近年のクラブ・シーンに浸透するアフリカ音楽のグルーヴ

 ディープなマニア向けの音楽やローカルな音楽へのアクセスを容易にしたネット環境を背景に、アフリカ音楽には2000年代以降も熱い視線が注がれている。一口にアフリカと言っても、イスラム圏か否かで音楽性は変わってくるが、ここで言うのはサハラ以南のブラックアフリカのこと。各地でベース・ミュージックのローカライズが起こってさまざまなリスナーへの認知が広がるなか、昨年に12インチEPシリーズ〈Cargaa〉でワープが触手を伸ばすなど、現行の動きとしてはアンゴラ由来のクドゥルを出発としたリスボン(とポルトガル語圏)のシーンが、いま一番フレッシュなグルーヴを奏でている。アンゴラ系ポルトガル人のDJムプーラによるバティーダの最新作『Dois』もそのひとつだ。他にもアフロをキーワードとした欧米のクラブ・シーンにおけるアプローチは、クラップ! クラップ!ロメアモー・カラーズらを筆頭に多様。また、過去現在を問わず現地の作品の発掘/紹介も盛んで、オーケストラ・ポリリズモ・デ・コトノーと並んでAnchorsongが新作の影響源に挙げるアナログ・アフリカサウンドウェイオーサム・テープス・フロム・アフリカといったレーベルの音源では、ヴェルキスオルケストル・ヴェヴェアマラ・トゥーレハイル・メルギアらのリイシュー盤や、ガーナのシロフォン奏者であるSK・カクラバの作品あたりが入手しやすい。

 Anchorsongが現在拠点にしているUKの音楽シーンを起点としたそのような裾野は、従来のハウスの文脈にもふたたび広がっているようだし、ここでとても網羅しきれない動きについては各自確認をお願いしたい。

バティーダの2014年作『Dois』収録曲“Ta Doce”
クラップ! クラップ!の2014年作『Tayi Bebba』収録曲“Ashiko”
SK・カクラバの2015年作『Songs Of Paapieye』収録曲“Darifu”