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 スタックス倒産後は、ABC傘下に設立した自身のホット・バタード・ソウルやポリドールに籍を置き、マスカレイダーズなどを手掛け、ディオンヌ・ワーウィックやミリー・ジャクソンとの共演盤も発表しながらディスコ・ムーヴメントに乗っていったヘイズ。ヴォーカルを最重視しないディスコ・ムーヴメントは彼にとって好都合だったはずで、同時にメロウ・ソウルのマエストロとしてもスロウ・ジャムの好曲を生んでいくことになる。

アイザック・ヘイズ&ミリー・ジャクソンの90年作『Royal Rappin's』収録曲“You Never Crossed My Mind”

 晩年は、TVアニメ「サウスパーク」でシェフ役の声優に抜擢されたり(後に番組中でヘイズの信仰する宗教が愚弄されたとして降板)、メンフィスを舞台にした映画「ハッスル&フロウ」(2005年)に出演するなど音楽以外の活動も目立ったが、再興したスタックスからは新作も出す予定だっただけに、その死が悔やまれてならない。遺作(出演)となったのは、奇しくもヘイズの前日に亡くなったバーニー・マックが主役を務めた映画「ソウルメン」。本当に最後までソウルな男だったのだ。そして、その数年前、スライ&ザ・ファミリー・ストーンのトリビュート盤に参加したヘイズが“Sing A Simple Song”で(チャックDと共に)相見えたのはディアンジェロだった。黒いモーゼと、後に黒い救世主を名乗る男の邂逅。ヘイズの死から7年……そんな関係に思いを馳せてみるのも悪くない。