10代の鋭敏な感性を剥き出しのまま曲に封じ込め、傷を負うことも厭わずに、文字通り裸足で弾き語ってきたさユり。〈酸欠少女〉の名が示すように、疎外感からくる息苦しさを乗せた歌声は強さと脆さを併せ持ち、野田洋次郎(RADWIMPS)が提供した“フラレガイガール”を含むシングル群では、やりどころのない激情をぶつけてきた。だが、20歳を迎えて完成させたこの初アルバムにあるのは、そういった拘泥から離れ、希望に向けて航海を進める意志なのだろう。もちろんその過程には、ポスト・ハードコアに片足を突っ込んだ“knot”のような激しい面も表れるが、雨のパレードがマイルドとハードを行き交う変幻ロックをあてがった“オッドアイ”で歌われる歪さへの肯定、アコギと鍵盤が優しく絡む“夏”での爽やかな眼差しには、かつて戸惑いながら接していた世界そのものに対する歩み寄りが感じられるのだ。結びのオルタナティヴ・フォーク“birthday song”で命が浮かべる光と影をそのまま受け入れて祝福する姿はあまりにも尊い。