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cali≠gari、〈夏〉をテーマに掲げたコンセプト・ミニ・アルバム『憧憬、睡蓮と向日葵』到着! 【Pt.2:INTERVIEW with 石井秀仁】

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  • 2016.04.11
cali≠gari、〈夏〉をテーマに掲げたコンセプト・ミニ・アルバム『憧憬、睡蓮と向日葵』到着! 【Pt.2:INTERVIEW with 石井秀仁】

 〈夏〉を6方向から表現したcali≠gariのコンセプト・ミニ・アルバム『憧憬、睡蓮と向日葵』。前回の桜井青(ギター)へのソロ・インタヴューでは、音楽のやり取りのみで不思議と噛み合う3人の姿が浮き彫りとなったが、続く石井秀仁(ヴォーカル)との対話からも、透けて見えるのはメンバー同士の風変わりな関係性。そんなバンドだからこその美点が発露した新作について、今回は石井に訊いてみた。

★桜井青(ギター)のインタヴューはこちら

cali≠gari 憧憬、睡蓮と向日葵 密室ノイローゼ(2016)

 

〈夏〉ってどういうことなんだろう

――さて、今日は新しいミニ・アルバムについてのインタヴューなのですが……。

「それで、なんで俺へのインタヴューなんだろう?って。よくわかんないんですけど(笑)」

――まあ、今回は担当楽曲の数も少ないですしね(笑)。GOATBEDのほうの活動もお忙しかったのかなと。

「そっちが忙しくなかったとしても、根本的にコンセプトがあるっていうのが……まあ、理解はできますけど、それって俺の分野じゃないじゃないですか。だから、最初っから〈青さんにお任せしますね〉って話で作りはじめてたんで」

――〈睡蓮〉や〈向日葵〉といったコンセプトは無理だと。

「〈無理! 無理!〉って言ってた(笑)。向日葵はさすがにわかりますけど、睡蓮はどういう花かも思い浮かばないぐらいの感じだったんで。だから、最初に〈睡蓮と向日葵がコンセプトでどうですか?〉って言われたときも、〈はい?〉って(笑)」

――ハードルは高そうですよね。

「高いです!」

――でも、〈夏〉ならいけるかなという?

「いけないです、いけないです。何がコンセプトだとしてもいけないんですけど、たぶんこれ、俺のために〈夏〉にしてくれたんだろうなと思って(笑)。〈これなら作りやすいですよね?〉って言われたから、申し訳ないなと思って、〈了解です〉って」

――ホントはちょっと無理だったんだけど。

「無理ですよね。コンセプトとかそういう頭がないですから、根本的に」

――基本的には、そのときどきで作りたいものを作るようなタイプですか?

「うん、そうですね。例えば、トータルで〈今回ちょっとダークにしようぜ〉とかはありますけど、そんなレヴェルですよ(笑)」

――ただ、ともかくコンセプトは〈夏〉に決まったわけで。石井さんは〈夏〉とどう向き合って曲を書かれたんですか?

「〈夏〉っていうのはどういうことなんだろうなと思って。最初はホントに、杉山清隆とかTUBEとかしか出てこなかったから、〈そういうこと?〉って青さんに訊いたら、〈そういう夏は僕がやりますんで〉みたいな(笑)。だから、俺はそういうのじゃないってことでよかったです。ドロドロしたのとか、解釈はいろいろあるじゃないですか。青さんは多くを語らなくて……そのくらい自分で噛み砕けっていう話なんでしょうけど(笑)」

――では、どうやって噛み砕きました?

「夏の雰囲気のする映画とか、漫画とか、本とか写真とか……まあ、ネタ探しみたいなところからですよね」

――それで、ネタは見つかったんですか?

「いや、見つかってないんですけど、イメージ的に、場面場面を切り取るような感じというか、上條淳士さんの『SEX』っていう漫画があって、そこからインスピレーションを受けたところはありますね。夏の描写が多い漫画なんですよ。“蜃気楼とデジャヴ”はそういう感じ。物語から、っていうことじゃないですよ? このひとコマのこの絵とか、あるシーンとか、そんなものなんですけどね」

――そこから膨らませていったと。

「膨らませざるを得なかったっていう(笑)」

GOATBEDの2013年のシングル“DREAMON DREAMER”

 

ちょっと変わってます

――サウンドとしては、近年のcali≠gari作品のほうで出されてきた楽曲とはまたちょっと雰囲気が違うというか、青さんと研次郎さん(村井研次郎、ベース)のギターとベースが入ってますからもちろんcali≠gariの曲なんですけど、ちょっとGOATBEDの匂いも感じられるような。

「あ、そうですか(笑)? リズムはかなり無茶な打ち込みなんですけど、そこですかね。いまはドラマーが不在なんで、打ち込みにする必要のない曲をあえて打ち込みでいこうっていうのは、自分のなかで決めてたことで。まあ、シンプルな曲なんですけど、例えばハイハットが鳴るべきところで、シンバル、クラッシュみたいなのがガンガン鳴って、それをさらにぶつ切りにしたりとか……パッと聴いたらわからないかもしれないですけど、ちょっとね、変わってます(笑)」

――人力では無理なものという?

「あとはまあ、例えば、プログラミングされた音楽でもあえてそんなことはしないような感じというか。なんかすごい暴れてるな、みたいな、しかもキックとかスネアとかが暴れてるんじゃなくて、ハイハットがものすごい鳴ってるみたいな……そんなのをやってたら、だんだんおもしろくなってきて(笑)」

――実験していたらおもしろくなってしまったと。

「そうですね。そういうのもいいかなと思って。ただ、まあ、音源ではそういう感じですけど、ライヴでは中西(祐二)君が叩くわけなんで、また違う曲になるんだろうし」

――人間が叩けるアレンジに。

「ただ、人間が叩けるアレンジっていうのも、妥協しないでやってくれますからね。あの強烈なハイハット、そのままコピーしてくれって言ったら、たぶんやってくれると思うんで(笑)。完全には無理ですけど、あの打ち込みに近い感じでドラムを叩いたら、やってることはほぼドラム・ソロですよ。ハイハットをずーっとゴチャゴチャやってることになるから、見た目的に強烈だと思いますね(笑)。普通のビートを叩いてる感じに見えない。足も手も全部ハットにいかないといけないような」

――それで、そういう変わったリズムがまずあって、ビートとメロディーぐらいしかないものを青さんと研次郎さんにお渡ししたんですか?

「二人のところ以外は、先にもう全部録ってありましたね。本番の歌があって、仮ベースも入ってて。ただ、ギターは一切弾かなかったんですよ。で、コード進行すら伝えずに、〈よろしく!〉って(笑)。たぶん、こういう曲、青さんは得意だろうなと思って、何がきてもいいやって」

cali≠gariの2013年のセルフ・カヴァー・アルバム『1』収録曲“クソバカゴミゲロ”のライヴ映像

 

そうじゃないほうの夏

――結果的に、お二人のプレイは楽曲のパーツのひとつという役割を担いながらも、ものすごく主張のある仕上がりになってますが、全体のトーンとしては、〈夏〉の開放的なイメージに対してどちらかというと逆の雰囲気の仕上がりですね。

「そうですね。開放的ではないですね。曲調に関しては単純に、青さんがどういう曲を作ってるかっていうのはドラム録りのときにラフを聴いたりしてたので、そことかぶらず、だけどcali≠gariの曲として全然違和感のないものにしようっていうところですかね。リリース前の時点だと、皆さんきっと、〈夏〉っていうところから爽やかでポップなものを想像してると思うんですけど、結果的にそういうものとそうじゃないものと半々ぐらいじゃないですか。青さんの“ギラギラ”とか……」

――そうですね。“ギラギラ”や、石井さんが携わった曲は〈そうじゃないもの〉のほうを担っているということですね。で、そんなサウンドに乗せられた歌詞なんですけど、テーマは青さんが書かれた“アレガ☆パラダイス”と近いんでしょうか? あるいは、ライヴのときの風景かどちらかかな、と思ったんですけど。

「まあ、“アレガ☆パラダイス”の歌詞がどういう意味かはわからないけど、そういう、なんとかミーニングみたいなやつ? 〈これ、どっちなんだろうな?〉って取れるようなところは考えてますよね。あとはなんか、夏休みとかに友達同士で集まって、いたずらしちゃって、っていう。そんなことをちょっと詩的な感じに歌ってるだけみたいな」

――友達と集まって……というのは、全然想像できてませんでした(笑)。

「自分もそういう経験ありますけど、子供の頃とか、特に夏休みなんかそうですけど、大勢で集まったりすると気持ちが大きくなっちゃって、普段行っちゃいけないところに行ったり、やっちゃいけないことをやったりするじゃないですか。で、そのいたずらっていうのも、可愛いいたずらもありますけど、いま考えるとよくこんな残酷なことやってたなっていうようなことも結構あったりとか」

――子供だからこその残酷さって、ありますからね。

「そうそう。そんなのも歌詞には入ってるから、自分のなかでも〈これだ〉って言ってるんじゃなくて、いろんなのがごっちゃになってる。その解釈が、答えがどうこうっていうことでなくっていう感じですかね」

――それが石井さんの思う〈夏〉だったっていう。

「うん。ただ、それが文章として、読んでわかるものにしたいなとは思ってて、何を言ってるのか、はっきりとはわからなくても、なんとなく景色が描けるものがいいなと思って。最近、わりと意図的にそうしてるんですよね。無意味なワードを散りばめるっていうやり方も限界っていうか、それは別にいつでもできるっていうか、逆に自分のなかで逃げになってきたんで(笑)、そういうパターンは置いといて。あと今回は、フルで自分で作ったのはこの一曲だけだから、ある程度はコンセプチュアルにというか、〈夏〉っていうお題目があったわけで、自分なりに、そういうものをちゃんと書こうかなっていう。真面目に作りました(笑)」

――そんななかに、〈キリキリマイム〉といった過去曲の名前も登場しますが。

「(笑)そこは何の意味もない一文ですね。まあ、単に〈ユーモアです〉っていう。トータルの流れとは関係なくて、ぶった切ってるところですね、そこは」

 

複雑なようで、実際はシンプル

――では、サウンドだけではなく歌詞のほうでもエディット感覚があるという?

「そうですね。結構、歌メロの、Aメロ、Bメロ……どこまであるんだ? これ。結構たくさんメロディーがあると思うんですけど、コード進行とか構成はほとんどひとつなんですよ。だけど、歌だけは変わってくみたいな。その、GOATBEDでは基本的にテクノみたいなものをやっているから、そういうミニマルっぽい手法で、ロックとかポップソングを作って、なおかつそれでパンクにならない……それは、いわゆるスリーコードの曲にならないってことですけど、そういうふうにならないような作り方を最近は結構してるんです。ひとつのブロックにひとつのコード進行がまずあって、それに対してヴォーカルのメロディーだったり、シンセとか上に乗っかるものが変化していくことによって、そのコード自体も変わっていくというか。ベースのね、ルートが変わったりとか」

――ループのようでいて、実際は少しずつスライドしながら変化していくという。

「最近は、cali≠gariの作曲にもそういう要素を採り入れてますね。勝手に」

――ということは、そういう楽曲が他にもあるんですか?

「今回は、研次郎君の“陽だまり炎”もそんな感じですけどね。どっちもパッと聴いた感じはずいぶん複雑な感じに聴こえるけど、実際はシンプルっていう。あんまりそういう音楽がないなと思って。やっぱり、自分が若い頃は、人が使わないコードとかを使いたかったんですよね。コード進行を複雑にしたりとか、いかにコードの数を多くするかとか、変なテンションを入れるかとか、そういうことにこだわってた時期があったんですけど、いまの若い人たちとかは、みんな楽器も上手いし、音楽理論的な意味でも楽器の知識を持ってたりするので、なんか、自分がそういうアプローチをしてもおもしろくないなと思ってきて。GOATBEDはcali≠gariとは別のユニットですけど、そっちでやってることをフィードバックできるような、そういう感じがあったらいいかなと」

――それは、曲調ではなくて、手法というお話ですね。

「そうですね、手法ですね。ただ、聴いてる人はたぶん、全然わかんないと思いますけどね。こんな話、普通の女の子にしたら〈何言ってんだ〉ってものだと思うんですけど(笑)」

――微細なグラデーションを描いているような不思議な聴き心地は、感じるところがあると思いますよ。

「あとね、研次郎君とかは昔、例えば1回目のAメロ、2回目のAメロでコード進行は同じなんだけど、違うアプローチをしてくることが多かったんですよ。〈同じコード進行で何パターンか違うのを弾いたので、好きなやつを貼っちゃってください〉っていう手法があったんですけど、どれも良くて選ぶのがもったいないなってことがよくあって。だったら、根本的に流れが同じであれば、研次郎君もそのなかでどんどん違うアプローチができるじゃないですか。それで変化していくっていう」

――どのアプローチも使っていきますよ、みたいな。

「そうそう。この曲もちょうどそういう感じになってますからね、ベースは」

――そうやって聴くと、また違う楽しさがあると思います。

「結構でもね、苦痛なんですよ。違うコードに行ったほうが楽だ、もうこっちに行きたい、でもいまさらこっちには行けない、っていうこともあって(笑)」

cali≠gariの2015年作『12』収録曲“さよならだけが人生さ”のライヴ映像

 

〈新宿鮫〉のように

――作曲者やプレイヤーとしては、そういうつらさもあると(笑)。で、今回石井さんはもう一曲、研次郎さんが作曲した“陽だまり炎”の作詞とアレンジをされてますが。

「まあ、いつものパターンですよ」

――今回も、大量のハード・ロックとメタルが届いたんでしょうか。

「今回は、そんなにメタルでは……まあ、ドラムはだいぶメタルだったな(笑)」

――研次郎さんからは、ある程度アレンジされている曲が送られてくるんですね。

「そうですよ。研次郎君の場合は、ラフじゃないんです。ドラムも緻密に打ち込まれて、ギターとかも普通に入ってる、ちゃんと楽曲としてわかる曲がくるんですけど、やっぱり、そのままcali≠gariでやるには難しいですよね。あと、研次郎君的にもそのままやることを全然望んでないだろうっていう(笑)。〈この曲をどうしますか?〉っていうところだと思うんでね。それと、今回はちょっとダークなコード進行だったんで、爽やかになるように変えてるんです」

――この曲は、爽やか……というよりも、ある種のグレーゾーンを担うような雰囲気かと思うんですけど。

「そうです、そうです。明るくもなく、暗くもなく、ポップでもなくみたいな(笑)。3~4曲目ぐらいで、他の曲の間を埋める曲というか。この曲の完成がいちばん最後で、他の曲がどういうものか全部わかっていたので、どんな曲調のものを作っても他とあたりそうだなっていうのがあって。あとは、やっぱり自分が作ったものと少しテーマが似ているのかな?と思えるようなものにしておこうと」

――ある意味、極端に振り切った青さんの楽曲の間を繋ぐ流れを作ろうと。

「あと、タイトルとかもすごい限界があって(笑)。最初は〈蜃気楼〉に対して、ほぼ同じような解釈で〈陽炎〉ってことを言ってたんですけど、〈陽炎〉っていう響きが自分的になくて……どうにか分離できないかなって思った結果で、この大沢在昌みたいなタイトルになったんです。なんか、〈新宿鮫〉みたいじゃないですか」

――そうですか(笑)?

「たぶん、近いのがあると思いますよ。俺、大沢在昌がすごい好きで。ハードボイルド系を結構読むんですよ。ちょっと待ってください(と言いながら、携帯で検索し出す)。イメージはね、ホントにそういうことなんです。そういうふうにしたら、〈新宿鮫〉みたいになるぞと思って」

――ハードボイルドといいますか、ちょっと侍イズムのような雰囲気があるような。まあ、それもハードボイルドと言えばハードボイルドなのかもしれないですけど。

「(笑)そうですよね。大沢在昌のタイトルが見つかりました。〈絆回廊〉とか〈狼花〉とか……〈風化水脈〉! 〈氷舞〉! 〈炎蛹〉! とかそういうことですよ。そのなかにひとつこう……」

――“陽だまり炎”が。

「あったらいいなっていう(笑)。〈屍蘭〉っていうのもありますよ」

――大沢在昌作品のタイトルはもう結構です(笑)。では、この曲の歌詞はタイトルから広げていったんですか?

「同時ですかね。どちらかが先じゃもう、合わなくなってきたっていうか、歌詞を整えながら、じゃあメロディーはこっちにしようとか、そういう感じで全部同時にやってたんで、完成するときは一気に〈出来ました!〉ってなるんですけど、例えば、まずトラックだけ出来たから先に聴かせますとか、そういうことができないんですよ。で、俺、この曲のデータを一回飛ばして。GOATBEDのツアーで北海道に行ったときに、この曲をフィニッシュしようと思ってデータを持って行ってたんですよ。それで、向こうでバックアップを取ろうとしたら、そこでハードディスクが飛んじゃって(笑)」

――そういえば、Macが壊れたっていうツイートをされていたような。

「そうなんです。Macはいまだにないんですけど(笑)。で、スタジオにももちろんデータはあったんですけど、3日前ぐらいのもので。東京に戻ってから聴いたら、もう歌メロすら乗ってないような、ひどい有様で(笑)。ドラムも、曲がわからない状態で、中西君に〈こういうドラムで〉って指示して録ってもらったやつをエディットして、それは完成してたんですけど、もうエイトビートのループみたいになってた(笑)。そこからはもう、思い出し作業ですよ。ここはこうだった気がする、みたいな……たぶん、損なったものも相当あると思うんですよね。Macが復旧して元のデータを聴いたら、あれっ?っていうね。そのときにどっちがいいか、自分で楽しみですね。出来上がったほうが勝っててほしいんですけど(笑)」

 

距離があったほうが

――(笑)まあ、そんなアンラッキーに見舞われつつも完成した今回のミニ・アルバムですが、完成した日に、〈良い作品になった〉というようなことをツイートされてましたよね?

「あの~、俺、ツアー中だったんで、初期段階のミックスとかほとんど聴いてなかったんですよ。聴ける環境がないから。俺、ヘッドフォンであんまり判断しないので」

――そうなんですね。逆のイメージがありました。

「あと音質にもよりますよね。送られてきたものをMacのQuickTimeで再生して、それを普通のイヤホンで聴いても判断ができないので、ああだこうだ言えないじゃないですか。だから今回は、お二人に任せて大丈夫だろうと思って、何一つ言わなかったんですよ。いつもはずっと言い続けてるんですけど(笑)」

――そうですよね、ずっと現場にいらっしゃいますし(笑)。

「例えばね、普通のミュージシャンは歌を上げてくださいとか下げてくださいとか、そういうもんだと思うんですよ。でも俺は、全体のレンジ感とかEQの感じ、まあトータル的なことを言う機会が多かったんですけど、その判断がまったくつかないですから。ただ、いつもミックスをやってもらってる白石(元久)さんだから、信頼してなんの問題もないだろうと。それで今回は、最終的にもう変更できない、納品するファイルっていうので初めてちゃんと全部聴いたんです。そうしたら、思った以上に良くて。まあ、マスタリングはちょっと置いときますけど、音源としてのクォリティーも音も、最高だなと思って。バランスも良かったんですよね。cali≠gariは散らかってる部分がいいっていうところもあるんでしょうけど、今回は6曲で散らかってるところが全然なくて……なんか、どの曲もグッとくるっていう。曲順もいいなって。いつもは何かしら〈うーん〉って思うところがあるんですけど、今回は全然思わなかったですね。あとは、今回自分で作った曲が少なくて、人の曲を歌ってるって感じなんで、〈どう変えてもらってもいいですよ〉って歌をお渡ししてたんですけど、それが〈ああ、こうなったのか。すごいな〉っていう……なんか、人ごとみたいな感じで(笑)」

――素材のひとつに徹したという?

「うん、たぶん普通はそうだと思うんですよ。で、それぐらいの距離感だと、仕上がった作品に感動できるんだなって……感動っていう言い方もあれだけど、一般的なヴォーカリスト、シンガーって、そこまで突っ込んだことを言ったり、やったりする人はそんなにいないと思うんですよね。自分が歌ったときはラフだったものがトラック内で処理されて、ミックスされて仕上がってきて、そこで初めて完成したものを聴けば、〈うわあ!〉って感動できるんでしょうけど、自分はいままで、最初から最後までそういうところに携わってたから」

――まあ、付きっきりでしたね。

「ミックスをやってる現場にもいて、やってる最中に、〈これはもうちょっとこうですね〉とか言ってましたから。それで、何回も何回も聴いて、〈じゃあ最終的にこれでOKですね〉っていうやり方だったんで、ちょっと距離感があったほうがいいのかなって」

――では、今回の制作の仕方はアリだな、と。

「うん、cali≠gariにおいてはそう思いますね」

2015年作『12』収録曲“紅麗死異愛羅武勇”

 

プレイヤーとしての力

――今作は、メンバー同士で実際に会うことがほぼないまま完成してしまった、と青さんはおっしゃってましたが。

「青さんは秦野(猛行)さんとか白石さんとかと一緒にやっていて、二人ともすごいミュージシャンだし、cali≠gariのことを一番わかってる人たちだから……まあ、ほとんどメンバーと変わらない、そういう人たちなんで、なんの不安もないというか。自分が本番の歌を歌う用に、仮歌のデータがくるんですけど、その段階でもう、何がやりたいかっていうことも全部わかるんですよね。昔はもうちょっとラフな段階で歌を入れなきゃならないこともあったから、景色が見えてないこともあったんです。で、最後にシンセなんかがダビングされて、〈ああ、こういうことね〉ってわかるような感じだったんですけど、いまは、〈この曲ではこうしてほしい〉っていうのがほとんどわかっている状態なので、自分のなかでも判断しやすいんですよ。歌って、自分のイメージになってなければこれはダメだ、もう一回やり直そうってなるし」

――音を聴けば、もう完全に解釈できるということですか?

「そうですね。もちろん、歌詞も大きいですけど。あとは、いままではcali≠gariのアルバムを客観的に聴ける状況ではなかったんでしょうけど、今回は最初からちょっと距離があったんで、〈うわあ、曲も全部いいよね!〉って(笑)、人のバンドの作品を聴いてるような、そういう感じでしたね。〈ミックスすると、こんなに良くなるの!?〉って(笑)」

――20年以上のキャリアがある方の発言とは思えませんが(笑)。

「ああでも、初めてレコーディングしたときみたいな、そういう感じをちょっと思い出しましたね。自分が作った曲に対しても、青さんが作った曲に対しても、研次郎君と青さんのアプローチの仕方が、会わないからこそのものというか……ディレクションする人がいないわけじゃないですか。だから、本人の判断でやるわけですけど、ここはすごくいろんなことを考えてやったんだろうなあというのが伝わってくるというか。フレーズひとつにしても、この一発で決めるぞ、みたいな、そういう感じがひしひしと伝わってくる。そんなの、全部すごいなと思うじゃないですか」

――石井さんもそうだったと。

「うん? 俺はいっぱい直し……それはもう白石さんを信頼して(笑)」

――(笑)バンドとしては珍しい制作スタイルですが、今回はその加減が一番甚だしくなってますね。

「うん。甚だしいですし、作ってる最中に〈これ、出来るのかな?〉とかそういうことも思ってましたけど……人ごととしてちょっと思ってるんですよ。〈青さん、大丈夫かよ〉って。自分の曲も出来てない癖にね(笑)。ただ、まあ、作曲はとりあえず置いておいて、プレイヤーとして、それぞれすごいなって。自分はシンガーとしてですけど、持ってる力を一番発揮できたアルバムじゃないかっていう気がしますよ」

――そうですね。今作は3人の持ち味が楽曲的にも、プレイヤー的にも鮮やかに出た作品だと思います。

「うん、今回はホントに良いと思いますよ。俺はまだ、ファイナル・データを2回聴いただけですけど、2回聴くこと自体がもう奇跡ですから(笑)」

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