Page 2 / 3 1ページ目から読む

 

 

【ロバート・グラスパー・トリオ】
日時/会場:
9月27日(日) Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN
9月28日(月)~29日(火) BLUE NOTE TOKYO(公演詳細はこちら

今年の5月後半~6月前半にも、エクスペリメントを引き連れて来日したばかりのグラスパーが早くも日本にカムバック。〈BNJF〉出演の翌日からはBLUE NOTE TOKYOで単独公演も控えている。今回大きなトピックとなるのが、ヴィセンテ・アーチャー(ベース)とダミオン・リード(ドラムス)によるピアノ・トリオ編成でのライヴであるという点。〈エクスペリメント以前〉の旧友でもあり、8年ぶりのトリオ作となったニュー・アルバム『Covered』を共に作った〈最新モード〉を担う仲間たちとのライヴが今回お披露目される。

「『Black Radio』によるブレイクもあって、グラスパーの来日といえばエクスペリメントという状況が何年も続いていたので、今回はまさしく待望のステージですよね。グラスパーには前々から〈ジャズをやってほしい〉という声も多かったそうだし、その形態で観れるのは大きいでしょう」

とはいえ、先に公開された最新ライヴ映像や『Covered』を聴いてもおわかりのとおり、グラスパー・トリオはいわゆるオーセンティックなジャズとは明らかに一線を画している。

「やはり聴きどころはリズムでしょうね。クリス・デイヴや後任のマーク・コレンバーグはヒップホップ的でマシーナリーなビートを叩いていたけど、ダミオン・リードにはもっとジャズ直系の凄みがある。彼はヒップホップ/R&B主体のセッションには参加していないけど、インプロヴィゼーション主体なスティーヴ・コールマン界隈のジャズ・コミュニティーで活躍している人で、複雑なリズム構造を伴うセッションを日夜行っている。そういうプレイヤーが特殊なポリリズムをもったビートを、ヒップホップの要素も交えつつ叩いてみせるという。そこが今回の肝ですね」

【参考動画】ロバート・グラスパー・トリオ“In Case You Forgot”のライヴ動画
ダミオン・リードのドラム・ソロも披露されている

 

さらに、グラスパーの演奏スタイルについても変化があるという。 

「グラスパー・トリオの初期の頃は、彼の演奏はハービー・ハンコックと比較されたり〈黒いブラッド・メルドー〉なんて呼ばれたりしていたんですよね。メルドーが得意とする、右手と左手で別々のフレーズを奏でるスタイルをグラスパーもすごく練習したというし。たとえばスタンダード曲を演奏する場合も、曲を分解して複雑なコードやハーモニーをつけて組みなおしたりするジャズ・マナーに則ったことを過去のグラスパーもやっていた。ただ、今回の『Covered』はそういう感じがまったくしないんですよ。グラスパー自身も従来のジャズ・マナーを断ち切ったうえで、誰にも似ていない、独自の演奏スタイルを築き上げようとする意識がピアノの演奏から強く伝わってきます」

【参考動画】ロバート・グラスパーの2015年作『Covered』収録曲“Stella By Starlight”
スタンダードを弾くグラスパーを捉えたライヴ・セッション動画

 

そういった変化の兆しは、前回の来日公演のときから見受けられたとか。

「前回の来日は『Covered』のレコーディング後だったのもあり、これまでのエクスペリメントにおけるライヴとは比べ物にならないくらい饒舌に弾いてたんですよ。奏でるフレーズも、ヒップホップ的なフィーリングのプレイとは全然異なっていて。よく言われるように、エクスペリメントでのグラスパーはプロデューサー感が強くて、〈敢えて弾かない〉時間もあった。今回はピアノ・トリオなので、たっぷり弾きまくるグラスパーの姿が観れると思います。『Covered』はスタジオ・ライヴ盤なので演奏自体はあの作品と近いものになると思いますが、実際のステージではインプロも交えて全然崩してくるだろうし、1曲1曲も長くなるはず。とにかくエクスペリメントとは違う形で、スリリングなライヴが展開されるでしょうね」

 

 

ちなみに、グラスパーの従兄弟であるアビアも9月20日(日)にBLUE NOTE TOKYOに登場する。グラスパーが全面参加した2013年作『Life As A Ballad』に続く新作『Bottles』(レビューはこちら)を今年発表したばかりの彼は、ジャジーでオーガニックな音楽性をもつシンガー・ソングライター。洗練されたアダルティーなソウル・ミュージックは、やはりライヴで体感しておきたい(公演詳細はこちら)。