INTERVIEW

カネコアヤノを変えた『ひかれあい』とは? ex踊ってばかりの国・林、Gateballers本村ら集った〈終わらない青春〉みたいなバンドの物語

カネコアヤノ『ひかれあい』

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  • 2017.04.26
(左から)林宏敏、カネコアヤノ、本村拓磨

 

言葉のひとつひとつから魅力的な物語が生まれていくような、独特の描写による楽曲で人気を集めるシンガー・ソングライター、カネコアヤノ。彼女が2015年発売のアルバム『恋する惑星』以来、約1年半ぶりの全国流通盤となるEP『ひかれあい』をリリースした。

昨年11月のEP『さよーならあなた』以降は、以前からサポートを務めてきた本村拓磨(ベース、Gateballers)、濱野泰政(ドラムス)の2人に新たに林宏敏(ギター、ex 踊ってばかりの国)を加え、4人体制で作品制作やライヴを行なってきた彼女だが、この『ひかれあい』では、現在のバンドの充実ぶりをさらに作品へと反映。全編を通して、各メンバーの演奏がしなやかに絡み合い、魅力的な化学反応を起こしている。とはいえ、本作でもっとも印象的なのは、これまでよりも確信を堪えたカネコ自身の歌だ。リード曲“とがる”のコーラスでは、バンドの疾走感溢れる演奏に乗って〈かわる! かわる! かわってく景色を受け入れろ〉と力強く叫ぶ。おそらくこれは、心から信頼できるメンバーと出会うことができた今だからこそ歌える歌でもあるのだろう。

『ひかれあい』というタイトルには、この約1年で出会ったさまざまな人々との繋がりが表現されているという。そしてそのひとつひとつが、彼女にインスピレーションを与え、まるでつぼみが花になって咲き誇るかのように、本作の豊かな音楽に結実している。今回はカネコアヤノ、林宏敏、本村拓磨の3人で、その制作過程とこれまでの変化を振り返ってもらった。

カネコアヤノ ひかれあい we are(2017)

弾き語りは自由、バンドは永遠に終わらない青春

――カネコさんはもともと、大学時代に友達に渡した音源からミュージシャンとしての本格的な活動がスタートしたそうですね。

カネコアヤノ「その当時は、こんなにちゃんと音楽をやるとは思っていなかったですね。でも、私自身は全然変わっていないんですよ。いまだにできないことは多いし、サポートしてくれる人たちに助けられてきたという感じですね」

――活動当初から、〈こんな音楽を作りたい〉という理想像はあったんですか?

カネコ「とくにそういうふうな考えはありませんでした。ずっと私は自分のなかから湧き出てくるものを作っていくという感覚なんです。いちばん最初は、私と声をかけてくれた友達と、今もドラムを叩いてくれているヤスさん(濱野泰政)の3人編成でライヴをしていたんですけど、そのライヴを本村くんが偶然観てくれて、〈一緒にやろう〉という話になった。その後に、ギタリストが抜けてからは、私と本村くんとヤスさんの3人編成になったんですけど、ギターはずっと探していましたね」

2012年のミニ・アルバム『印税生活』収録曲“はっぴいえんどを聴かせておくれよ(仮)”
 

――林さんと本村さんは、最初にカネコさんの音楽を聴いたとき、どんな魅力を感じましたか?

本村拓磨「僕が最初に聴いたのは、ベース抜きの3人編成でのライヴだったんですけど、価値観が全部ひっくり返されたような感じでした。歌を聴いて、〈こんなことを思ってもいいんだ。すごいぞ、これは〉と思ったのを覚えています。それで、自分から〈ベースを弾かせてください〉と伝えました」

林宏敏「僕の場合は、ギターを探しているという話をもらったのが最初でしたね」

カネコ「そう、私からお願いしました。林くんは、最近ライヴを観たなかでいちばん格好良いと思ったギタリストだったんです」

「それで曲をもらったら、すごくいい歌を歌う人だなと思って。それまで名前は知っていたけど、音楽をちゃんと聴いたことはなかったんですよ。でも、音源を聴いて、一緒にやりたいと思いました」

――徐々に、カネコさんが信頼できる仲間が集まってきたという感じだったんですね。カネコさんは、今のメンバーの演奏にどんな魅力を感じていますか?

カネコ「今のメンバーに思うのは、〈歌を大切にしてくれる人たち〉だということですね。歌心がある演奏をする人たち。ドラムのヤスさんもそうです」

――それは実際に林さん、本村さんも意識していることですか?

本村「意識していますね。極端な話、自分のベースは聴いてもらわなくてもよくて、歌がいちばん良く聴こえるように……歌の内容がちゃんと届けばいいなと思ってやっているので」

「自分の場合は、もともとそんなギターしか弾けない(笑)」

――では、今の編成になって、最初に音を出したときのことを思い出してもらえると嬉しいです。

カネコ「『さよーならあなた』(2016年)のレコーディング前だったんですけど」

「まだ僕が、踊ってばかりの国をやっていたときですね

※林は踊ってばかりの国を2016年11月19日に脱退した

カネコ「デモの弾き語りを聴いてもらって、自分でもどういう展開が正解なのかわからない、という感じでみんなに相談して」

「集まる1日前にそれを言われたんですよ」

カネコ「ハハハ(笑)。自分では切羽詰まりすぎてわけのわからない曲ができてしまったという感じでした。でも、プリプロで〈ここはドロッとしたくて……〉という話をすると、〈おお、わかった〉という感じですぐにやってくれて。林くんは最初からすごくわかってくれて、とても助かりました」

「最初のレコーディングから楽しかったよね」

カネコ「そうそう。林くんは絶対怖い人だと思っていたんですよ。背も超高いし、最初に集まったときもびっくりしたぐらいで」

「俺も人見知りがすごいから、普段は仲良くなるのに時間がかかるんです。でも、初めて集まったときから自然に打ち解けられた」

カネコ「すぐに仲良くなりました。『さよーならあなた』を録る以前には、2回ぐらいしかスタジオに入っていなかったのにね。レコーディングを終えて、その日にみんなで呑みに行ったよね」

本村「そうだ。あれは楽しかった」

2016年のEP『さよーならあなた』収録曲“さよーならあなた”
 

カネコ「私たちがもともとやっていたことに林くんが加わって、音楽がより良くなっていった感覚がありました。今回の『ひかれあい』に収録した“とがる”は、最近私が入眠する直前に脳裏に浮かぶ〈走る〉映像を曲にしたいという気持ちから生まれた曲なんです。そのイメージをバンドのみんなに伝えて制作しました」

――バンドのメンバーが、映像的なイメージからカネコさんのやりたいことをちゃんと掴んでくれるというのは、すごいことですね。

カネコ「そうですよね。『ひかれあい』の2曲目の“天使とスーパーカー”は、友達が(歌詞に登場する)〈今日の天使っているよね〉という話をしていたことがすごく記憶に残っていて。素敵な話だなと共感したことがきっかけです」

本村「ああ、その話をしてたね。僕もそこにいたんですよ。それがもう2年ぐらい前の話。〈今日の天使〉というキーワードがすごく印象的で、憶えていました」

カネコ「素敵な言葉だなぁと思って、曲を作ろうと思ったんです」

――今回の『ひかれあい』は、収録曲の3曲すべてバンド編成の音源と、カネコさんの弾き語り音源が収録されています。これには何か理由があったんですか? 2ヴァージョンを聴き比べることで、それぞれの違いを楽しめるように思いました。

カネコ「特にそういうことを考えていたわけではなかったんですけどね(笑)。普段は弾き語りでライヴすることが多いし、デモは弾き語りで作るので」

――カネコさんは、弾き語りとバンド編成に、それぞれどんな楽しさを感じますか?

カネコ「弾き語りは、自分のそのときの気持ちやペースで自由にやれることですね。バンドは、まるで青春のようで〈永遠に終わらないな、これは〉という気持ちになれます」

 

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