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2016年最注目集団・KANDYTOWNのIO、待望の初作『Soul Long』はDJ WATARAIやOMSBら超世代的な豪華制作陣が集結

2016年最注目集団・KANDYTOWNのIO、待望の初作『Soul Long』はDJ WATARAIやOMSBら超世代的な豪華制作陣が集結

Soul Fresh, Soul Deep
2016年のシーンを彩る最注目集団・KANDYTOWNから、待ち焦がれたIOのファースト・アルバム『Soul Long』がついにドロップ! これは日本の肥沃なシーンが生んだ『Illmatic』なのか、それとも……

 その名が早耳の間で囁かれるようになったのはいつ頃だったのだろうか。少なくとも、JASHWONの手掛けた“Dig 2 Me”が投下された2014年の秋には界隈を賑わせはじめ、同年末にUNITED ARROWS企画のサイファーに参加した頃には、このフレッシュなラッパーの存在はストリートやファッション方面で話題となっていたようだ。世田谷を拠点とするKANDYTOWNの中心人物であり、同時に日本語ラップ・シーンの最重要クリエイター集団となっているBCDMGに加入したIO。例えば昨年はBCDMGの『KING'S VIEW』にソロやクルーで参加し、KID FRESINOの“Special Radio”に客演していたのも記憶に新しいところだが、並行してストリート・アルバムやフリー・ダウンロード作品によって絶大な支持を獲得し、正式デビュー前からすでにファッション誌のカヴァーを飾ってもいた彼が、ついにファースト・アルバム『Soul Long』をリリースしたのだから、これはまさに満を持して、と言っていいだろう。

 ファッショナブルな存在感をシンプルなポートレートで映し出したアートワークも目を惹く本作は、当然ながら中身のほうも力の入った一枚に仕上がっている。MASS-HOLEのソウルフルなループが吹きすさぶオープニングの“Check My Ledge”から、若々しさを帯びた語り口とは裏腹に、グッとメロウな色調を帯びたヴァイブに年季の入ったリスナーもグッと引きつけられるのではないか。そのようなある種の渋みは、例えばジョーイ・バッドアスらによる90年代NY作法のルネッサンスにシンクロしたもののようでもあり、それでいてレイドバックした主役の語り口が現在時刻を強烈に印象づけてもいて、おもしろい。そうでなくても、クルー仲間のNeetzによる“Play Like 80's”、FRESINOのビートが眩しい“Tap Four”、DJ WATARAIによるバウンシーでメランコリックな“So”……と聴き進めていくと、街の奥深くにゆっくり踏み込んでいくような穏やかなスリルに襲われるはずだ。

IO Soul Long Pヴァイン(2016)

 それこそがKANDYTOWNの風景といったところだろうが、列記してきたように本作は超世代的に豪華なビートメイカーが集ったという側面もある。煌めきを散りばめた“Here I Am”は10代の頃からの縁だというOMSBの仕業で、クルーでマイクを回す緊迫した“119measures”はGradis Niceのプロデュース。また、流れる情景のような“Plush Safe He Think”はMr. DRUNKことMUMMY-DRHYMESTER)、そしてBOOをフックに迎えた表題曲はブラックネスに溢れたMURO式の美麗な逸品とくる。JASHWONの哀愁ループを備えた本編ラストの“City Never Sleep”まで、語気を荒げることなく心地良い落ち着きを保ったラップの簡素な味わいも手伝って、全編のソウルフルな旨みは損なわれることがない。

 なお、本作のリリース日は、昨年2月14日に亡くなったクルーの精神的支柱=YUSHIの一周忌にあたる。そんな背景を知らずとも、〈Soul Long〉と書いて〈ソー・ロング〉と読ませる本作の纏った思いは、ここにある言葉と音全体から浮かび上がってくることだろう。