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ボストン在住の日本人プロデューサーによるソロ・プロジェクトが、2作目『17 Living Souls』からわずか半年でさらに2枚ものアルバムを完成させた。それぞれ違うコンセプトが聴き取れる引き出しの多さに驚かされるが、まず『COZY LAYER』は〈演奏〉が聴きどころ。さまざまな楽器を一人で操ってジャズ、ソウル、ファンクを構築する内容で、巧みなソロ・プレイを織り交ぜたメロウな音のレイヤーが表題通りの心地良さを生んでいる。
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一方の『14 Beats N' Rhymes』は、〈ヒップホップ/R&B〉を基調にしたもの。ゲスト・ヴォーカルを迎えて90年代マナーのサウンドを聴かせるが、鳴る音がサンプリングでなく揺らぎや丸みを帯びた生音であるため耳触りは温かく、ヴィブラフォン・ソロが挿入されたジャネイ“Hey Mr. DJ”などカヴァーも気の利いた仕上がりだ。両作に共通するのは、技巧を誇示するのではなく、自身のマルチぶりをあくまでブラックなグルーヴを紡ぐ手段として活用しきっている点だろう。この手腕が外部プロデュースで活かされる機会があったら……という妄想も膨らむ作品集となっている。