から一緒にやっていたので、どういう風に伝えたらいいかわかってきた感じがありましたね」

CHIPPI「前回よりもスムーズにできて、やりたいことも伝えられました」

 

感情や思いを生演奏感あふれる音に乗せて

――初期はエレクトロニックミュージックっぽい要素もありましたが、最近は生演奏を前面に出す感じですよね。そんな中でも、今作ではドロップみたいなベースソロの入り方とかをするじゃないですか。あれに初期からの名残のようなものを感じました。

CHIPPI「初期がエレクトロっぽかったのは、単純に同期っていうスタイルに対して自分たちの中に先入観があったんですよね。

元々のルーツは生演奏のソウルやファンクだったのですが、そこから単純にパソコンで作るという工程に慣れてきたのと、自分の中で(生演奏と同期の)バランスが見えてきたんです。今作では、そうやって積み上げてきたものを一番やりたいバランスでやれました。

今回は特に生演奏感を出したかったので、そういう風に言っていただけてよかったです」

――今回は生演奏感がキーですよね。あと、DTMの要素はあるんですけど、グリッド感みたいなものが曲によっては強くなかったりするのも面白いなと思いました。今回の作品を作るにあたって目指したものを教えてください。

CHIPPI「今作は、今までより気持ちがストレートに伝わるような作品を目指しました。〈外に向けて〉という意識もあって、〈こういう音を作りたい〉という思いより先に〈こういう歌詞を書きたい〉とか〈こういう思いを伝えたい〉っていうところに、これまで自分たちがやってきた音が乗っかる形で作りました。前作は〈こういう音を〉とか〈こういう音楽を〉みたいなことが先行して、そこに〈こういうものを伝えたい〉っていう思いが乗ってくるみたいなイメージだったんですけど。そこが今作での生演奏感とか熱量みたいなものに繋がっていると思います」

――E.sceneはそういった感情を大事にしていると思うのですが、真琴さんが今回のEPで感情を伝えるためにこういうアプローチをしたということがもしあればお伺いしたいです。

真琴「そうですね……全体的な像っていうよりも、言葉に感情を乗せている感じはあります。歌詞の言葉に対して出てくる自分の気持ちを模索しつつ歌っている気がしますね。今までもやっていたことなんですけど、それが繊細にできるようになったというか。レベルアップしたように思います。あと、最近は曲を作る時にみんなと気持ちを共有する瞬間が多くなったのが大きいかなと感じています」