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THE CHARM PARKは常に未来への〈途中〉であり続ける―大盛況の東京ワンマン公演に漂った、穏やかで親密な空気の正体

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  • 2017.05.22
THE CHARM PARKは常に未来への〈途中〉であり続ける―大盛況の東京ワンマン公演に漂った、穏やかで親密な空気の正体

一昨年11月に『A LETTER』、昨年12月には、その続編とも言える『A REPLY』と、これまで2作のミニ・アルバムを発表してきたシンガー・ソングライター、THE CHARM PARK。初のワンマン・ライヴ企画〈A LETTER & A REPLY〉の東京公演が、4月25日に渋谷7th Floorにて開催された。青年期をアメリカで過ごしながら、音楽活動のために来日。そうやって旅人のように生きる彼が初のワンマンで生み出したのは、まるで演者と聴き手がふたりきりでソファーにくつろぎながら、人生のささやかな出来事について語り合っているような、穏やかで柔らかい、親密な空間だった。

この日の渋谷7th Floorは、開演前から用意された椅子席では収まり切らず、出入り口付近まで人が溢れかえる盛況ぶり。同会場は、ゆったりと音楽を楽しむことができるアットホームな雰囲気が特徴的なハコだが、この日はその雰囲気のなかにTHE CHARM PARKに対する〈期待〉という名の熱が、沸々とたぎっていたように思う。実のところ、THE CHARM PARKは、これまで数えるほどしかライヴ演奏を行ってこなかったアーティストだ。そんな彼の演奏をワンマンで観ることができるとあって、〈なんとしても!〉と駆けつけた人たちが多かったのだろう。 

 

そんななか、開演時間を迎え、CHARMとバンド・メンバーがフロアの後方から登場。この日のメンバーは、CHARMと同じく大橋トリオのサポートも務める神谷洵平(ドラムス)、小川洋行(ベース)、fifi léger(キーボード/グロッケン)、金藤稔人(オルガン)、CHARMのかねてからの友人だというマーク・スタイン(ギター)の5人。ステージ上で笑顔で顔を見合わせる姿を見れば、この6人が如何にいい関係性で繋がっているかがわかる。

そして、演奏が始まった。1曲目は“Sincerely,”。会場中にたぎった熱をそっと沈め、代わりに音を浸透させていくような穏やかなバンド・アンサンブルが心地良い。〈ここは二人だけの世界〉――そう歌うCHARMの優し気な歌声が、フロア中に親密な空気を生み出していく。続いての“Harmony”では、CHARMの奏でるアコギが、バンドを牽引するかの如く力強く響き、ステージ上から放たれるダイナミズムが高まっていく。そして3曲目“Don't Stop”で、最初の沸点へ。ユーフォリックに、饒舌に跳ねるドラミング、キラキラと繊細に輝くグロッケンの音色、そして〈Don’t Stop!〉と鼓舞するように歌うCHARMの歌声。全てが渾然一体となって、フロア全体をアップリフトしていく。客席から自然と巻き起こるハンドクラップ。会場には、早くも一体感が生まれていく。

〈7年前にLAから“上京”してきました、CHARM PARKです〉〈皆さん、今日は対バンいないですけど、いいんですか?〉と、CHARMのユーモラスな人となりが滲むMCで会場を和ませ、続いては『A REPLY』に収録されていた“そら”、そして“誰か”を披露。“そら”はCHARMがアメリカで暮らしていた頃に日本の空を思い描きながら作ったという、雄大なメロディー・ラインが印象的な1曲。そして“誰か”は、〈誰かいませんか?〉と歌う、CHARMの孤独な心象が滲む内省的な1曲だ。アメリカで暮らしながらも、その出自からアメリカ音楽に入れ込むことができず、むしろ自らのアイデンティティーの拠り所として日本の音楽に惹かれ続けてきたというCHARM。彼の産み出す音楽には、フォークやカントリーも、オルタナティヴ・ロックも、ジャズも、エレクトロも、あらゆる要素が絡み合いながら内包されているが、そうした構造自体が、とても日本的なものだ。

〈洋楽〉〈邦楽〉〈ヴィジュアル系〉〈シティー・ポップ〉……そうした日本独自の呼び名に顕著だが、具体的な音楽性や歴史性ではなく、むしろ概念や思想のもとで音楽が極めて自由に、雑食的に組み合わさっていく。そこからはCHARMの〈音楽は“人”から生まれ、人の“心”に寄り添っていくもの〉という根本的なスタンスを感じ取ることができるし、そんな日本のポップ・ミュージックに惹かれ続けたTHE CHARM PARKの音楽は、だからこそ、まるで旧友から届けられた手紙のように聴き手の心に寄り添い、CHARMという個人の想いを何よりも伝えてくれるのだろう。

 

“そら”~“誰か”の深く内省的な流れのあと、“Dear Sunshine”でCHARMがエモーショナルなギター・ソロを響かせたら、ここで前半が終了し、一旦休憩へ。2部構成となったこの日のライヴは、『A LETTER』と『A REPLY』という2作の繋がり、あるいは〈アメリカと日本〉〈自分と他者〉、常にそういった二面性の狭間で揺らぎながら、その揺らぎ自体を表現に昇華させていくCHARMのミュージシャンとしての在り方そのものを象徴していたともいえる。そして、後半はCHARMの静謐なピアノ弾き語りによる“It’s not the same”でスタート。続く“Beautiful World”ではギターに持ち替え、自らのボーカルをオーバーダブさせながら、ひとりぼっちのゴスペルを響かせる。

そして、再びバンド・メンバーもステージ上に登場し、〈まだ2枚しかリリースしていないので、曲目が足りないんです〉と笑いながら、キリンジ(現KIRINJI)の名曲“エイリアンズ”のカヴァーを披露。大橋トリオ然り、KIRINJI然り、ナチュラルに海外のサウンドを取り入れながら独自のポップ・ミュージックを作り上げてきた国内アーティストと、CHARMの共振はとても興味深い。そして、穏やかなピアノの旋律と共に始まったのは、“A LETTER”。初作『A LETTER』の1曲目であり、CHARMが、その孤独と共に世界に宛てた手紙。リリカルな歌とダイナミックなバンド・サウンドのコントラストが美しい1曲だが、この曲をCHARMの歌に寄り添いながら演奏する5人と、そのなかで気持ち良さそうに歌うCHARMの姿を見ると、このバンドが今のCHARMにとって本当に居心地の良い居場所でもあるのだと伝わってくる。

 
 

ラストを飾ったのは、躍動するシャッフル・ビートが覚醒感を誘う“A REPLY”、そして、バンドが渾然一体となって壮大なシンフォニーを響かせる“Rolling On”。アンコールの“Holding Hands”では客席とコール&レスポンスも行い、どこまでもアグレッシヴでポジティヴな終演を迎えた……のだが、印象的だったのは、大団円の最中にいても、その熱狂のなかからスッと次の場所に行ってしまいそうな、CHARMの佇まいだった。初のワンマン・ライヴ。しかし、一貫して力みを見せず、笑顔とユーモアを絶やさず、決してフワフワしているわけでもない……その絶妙な軽やかさ。それはきっと、〈転がり続ける〉こと、そして〈変わり続ける〉ことを求める、彼の音楽と人生に対する姿勢の表れだったのだろう。いつだって、どこにいたって、それは〈結論〉や〈結果〉ではなく、未来への〈途中〉。CHARMにとって、この日のワンマンも旅の途中で、彼は彼自身が、この先まだまだ変わり続けていくことを知っている。配信でのリリースが発表された新作EPでは、『A LETTER』『A REPLY』で見せた側面とは違う、また新しいTHE CHARM PARKの姿が見ることができそうだ。自らの心を音楽に託しながら変わり続けるTHE CHARM PARKの旅路、この先も楽しみだ。

 

【SET LIST】
1. Sincerely,
2. Harmony
3. Don't Stop
4. そら
5. 誰か
6. Dear Sunshine
~休憩~
7. Its not the same
8. Beautiful World
9. エイリアンズ
10. A LETTER
11. To Whom It May Concern
12. A REPLY
13. Rolling On
~Encore~
14. Holding Hands

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