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キャラと持ち味を先鋭化

――R&Bオードブルとして作られたデビュー作と比べると、最新EP『A Million More』は四つ打ちを織りまぜながらも、ダウンテンポやトリップホップといった内省的なビートに焦点が定まってきた印象です。

Matsukawa「そうですね。前作だと、たとえば“Six Feet Under”は曲としては好きなんですけど、ライブで見ているとreinaにすごくハマっているわけでもないなと思ったんですよ。つまり、オードブルとして綺麗な五角形を目指すのであれば、もうあの一作で終わりでいいかなと思った。それよりも、reinaのキャラクターを尖らせていく方が良くて、それがEPの方向性です。

あと、reinaはインプット量がすごい。フロントマンって自分の憧れているアーティストを中心に聴く人が多いけど、reinaの場合は、なんでそれ聴いてるの? どこでディグったの?みたいな音楽を聴いていることが多い。だからプロデューサーとしても、こういう方向性でいくからこのあたりを聴いといて、みたいな指示を出す必要がない。最初から持ってるものがたくさんあるから、じゃあそれを使おう、という」

――あぁ、それは理想の形ですね。今作のビートはUK色が強くなった印象ですが、それはプロデュースから01sailが抜けてMatsukawaさんだけになったのも大きいのでしょうか。

Matsukawa「大きいと思います。01sailが今回関わらなかったのは、修論で忙しくて(笑)。

そうなると、僕の本当に好きな作りたい音楽とreinaの好きな音楽がけっこうかぶってるから、自然と定まってくるんですよね。つまり、ジャジーなサンプリングのあるアメリカ東海岸の90年代ヒップホップと、UKの現行R&B」

 

〈実家の引き出し〉の中からラップスキル

――中でも、今回苦労した曲はありますか?

reina「“A Million More”は、すぐできたサビが2種類あったんですよ。でもリード曲なのにそんなすぐ完成させていいのかなと思って、たくさんリファレンスを用意したり言い回しをブラッシュアップしていったりと、リードに見合う労働をしてみたんです。3種類目を1か月くらいかけて作って、そうすると満足いくものになった。わざと時間をかけて作ったことで、やっぱり良くなるものなんだなと思いました」

――“Dogs”ではラップも披露されています。

Matsukawa「reinaはラップも元々できるんですよ。w.a.uのバンドセットのライブでは、以前(フライング・ロータスと)ケンドリック・ラマーの“Never Catch Me”をカバーしていたこともあるんです。だからラップのスキルについても、実家の引き出しから引っ張り出してきたみたいな」