『THE LINE』という極太な線を形成するに至った、さまざまな音楽の点

【JUMP AROUND ∞】
本文中にもあるようにこのヒット・シングルは、ハウス・オブ・ペインが92年に全米3位まで押し上げたクラシック“Jump Around”のカヴァー。ヴァニラ・アイスエミネムが取り上げたこともあり、メンバーのDJリーサルが加入したリンプ・ビズキットもライヴでカヴァーしていたロッキッシュなヒップホップ・アンセムだ。

 なお、そのMV撮影のためにDOBERMAN INFINITY一行が訪れたLAでは、“Trap Queen”や“My Way”などフェティ・ワップのヒット・チューンがラジオでかかりまくっていたそうだが、やはり「ヒップホップ的ないいエキスを貰いました(笑)」(P-CHO)というのは、NWAのストーリーを描いた映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」と、それに絡めて登場したドクター・ドレーのアルバム『Compton: A Soundtrack』。「映画も公開中だったのでいろいろと思い出深いし、やっぱ音がめっちゃ良かったですね」(SWAY)という同作からの流れもあってか、最近みんなで聴いているのはゲームのニュー・アルバム『The Documentary 2』だそう。他にも取材の数日前に配信されたパフ・ダディのミックステープ『MMM(Money Making Mitch)』も話題に上るなど、メンバーそれぞれが日常的にさまざまな音楽を楽しんで掘り下げているのは言うまでもない。

 

【R&B】
その流れでいうとヴォーカリストのKAZUKIは、近年のアーティストではオーガスト・アルシナなどがお気に入りとのことだが、90年代の作品まで遡って自分なりのスタンダードな楽曲を楽しんでいるとのこと。例えば絶品のスロウ“LOVE U DOWN”からそういったニュアンスを嗅ぎ取ることもできるかもしれない。「自分のプレイリストがあるんですけど、もう8割は90年代の曲です、ジニュワインとか。あとキーシャ・コールとかミュージック・ソウルチャイルドとか……もう言いはじめたらキリがないぐらい。歌、めっちゃ上手いなっていうのに感動するんで、例えばミュージック・ソウルチャイルドはリズムで軽くこなしてる感じだけど、それはそれで自分にはめちゃくちゃいい刺激にもなってるし、でも、ジョーみたいな、ああいう〈ザ・歌モノ〉で歌う感じも好きなんですよね。だから全部好きです(笑)」(KAZUKI)。

 

【参加トラックメイカー/ソングライター】
本文でピックアップされているbanvoxEXILE SHOKICHIの他にも、多彩な顔ぶれのクリエイター陣が点と点を線に繋いでいる。例えば“XROSS THE LINE”に関与したUKのブルース・フィールダーシガラ名義のハウス・チューン“Easy Love”が全英1位を記録し、エラ・エアのデビュー作にも参加していた旬の才人だったりするし、音ゲーで名を上げて三代目J Soul Brothersの“R.Y.U.S.E.I.”で脚光を浴びたMaozonや、VERBAL関連作品を通じてお馴染みのLucas Valentine、さらにSWAYをJOLLY-TIP名義での自作に招いていた縁もあるDJ KEIZIに至るまで、EDMやアーバン、J-Popといった無粋な分類ももはや無効なほど(banvoxにしてもSALUMINMIとの仕事が記憶に新しい)グローバルなポップ~ダンス・トラックを作り上げてきた面々がズラリと並んでいるのだ。ソングライターとしては、これまた最新作にSWAYをフィーチャーしていたマット・キャブ、同じくシンガーとしても活動しているSHIKATAの参加が目を惹く。

 また、そこにDOBERMAN INCの大阪時代からの間柄で『ZERO』(2009年)をバックアップしていたRYUJA2WINAK-69CREAMMACO他)とNAOtheLAIZAサイプレス上野とロベルト吉野TOCEMI MARIA他)が名を連ねているのも注目だろう。つまり、すべての点が繋がって『THE LINE』を生み出したのだ。