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佐野元春とのレターズ―『MANIJU』リリース記念、若き音楽家と綴った往復書簡シリーズ:XTAL(Traks Boys/(((さらうんど))))編

佐野元春とのレターズ:第2通

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  • 2017.09.07
佐野元春とのレターズ―『MANIJU』リリース記念、若き音楽家と綴った往復書簡シリーズ:XTAL(Traks Boys/(((さらうんど))))編

佐野元春が〈佐野元春 & The Coyote Band〉名義での新作『MANIJU』をリリースした。現代の不穏なムードを重たいロック・アンサンブルに映し出した2015年の前作『BLOOD MOON』とは打って変わって、今作のムードは実に軽やかで開放的――フィリー・ソウル的なストリングス・アレンジを配したダンス・チューンや柔らかなサイケデリアを醸すフォーキーなナンバーなど12曲を収録し、40年近いキャリアを持つヴェテランとは思えないほどの瑞々しさが全編に溢れるアルバムになった。

路地裏をスキップしながら歩んでいくようなリズムと、体温のほのかな暖かさを感じさせるメロディーに乗せ、佐野が綴ったのは〈若い都市生活者たちの憂い〉。そこには彼が2017年の日本に見る、ヤング・ブラッズの姿、孤独でありながらも澄んだ蒼さを失うことのない魂の震えが息づいている。そんな視線で貫かれた今作だからこそ、このタイミングで若いリスナーと佐野元春との出会いが生まれることを願い、Mikikiではシリーズ企画として、佐野と若手ミュージシャンたちとの往復書簡を実施した。

その第2回となる今稿では、Traks Boysの片割れとしてアンダーグラウンド・ダンス・シーンで強固な支持を受け続け、また同ユニット&ラッパーのイルリメでのポップ・グループ、(((さらうんど)))としての活動でも名を馳せるDJ/トラックメイカーのXTALが登場。(((さらうんど)))の初作『(((さらうんど)))』(2012年)では“ジュジュ”をカヴァーし、サード・アルバム『See you, Blue』(2015年)収録の“乙zz姫”では“Come Shining”をサンプリングしてトラックを制作するなど、活動の節々から佐野へのリスペクトを嗅ぎとることができるXTALに筆をとってもらった。XTALが感謝の念や新作『MANIJU』への印象、質問などを書いたレターをもとに、佐野がリプライ。そのやりとりを以下に掲載する。 *Mikiki編集部

★〈佐野元春とのレターズ〉書簡一覧はこちら

佐野元春 & THE COYOTE BAND MANIJU DaisyMusic(2017)

 

佐野元春⇔XTAL

ーXTAL バンド(((さらうんど)))のメンバーとして3枚のアルバムをリリースしているのですが、ファーストの『(((さらうんど)))』では佐野さんの“ジュジュ”をカヴァーさせてもらい、サードの『See you, Blue』では“Come Shining”をサンプリングして使わせていただきました。ありがとうございます。特に“Come Shining”のサンプリングについてですが、ベテランの音楽家の皆さんの中にはサンプリングを収奪行為と見なしている方もいると思うので(僕はその見方について非難する者ではありません)、サンプリングの許諾をいただけたことは本当に感謝しています。

―佐野 “Come Shining”をサンプルした、(((さらうんど)))の“乙zz姫”を楽しく聴きました。僕の場合、ほとんどの楽曲を自分で出版管理しているのでサンプル・クリアランスはしやすいと思います。サンプリングはクリエイティブで正しいアイデアだったらむしろ歓迎したいです。

84年作『VISITORS』収録曲“Come Shining”のライヴ映像
“Come Shining”をサンプリングした“乙zz姫”が収録された(((さらうんど)))の2015年作『See you, Blue』より“Siren Syrup”

 

ーXTAL さて、最新アルバム『MANIJU』拝聴しました。生命力溢れるバンドサウンド、様々なグルーヴや話法を駆使したロックンロールに乗せて、刺さってくる言葉が沢山ありました。現代の日本、その社会状況の中、同時代を生きる者として佐野さんから放たれた言葉、特に“新しい雨”の〈今を生きる/自由と愛と戦争/連絡取りあおうよ/そしてなんとか無事でいよう〉というラインには胸が熱くなりました。

―佐野 ありがとう。唄は共感の伝達。それを果たさないと意味がないとつくづく思います。日々思うのは、自分の生活は今、戦時下にあるんじゃないかということ。そうして見ると何気ない日常がより大事に感じる。“新しい雨”はそんなことを唄ってみました。

 また、この曲は指摘してくれたとおり、グルーヴと話法を駆使した曲のひとつ、言葉をグルーヴィーにロックさせるために工夫をしました。人それぞれだろうけれど、(((さらうんど)))ではどんなフローで曲を作っているだろう。自分の場合はこんな感じです。

 まずはリリックをラップしてみる。すると正しいテンポが見えてくる。次にドラム/ベースの基本的なリフを作ってセッションする。すると正しいスウィングが見えてくる。その後からメロディーとハーモニーが付いてくる、というフロー。特にダンサブルな曲はそう。

 言葉がグルーヴを伴って息吹きだすまでBPMをコンマ00まで追いこむ。これが自分のやり方です。

『MANIJU』収録曲“悟りの涙”

 

XTAL 最も印象に残ったのは、アルバム最後を飾る“マニジュ”のラスト〈もう心配ないよ〉のリフレインです。これはロックンロールの歴史の最初期より繰り返し歌われてきた〈It’s Alright〉と同義であり(自分にとっては14歳の時に聴いたU2『Achtung Baby』で何度も歌われていて出会った言葉でした)、そのロックンロールの歴史の上で佐野さんが歌っている言葉だと思いました。そして佐野さんのデビュー曲である“アンジェリーナ”の〈二人でいれば 大丈夫だぜ〉も思い出し、メッセージの一貫性も感じました。よかったらこの〈もう心配ないよ〉にかけた想い、またはロックンロールにおける〈It’s Alright〉 という言葉に対する、佐野さんの気持ちや考えといったものを教えていただけたら嬉しいです。

80年作『BACK TO THE STREET』収録曲“アンジェリーナ”のライヴ映像
 

―佐野 ロックンロールで使われる最も美しい言葉ベスト3を挙げるとすると、それは〈Oh yeah!〉〈C’mon!〉そして〈It’s alright!〉だろうと思う。共通しているのは〈どうにかなるよ〉という明るい諦念。そして〈Don’t worry (もう心配ないよ)〉はそこからの派生語だと思う。

 この言葉を初めて意識的に聴いたのは、ビーチボーイズの楽曲“Don’t Worry Baby”。大好きな人にかける最も慈愛に満ちたシンプルな言葉。ポップ音楽の起源からこれまでいったいどれだけの歌手やソングライターがこの言葉を使っただろう。その天空に輝く星々のような楽曲群の片隅に自分の曲を連ねてみたいと思うのは不遜だろうか。いや、認めてもらえるだけの曲を書いてみよう。

 そんな想いでこの曲“マニジュ”を書いてみました。

 


■佐野元春

〈佐野元春 and The Hobo King Band Billboard Live ‘Smoke & Blue 2017’〉
2017年11月1日(水)、11月8日(水)~9日(木)Billboard Live OSAKA
1stステージ:開場17:30/開演18:30
2ndステージ:開場20:30/開演21:30
サービスエリア 9,300円/カジュアルエリア 8,300円
★詳細はこちら

2017年11月14日(火)~15日(水)名古屋ブルーノート
1stステージ:開場17:30/開演18:30
2ndステージ:開場20:30/開演21:15
ミュージックチャージ 9,800円
★詳細はこちら

2017年11月21日(火)~22日(水)、11月29日(水)Billboard Live TOKYO
1stステージ:開場17:30/開演18:30
2ndステージ:開場20:30/開演21:30
サービスエリア 9,300円/カジュアルエリア 7,800円
★詳細はこちら

〈佐野元春 & THE COYOTE BAND 全国ツアー2018〉
2018年2月上旬からスタート。詳細は追ってアーティストHPで発表。

 

■XTAL
Your Song Is Goodの最新作『Extended』収録曲“Double Sider”をリミックス
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