3度のグラミー賞に輝く世界最高峰のベーシスト、ジョン・パティトゥッチが自身の最新ユニット=エレクトリック・ギター・クァルテットを率いて再来日。5月18日(水)、19日(木)にブルーノート東京、22日(日)、23日(月)に東京・丸の内コットンクラブで東京公演が開催されるほか、5月20日(金)にはBrooklyn Parlor OSAKAでのスペシャル・ライヴも決定している。ジョンのベースに、アダム・ロジャーススティーヴ・カーディナスという2人のギタリスト、ブライアン・ブレイドのドラムスとコンテンポラリー・ジャズを担う強力布陣で、名曲の数々を披露してくれるはずだ。今回は、昨年リリースされた最新作『Brooklyn』のライナーノーツを執筆した音楽アナリスト&ライターの石沢功治氏に、パティトゥッチの歩みと来日公演の見どころを解説してもらった。 *Mikiki編集部

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ジャズやフュージョン・シーンで長らくトップ・ベーシストとして君臨し続けているジョン・パティトゥッチ。その彼が前作『Remembrance』(2009年)以来6年ぶりとなる目下のニュー・アルバム『Brooklyn』を伴って、ニュー・プロジェクトを起ち上げてわれわれを驚かせたのは昨年春のこと。バンド名はジョン・パティトゥッチ&エレクトリック・ギター・クァルテット。アルバム・リリースのタイミングにぴたりと照準を合わせて、昨年5月には東京・丸の内コットンクラブでお披露目公演も行った。そのエレクトリック・ギター・クァルテットが待望の再来日公演を行うというのだから見逃せない。

バンドやアルバム『Brooklyn』に関しては後述するとして、まずは簡単にパティトゥッチの経歴を紹介しよう。59年にNYで生まれ育ったパティトゥッチは、その後LAに移ってスタジオ・シーンで活動していた。そんな彼の名が一躍知れ渡ったのが、ピアノのチック・コリアが80年代半ばに結成したエレクトリック・バンドへの参加だ。先端的なフュージョン・サウンドで一世を風靡した同バンドと共に、パティトゥッチは一気に第一線へと躍り出たのである。

90年代前半にエレクトリック・バンドが解散した後は、さまざまなアーティストから引く手数多の大活躍を続け、2000年からはジャズ・サックスの巨人ウェイン・ショーターのクァルテットでレギュラー・ベーシストを務めて名声をより高いものとした。

パティトゥッチが参加した、チック・コリア・エレクトリック・バンドのライヴ映像
パティトゥッチとブライアン・ブレイドが参加した、ウェイン・ショーター・クァルテットのライヴ映像

 

そういった活動と並行して、自己のリーダー作も精力的に発表してきており、最新作『Brooklyn』は通算14枚目を数える。そのパティトゥッチが結成したエレクトリック・ギター・クァルテットは、ツイン・ギターにベースとドラムスという編成。なぜギターに重きを置いたバンドにしたのかというと、兄・トムがギタリストということもあり、少年時代からギターが身近にあったパティトゥッチは無類のギター好きとのこと。言われてみれば、早くからギターと同じ弦の数の6弦エレクトリック・ベースを導入していたし、高音域を駆使した高速フレーズは時にギターと見まごうほど似ている。

また、パティトゥッチはエレクトリック・ベースとアコースティック・ベースの両方を自在に操る。ただ、ウェイン・ショーター・クァルテットではアコースティックだけをプレイしているということもあって、私見だが、近年はエレクトリックよりもアコースティック・ベースの比重が高い印象を持っていた。対してエレクトリック・ギター・クァルテットではすべてエレクトリック・ベースをプレイしているのが一つの特徴である。

JOHN PATITUCCI Brooklyn Three Faces/AGATE(2015)

次に『Brooklyn』のタイトルについて。パティトゥッチはLAのスタジオ・シーンから頭角を現した関係で、周囲からカリフォルニア出身だと勘違いされていて、その都度「私はNYのブルックリン出身ですよ」と訂正していたのだという。つまり、本作は生まれ育った土地へのオマージュ的な意味合いが込められている。例えばメドレー形式の1曲目“IN9-1881 / The Search”の前者は、彼がブルックリンに住んでいた60年代の家の電話番号なのだそうだ(笑)。

バンド・メンバーの他の3人も申し分なしの人材である。ドラムのブライアン・ブレイドは、70年生まれでルイジアナ州シュリーブポート出身。ジャズは無論、ジョニ・ミッチェルボブ・ディランからも声がかかり、自己のフェロウシップ・バンドではこれまで4作品をリリース。そして、2000年からはウェイン・ショーターのクァルテットにパティトゥッチと共に抜擢されて以来、鉄壁のリズム隊を誇っている。

ブライアン・ブレイド&ザ・フェロウシップ・バンドのライヴ映像

 

ギターのアダム・ロジャースは65年生まれのNY出身で、ジョン・スコフィールドなどにレッスンを受けた経験を持つ。リーダー作はこれまで5枚発表していて、近年はサックス奏者のクリス・ポッター率いるアンダーグラウンドにも在籍。カート・ローゼンウィンケルと共に現代ジャズ・ギター界のフラッグシップ的な存在だ。もう一人のギタリスト、スティーヴ・カーディナスは59年生まれでカンザス州カンザスシティ出身。サンフランシスコ〜LAを経て95年にNYへ移ると、パット・メセニーの推薦でドラムのポール・モチアンのグループに参加。一昨年はリーダー4作目『Melody In A Dream』も発表し、ジョン・カウワードのバンドでコットンクラブに出演して待望の初来日も果たした。ちなみに、このときのリズム隊もパティトゥッチとブレイドであった。とにもかくにも多方面から声が掛かる、NYジャズ・シーンの逸材である。

アダム・ロジャース・クァルテットのライヴ映像
スティーヴ・カーディナス・トリオのライヴ映像

 

これまでのパティトゥッチは、チック・コリアやハービー・ハンコックなどピアニストとの共演が圧倒的に多かった。対して、エレクトリック・ギター・クァルテットはピアノレス編成ということで、ギターならではの空間的なハーモニーが魅力的。しかもそのギター独特のサウンドも相まって、パティトゥッチとブレイドの盟友コンビが繰り出すリズムは、ウェイン・ショーター・クァルテットとはまた違ったグルーヴに聴こえるのも妙味だ。

さらには、パティトゥッチの卓越したベース・プレイは言うに及ばず、コンテンポラリー・ジャズ・ギター・シーンの中核を成すアダムとカーディナスによるアドリブ・ソロの掛け合いも聴きどころ。加えてバンド4人がお互いのプレイに反応し、どんどん展開していく魅惑のインタープレイは、アルバムでは聴くことのできないライヴならではの醍醐味だ! ぜひとも公演に足を運んで、その素晴らしさを体感していただきたいと切に思う。

2015年にコットンクラブで開催されたエレクトリック・ギター・クァルテットの来日公演の模様
スナーキー・パピーのライヴにパティトゥッチがスティーヴ・ベイリー(ベース)と共に飛び入り参加した際の映像。リーダーのマイケル・リーグと3人でベース・バトルを繰り広げている

 


JOHN PATITUCCI
"THE ELECTRIC GUITAR QUARTET"
featuring ADAM ROGERS, STEVE CARDENAS & BRIAN BLADE

【ブルーノート東京公演】
日時:2016年5月18日(水)、19日(木) 
開場/開演:
・1stショウ:17:30/18:30
・2ndショウ:20:20/21:00
料金:自由席/8500円
※指定席の料金は下記リンク先を参照
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【コットンクラブ公演】
日時:2016年5月22日(日)、23日(月) 
開場/開演:
〈5月22日〉
・1stショウ:16:00/17:00
・2ndショウ:18:30/20:00
〈5月23日〉
・1stショウ:17:00/18:30
・2ndショウ:20:00/21:00
料金:自由席/8,500円
※指定席の料金は下記リンク先を参照
★予約はこちら

【Brooklyn Parlor OSAKA公演】
日時:2016年5月20日(金) 
開場/開演:19:00/20:30
料金:Sエリア指定/6,000円、Aエリア指定/5,500円、Bエリア指定/5,000円
※BOXシート、ブレミアムシート、ペアチケットの料金は下記リンク先を参照
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※店頭、チケットぴあ(P: 296-276)e+にてお買い求めいただけます