トレンディー俳優時代の人間味溢れる歌
そんな彼の歌心が思いっきり開放されるのは、やはりソロ活動を開始してからだろう。ファーストシングル“Still I Love You”がリリースされたのは、柳葉がドラマ「男女7人秋物語」に出演中だった1987年10月のこと。“憎いあンちくしょう”や“雲流るゝ果てに”といった名作邦画のタイトルが付けられた楽曲が並ぶファーストアルバム『君の名は。』(1987年)、「ビートたけしのスポーツ大将」のテーマソングに起用されたセカンドシングル“ima just gumba(がんばろう)”を含む2作目『You-Go(融合)』(1989年)などには、パブリックイメージそのまんまの男臭さがプンプン立ち上がる歌唱が横溢している。ところどころで凄みを利かせた声も聴こえるが、その向こう側にチャーミングな笑顔が見え隠れしているところなど女子をキュンとさせるポイントも多数見つけられる。
バブル景気に沸き立つ1990年代初頭、いつの間にかトレンディー俳優という肩書きを背負っていた彼だったが、その頃の作品では、宇崎竜童作曲の“楽園(ザナドゥ)”“遠い夏の記憶”“夢追人-Dream・Chaser”、そして柳ジョージ作曲の“真昼の月(noon+moon)”などを含む『don-den』(1990年)、井上堯之が書いたブルージーなポップスやハードなブルースロックなどが並んだ『Na-goshi』(1991年)といった作品が一段と強い光りを放っている。なかでもシングルとなった“初めの一歩”をはじめ、大塚ガリバーによる楽曲はすこぶる相性の良さを発揮していて、柳葉の人間味溢れる歌を引き出しているのが印象深い。
松山千春や吉田拓郎が楽曲提供した注目作
これ以後も人気者街道を突き進んでいく柳葉はコンスタントに作品のリリースを続け、1992年発表の『Y』のときに決めた公約を果たすべく、『A』(1994年)、『N』(1995年)、『A’96』(1996年)、『G』(1997年)、『I』(1998年)、『B』(1999年)、『A 2000』(2000年)という一連のアルバムを、レコードレーベルを跨いでリリースするというプランもみごと成し遂げている(いかにもギバちゃんらしい発想と実行力だ)。
そのなかから注目作を1枚挙げるとすると、主演ドラマ「天下を獲った男 豊臣秀吉」の主題歌だった松山千春作の“俺の人生(たび)”、そして吉田拓郎作の“遥かなきみに”“あしたの果実”が収録されている『Y』がいいだろう。また、1990年半ばの作品においては、彼のハスキーなボーカルがより艶やかさを増し、音楽的な成熟度や完成度の面での充実ぶりがしっかりと確認できるのも特筆すべき点だ。
いまはすっかりご無沙汰状態にある柳葉の歌手活動。2017年には秋田県PRのために歌った“あきない歌”がひょっこり登場したりもしたけれど、魅惑のハスキーボイスはグッとシブさを増していてカッコ良かったし、表舞台でもっと派手に暴れまわってくれてもいいんじゃないか?って思ってしまうのだが、どうだろうか?
PROFILE:桑原シロー
1970年、三重県尾鷲市生まれ。音楽ライター。2000年代半ば、タワーレコードが発行するフリーペーパー「bounce」の編集業務に携わり、退社後、フリーランスの音楽ライターとして活動。雑誌/ウェブを中心に記事を執筆。インタビュー、ライナーノーツ執筆などを行なう。ロック、ジャズ、歌謡曲など幅広い音楽ジャンルに精通し、映画、芸能、お笑いの分野にも活動範囲を広げている。2014年から、日本のディープサウス、熊野在住の異能のギタリストのマネージャーも務めている。
